===第一章・往事茫茫===
スマホの向こうでも君に笑っていてほしい
あの日もたしか、いつものようにティナと公園で遊んでいたんだ。
そこまではいつも通りだったのに。
「私、一回家に戻ってスコップ持ってくるね!」ティナはいつもの元気な声で言った。
「わかった。行ってらっしゃい。」俺は床を見ながらそう答えた。
空はキモいぐらい青くて、雲が一つも見当たらなかった。
空を見すぎて空に吸い込まれるんじゃないか、そこには何がいるんだろう、怖かったら嫌だな、なんてのんきなことを考えていたら突然視界が遮られた。
見ると、都内にある、成績がトップとも言われている超進学校の南高等学校の制服を着た女の人が立っていた。
「一人でなに空を見上げてんの、なに、幽霊でも見えんの??」
と、その女の人は言った。人のことに一々首突っ込んでくんなよ、そう思った俺は、
「別に、友達を待ってて、暇だから空を見上げてるだけです」
と、言った。
「その友達って女の子?さっき走ってたけど。」
「まあそうですね。さっき家におもちゃをとりに一回帰ったんです。」俺は面倒くさくなって適当に答えた。
「それは本当かな〜〜人間ってすぐ他の人を騙すんだよ。家に帰ったのも、もう戻って来ないかもよ?」
そういってその人は去っていった。
そんなことはない。ティナは他の人を騙すなんてことは死んでもできないことなんて、俺が一番よくわかっていたはずだった。
だけど、そのときはどうしても不安になってしまった自分がいた。
そんなこと、絶対にありえない、そう自分に言い聞かせていた時、ティナの声がした。
「ただいま〜あれ?どうしたの?What happened?」
そのティナの優しさが、俺にはそのとき人を騙しているかのように感じてしまった。
「ごめん、俺気分よくないから帰るわ、せっかくとって来てくれたのに、ごめん」
そういって俺は走って家に帰った。
思えばそのときから色々な人たちに疑心暗鬼になってしまった。
親のことも信じられなくて、親が旅行に行こうと言ったときも、これは自分の家族を離れ離れにしようとしているのではないか、などとくだらない妄想を繰り広げていた。
あながち間違ってはいなかったのだけど。
旅行から帰る途中、乗っていた車に車がぶつかってきて事故になった。そのときに両親は亡くなってしまったのだった。俺も、命には別条はなかったが、ガラスの破片が目に傷を残してしまった。
後で警察から聞いた話によると、ぶつかって来た車の運転手は、飲酒運転をしていたため、車の操作を間違えてしまったようだ。
後から謝ってきたその人は飲酒運転なんてしなさそうな優しそうな人だった。
それがいけなかったのかもしれない。こんな優しそうな人が俺の両親を殺したんだと思うと、信じられなかった。
もう誰も信じられないと思った。