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ナジーラの悩み

「魔力の制御を教えてくれ……」


 は? 何言ってんのこの王子? あなたのようなすごい血筋と膨大な魔力を持つ人に何を教えろと……あぁ、制御って言ったなぁ。


「何を意味の分からないことを。そなたであれば優秀な宮廷魔導士がいくらでも教えてくれるであろう? それに妾とて知っておるぞ? 国王陛下の強大な魔力に王妃殿下の多彩な魔法をな」


「父上は父上、母上は母上だ。俺には関係ない……俺は二人のようには……なれない……」


 え、なんで? 離れても私の魔力を感じ取れるほど凄いのに。


「事情は分からぬが昨日今日会った妾などにそのような重大なことを話してもよいのか?」


「お前は俺の妻になるんだろう? ならば何の問題もない。そもそもみんな知っていることだからな。俺の不名誉な呼び名『炎上王子』をな」


 あ、ちょっとかっこいい……四英雄の一人にそんな人もいたような。確か獄炎士キョウ……


「詳しく聞いてもよいのか?」


「ああ……」




 ふむふむ。へー。ほー。そうなんだ。びっくり。

 ナジーラって生まれつき強大な魔力を持ってたんだけど、制御が下手くそだったんだね。それで何度も寝ぼけて部屋や建物を燃やしちゃったんだ。自分で燃やして自分のおねしょで消したこともあったとか。よく生きてたね。というかそこまで正直に話さなくてもいいのに。


 宮廷魔導士や両親、それに英雄の末裔にすら直接指導してもらっても全然直らない。魔力は年々強くなる一方で制御の難易度もどんどん上がっていく。そのせいで物心ついた時から寝る時は魔法を一切使えないように封魔の首輪を着用しているのか。うへぇ……大変そう……


「妾に教えられることなどないように思うが? そもそも妾の場合は単に魔力が低いだけだと思うぞ? そこらの子供よりもな。だから微細な制御がしやすいというだけの話よな」


 凄い人に相当教えてもらったんだよね? そうでなくても私に教えられることなんかないと思うし……


「そうとも限らん。例えば俺が一万の魔力を持つとしよう。それでも俺が魔法を使う際は一発で一気に消費してしまうほどだ」


 それは酷い……歩く災害だよ……


「しかしお前は十にも満たないわずかな魔力を数百回にも分けて使えるほど微細に制御できている。俺が教えを請いたいのはそこだ。一体どうすればそこまで微細な制御ができるのだ!」


 そう言われても……ちょっとしかないから大事に大事に使ってるだけだし。あ、でもこれって私の仕事にできるかも! 第一王子に魔法を教えるなんて大出世だよ! これならそうそう追い出されることもないんじゃない? そうだよ! やったー! 教えることなんてないけど難しい顔して適当にあれこれ言ってればいいし! よーし燃えてきた! 私やるよ!


「妾に何ができるかは分からぬ。だが夫になるそなたの頼みだ。微力を尽くしたいと思う」


 微力……私の魔力的にも。あはは……はぁ……


「そうか! 引き受けてくれるか! よし! ならば早速始めるぞ! こっちだ! 来い!」


 うわっ! 手! 手を握られた!? ちょ、ち、近い近い顔近い! うわぁそんなに走らないで、ちょ、ちょっとぉーー!


 あ、ナジーラの手……ごつごつしてる。この手、知ってる……畑を耕す農夫、銛を操る漁師。そして稽古に励む騎士の手だ……王子なのに。よく見ると火傷の痕だってたくさんある……




 ここは? 訓練場? うわぁ広いなぁ。あっちには標的もあるし。あれに向かって魔法を撃ち込んだりするんだよね。


「ここならば俺が制御を誤っても周囲を破壊することはない。安心してくれ」


 私の身は危ないんだけどね……


「では早速見せてもらおうか。最小の威力であの的を攻撃してみてくれ」


 うふふ、私偉そーう。私だと的に当てることすらできないくせに。


「ああ。見ていてくれ」


点火(つけび)




 ……うっそ……何それ……

 遠くにある的が全部焼失しちゃった……あれって金属製だよね?

 今のって枯葉に火を着ける時なんかに重宝する初級魔法『点火』だよね? 指先からほんの小さな火が出るだけの魔法なのに……? 意味が分からないんだけど……




「というわけだ。今ので俺の魔力が半分ほどなくなった。子供でも使える初級魔法でこの体たらくだ……廃嫡されても文句は言えぬな」


「え? 廃嫡されるの!?」


 あ、やばっ! つい普段の口調で……


「ふっ……ようやくまともに喋りおったか。ああ心配するな。もし俺が廃嫡されたとしてもお前の身は弟に引き継げばよい。気にするな」


 は?


「かっちーん! 何それ!? 私のこと舐めてない!? そりゃあ知り合ったばかりでお互いよく知らないよ? だけどさ? 私あなたがだめならはい次って乗り換えられるような尻軽の恥知らずじゃないつもりなんだけど!」


 見くびらないで欲しいな。別に王太子妃とか王妃の座なんか欲しいわけじゃないんだからさ。あ! もしナジーラが廃嫡されたら後宮から出ていけるんじゃない!? そしたらナジーラを連れてうちの国に帰ってもいいし! それならいくら廃嫡したからって息子がいる国を攻めることもないよね? そもそもうちって攻める価値ないし。


「俺と結婚して未来の王妃になりたくはないのか?」


「王族らしい暮らしをしてみたいとは思ってるけどね。ふろって最高だし。でもねぇ……どう考えても私って王妃の柄じゃないんだよね。もうバレたと思うけど……」


「ならば俺が廃嫡されたらどうする?」


「その時はうちの国、グレブリントにおいでよ。あなたって一見ひょろひょろして頼りないけど、実はちゃんと鍛えてるよね。魔法だけに頼って生きていこうとしてないみたいだし。だったら私はいいよ。面倒見てあげる」


 私ほんと偉そーう。本当はここで王女らしい暮らしがしてみたいけどね。だからってナジーラが廃嫡されたら用無しだなんて外道な真似なんてできるはずがない。私だってグレブリント王家の誇りぐらいあるんだから。


「ふっ、やはりお前は面白い女だな。廃嫡された際には世話になるとしよう。おっと、今日のことは他言無用だぞ?」


「分かったよ。ナジーラこそ私の口調をばらさないでよ?」


「俺としては今の口調の方が好ましいのだがな。どうだ? 猫をかぶる(白狐のふりをする)のも面倒だろう。いっそのことその口調のまま過ごしてもよいのではないか?」


「ナジーラがいいんならいいけど。でも知らないよ? ナジーラがいいって言ったって言うからね?」


 だいたい私がグレブリントの威信を背負うってのが間違いなんだからさ。後のことなんか知ーらない。


「構わぬ。そもそも後宮では女達は好きに過ごして良いことになっている。その結果どうなるかは知らんがな。ではボニー、明日から頼むぞ?」


「分かった。また明日ね」


 いいのかなぁ……どうなるんだろ。ナジーラって廃嫡されちゃうのかなぁ……魔法が下手くそすぎるもんなぁ……魔力はすごいくせに。


 あ、今ならお昼も食事したいって頼んでも大丈夫だよね? なんせ第一王子に魔法制御を教える大仕事なんだから。

 よーし。何食べようかなー。ふふーん。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 仲を深めていくエピソードがいいですね~! 男性に何かを教わるより、男性から教えを請われるほうが女性も嬉しいですし、自然と心が開きますもんね。 これは女性読者も共感でしょう(*´ω`*) 素…
[一言] かなり好きです!!
[一言] 炎上王子(物理)。
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