00 小さな語りと最期の晩餐
「ねぇ、四季?」
「ん?なんだ?」
月明かりが僕らを照らす。
伸びゆく影は悪魔のように。
いや、悪魔そのものを象る。
「ホントに終わるのかな?」
「終わるさ。終わらせるんだ。」
「うん。だよね、」
僕も彼女も、満点の星空を見上げる。
こんなにも何も残ってないのに、星空は変わらない。
まるで、空だけは僕らと違う世界を生きてるように。
「ねぇ、四季。」
「ん?なんだ?」
何度目になるだろうか。
同じようなやり取りを始める。
でも、今度は少し違う声音で僕の名を彼女は呼ぶ。
何か言わなくちゃいけない事でもあるのだろうか?
「最後の晩餐って何が食べたい?」
久しぶりに聞いたその質問に、笑みが零れる。
なんだ、そんなことか。
まぁ、これが終わっても、終わらなくても、実質僕らにとっては今夜が最後の晩餐だ。
すっかり夕飯を食べる事なんて忘れていたが、そう聞かれると何かを食べておきたい気もする。
ここ最近、食事なんて取っていなかったし。
「白は?」
僕は彼女の質問を質問で返す。
静かに風が吹き抜ける。何も攫ってはくれないようだ。
「ん、私?私は……勝負に勝つ、ってことでかつ飯とか?」
「やめとけ、あれは消化に良くない、」
「じゃあ、四季は?」
そうだな、最後の晩餐なんて真面目に考えたことも無かった気がする。
ふと、一つ食べたいものを思い出す。
あれは果たして消化がいいのだろうか?
恐らく、消化されずに一生胃袋で住み続ける気がする。
「強いて言うなら、『最期の晩餐は神を食べたい』って感じ?」
僕と少女の笑い声が、広く冷たい荒野を暖かく染める。
視線の先に広がる荒野と、それに見合わぬ深緑の葉をいっぱいに付けた一本の大樹。
こんなくだらない冗談に僕たちは腹を抱えられている。
いいや、冗談かどうかは、もう分からない話だが。
終わりゆく結末と人生に、新たに始まる人生に、淡い期待を込めながら、やがて二人は眠りにつく。
今亡き仲間と、その亡霊を。
今有る仲間と、その意志を。
心臓に宿りし彼らの結末に、誰が微笑み、誰が苦しむか、それは神のみぞ知る……否、神でさえも知りえない。
だから、声に出して言ってみる。
「ーーー最期の晩餐は神を喰いたい!」
満点の星空に流れ星が1つ横切った。
とりあえず、もう一話!!