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怨嗟の誓約  作者: シノヤン
3章:忘れられし犠牲

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第81話 大解剖

 ルーファンが悪臭と悪戦苦闘している事も知らずに再び図書館を訪れたジョナサン達だが、既に民間人の姿は無い。その代わりに寄せ集めたのであろう長机達が広間の中央に置かれ、その上には回収したリミグロン兵の遺体と彼らの装備が置かれていた。勿論、エジカースも含めて。


「ジョナサン」


 顔色の悪い細見の中年男が気だるそうに呼ぶ。その隣には小柄な糸目の男が立っていた。


「スライ、わざわざ呼び寄せて済まない」

「全くだ。せっかくの休暇だったというのに」


 ジョナサンはにこやかに接するが、中年男は不機嫌そうに目頭を押さえる。


「こっちも誰かさんがうるさいから仕事放り投げてジェトワから飛んできたんだぜ。まあ割と面白いもん見れたからチャラにしといてやるが」


 糸目の男もジョナサンにせがまれたせいで自分の責務から逃げてきたのだと愚痴を零すが、決して後悔はしてないのかニヤリと笑い返して見せた。


「ドレイクもありがとう…フォルト、ガロステル、紹介しておこう。スアリウスで考古学者として活動しているスライ・ロルとジェトワ皇国で鍛冶職人をしているドレイク・ジョメウだ。僕の友人」


 ジョナサンの紹介を皮切りに、四人はそれぞれと握手を交わす。獣人と両腕に包帯を巻いている胡散臭い男相手でも、表面上は愛想よく握手に応じてくれる辺り最低限の倫理観とモラルは持ち合わせている様だった。


「友人が考古学者や鍛冶職人って点を考えると、お前だけ格落ち感凄いな」

「でもたぶん年収が一番高いのは僕だぞ」


  挨拶を終えた直後、ガロステルがジョナサンを嘲笑うが対して気にも留めず資本こそがすべてだと言わんばかりにジョナサンは豪語してくる。記者という仕事が民間人に嫌われるのは、他人の周りを嗅ぎまわるだけの分際でありながらこの様にして不相応な傲慢さを見せて来るのが原因なのだろう。


「さ、調査だ調査。何か分かったかい ? 」

「武器や防具に関してはかなり面白いぞ。遥か昔、東洋の国々の刀剣に使われていた鍛錬に近い痕跡がある。焼いた鋼を打ち、それを折り返して再び打つ…それを繰り返す事で不純物を取り除いて強固な刃や兜の素材を作るんだ」


 ドレイクは得意げに語る。そんな彼の目は、ようやく手にした憧れのおもちゃについて嬉々とした表情で語る子供のように輝いている。


「だがその技術は廃れてしまった。確かに理論は間違っていないかもしれないが、戦いにおける要は数にある。その方法では質の良いものは作れても、それを全ての雑兵に行き渡らせられる程量産できない。もしやるのであれば相応の資源と人手…あと、教育も必要だな。馬鹿な新兵が無くしたり壊したりしないように。いずれにせよコストがかかりすぎる」


 そんなドレイクと違って、スライはしかめっ面で不審な点を語る。


「でもリミグロンはやってるんでしょ ?」

「ああ。規模が小さい国や組織ならば出来ない事も無い。現にパージット王国ではこの技術が応用されて作られていた刀剣を持っている者がかなりいたそうだ。ジェトワ皇国にも未だ技術が一応だが残っている…でも、その程度だ。リミグロンの兵力や規模は報告されているだけでも大きい。今挙げた二つの国とは比べ物にならない。おまけに武器だけではなく、鎧にまでこの技術が使われている。どこの国のだれが作ってるかは知らないが、どうやって素材となる資源やそれを量産できるだけ人材を調達してるのやら……」


 リミグロンが出来ているならば不可能ではないだろうとフォルトは考えていたのだが、スライにしてみれば出来ていることそのものがおかしいとも言える口ぶりだった。


「まあ、今回こうして解析を進められた事は大きな収穫になった。今までと違ってリミグロン達の死体が残っていたのは大きい」

「どうして ?」


 エジカースの死体を手袋越しに撫でてからスライは言うが、事態は思っていたより深刻なのか顔は決して明るくない。ジョナサンも尋ねずにはいられなかった。


「判明したというよりも、疑惑が確信に変わりつつあると言うべきかもしれないがね。とにかくこれを見て欲しい。このエジカースの腕の部分についている変な装置…ここに呪文が刻まれているだろう ? 」


 スライの指さす先にはエジカースの鎧の腕部があり、それには妙な漆喰の様な艶を持つ黒い石板らしき物が取り付けられていた。よく見るとミミズが這った後の様な文字が彫り込まれている。


「サーベルや銃にも似たような文体の文字が彫られてあった。どこかで見た事がある気がして、調べてみると魔法…それも<光の流派>の物だという事が分かったよ。これで少なくともリミグロン兵達が使っている攻撃手段は<光の流派>。そしてシーエンティナ帝国に関係している、或いはしていた人間が装備製作に関わっている事は明白。まあ…帝国との繋がりを完全に証明できるわけでは無いが。トカゲのしっぽ切りぐらいはしてくるだろうしな」


 スライの調査結果は、リミグロンの正体を見つける足掛かりだというのは否定できないが、やはり決定打に欠ける。ここからどうにか調査を進展させたいが、やはり戦利品を鑑賞しているだけではどうしようもない。


「ねえ、リミグロン達が使ってたのは<光の流派>の魔法って事でしょ ?」


 その時、フォルトが何か思いついたらしくエジカースの鎧の腕部を慎重に持ってから言った。


「もしかして…あの捕虜の人なら使えないかな ? この装備」

「百聞は一見に如かずって事か、いいね」


 その思い付きをジョナサンは気に入り、すぐに捕虜のいる営倉へと駆け出して行った。

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