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怨嗟の誓約  作者: シノヤン
3章:忘れられし犠牲

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第100話 圧力

「ハイちょっとごめんよ。おっ、鱈とあさりのクラムチャウダーか。大好物だ。一応聞くが白ワインは入れてないよな ? ここには子供もいるからね」


 ふんぞり返っていた同業者を押しのけ、ジョナサンが唐突に食糧配給を待つ列の先頭へと立った。


「おい何やってるんだお前 !」


 記者団の一人がジョナサンに怒鳴った。


「何って…食料を貰いに来たんだが」

「俺達が先だ。並んでるのが見えないのか ?」


 とぼけた態度を装うジョナサンとは対照的に、記者団の連中は苛立ちを隠そうともしない。


「並んでる… ? ああ、これは失敬。誰かさんたちが脅迫してでも頂こうとしてるのを見たもんでね。てっきりルール無用なのかと」

「立場が分かっていないようだな。我々は重要な仕事を任された上で派遣された記者だ。君たち庶民などと一緒にするな」

「その理屈なら私が先に頂いても問題ないだろう。外国人であり、れっきとした新聞記者様なのだから」


 給仕用の台と記者団の間を遮ったジョナサンが自分の行いは至極理屈にかなっている物であると述べるが、自分達以外の人間が得をするのがどうも許せない記者団の面々は不愉快そうにしている。


「これはこれは。まさか同業者が我々以外にもいたとは。良いだろう、君が先だ。その後に私たちが頂こう」


 だが記者団のリーダーだけは違った様である。彼は腹を揺らしながら近づき、ジョナサンの肩を叩いて笑う。事を荒立てようとはしない紳士な自分を演じているつもりなのだろうが、あまりの態度の豹変ぶりに記者団以外の人々は呆れかえっていた。


「残念だがそれは出来ない。みんなで仲良く後ろに並ぶ。ありつくのは周りの市民が腹を満たした後だ。それより手伝いでもしてくれないか ? 毛布や物資を運ぶのに人手がいる」

「そんな物は市民と兵士にやらせればいいだろう。なぜ部外者である我々がしてやらんといかんのだ ?」

「死んでもらっては困るからだ。彼らが死んでしまえば情報を伝える者がいなくなる。つまり我々も困る羽目になる。そんな事も分からない頭でどうやって仕事をしてきた ? 腹だけじゃなくて脳にも栄養を行き渡らせてやるべきだと思うぞ。それとも行き渡らせてようやくその程度の知能なのか ?」


 四の五の言わずにさっさと列からどいて周囲の手伝いに参加しくれればまだ心象も変わるだろうに、記者団は一向に動く気配を見せずに言い訳を続ける。それに苛立ったジョナサンが穏やかな口調で軽く罵ってみると、たちまち記者団のリーダーは顔をひきつらせた。


「同胞相手に随分な言いようだ」

「ああ、同胞だとは思ってないからな。同じ業界の人間として、あなた方の様な恥さらしのお仲間だと思われては商売あがったりなんでね」


 両者の間で睨み合いが続く。その最中にも新たな避難民が入ってきては、何事かといった具合に記者団とジョナサンを見物し出した。気が付けば辺りの人間が皆自分達を見ている事に気付き、記者団は居心地が悪そうにし出すがジョナサンはお構いなしに話を続ける。


「ここまで言ってまだ飯を欲しがるんなら好きにすればいいが、そんなアンタ達に人々は心を開いて情報を恵んでくれるかな。まあきっとそうなれば中立には程遠い情報を好き勝手に脚色して言いふらすんだろう…だけどそれが真っ赤なデマだというのを証明できる人間が少なくともここに一人いる。それだけは忘れるなよ。新聞屋が嘘をつくようになったら終わりだぞ」

「……チッ、出るぞ。こんなみすぼらしい所にはいられん。別の避難所に行く ! 何が証明できる人間だ。ぺーぺーの三流ジャーナリスト風情が…」


 ジョナサンにそう言われた記者団は、周囲に誰一人として見方がいなくなった事を確信した。やがて愚痴を呟き続けながらズカズカと周りの人間を突き飛ばして避難所を出て行く。やがて静かになった後、列の一番前にいた子連れの女性に向かってジョナサンは笑い、ゆっくりとどいてから給仕用の台へ続く道を開けた。女性は一礼をしてから食料を貰いに歩き出す。


「騒動が終わったらぜひ新聞を買ってくれたまえ。名前はレイヴンズ・アイ社。昨年遂に年間累計発行部数が全新聞社の中で一位になったんだ。是非お友達にも勧めておいて。損はさせない」

「まあ、呆れた人」


 だがすれ違った際にそんな宣伝文句を呟かれると、意地でも商売に繋げようとするその根性に女性は目を丸くした。

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