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友達ができる。

第13章

 「デビューですか・・・?しかし、わたくしは庶民の出身で・・・・」


 「あら、ごめんなさい。庶民だとは知らなくて、残念だわ、庶民でしたら皆さんにご披露できる事もありませんね。ごめんなさいね」


 「ーーーーーー」


 その時、どこからともなく、青いドレスの女性が現れて、


 「失礼します。それなら、わたくしが、出来る範囲でアイシン男爵夫人をサポートいたします」


 会場内は、一斉にその女性の方を見た。


 「あの方・・・先程、薬を・・・」

 「シっ! 」


 「今回のこの晩さん会は、納得できません。誰かが、地方出身者の貴族をバカにするために主催したように思えてなりません」


 「あなた、これは国王主催の晩さん会と、ご存じないのでしょうか?」


 「国王主催を利用して、王都の人間が、何をしてもよろしいのですか?」


 その場の雰囲気は、最高に悪くなり、見かねたミオは、女性に話しかける。


 「あの・・・、わたくし、歌を歌います。伴奏をお願いできますか?」


 雰囲気を察して、その女性も笑顔で応える。

 「ええ、大丈夫です。ピアノは得意です」


 ミオとその女性は、ピアノの近くに行き、自己紹介から始める。


 「私は、オークド領出身で、エプリング男爵の妻で、サーティと申します。私は貧しい男爵の娘ですが、母が音楽に精通していまして、楽器は得意です。先程はありがとうございました。私のグラスに薬が入っていると、気づいて下さり。助かりました。あの後、医務室に運ばれて、適切に処置が行われて、命拾いしました」


 「いいえ、わたくしも気づくのが遅くて、大声で叫べば良かったのですが、まさか毒とは思いませんでした。ごめんなさいね」


 その後、ミオは、サーティを見つめ、

 「フィージア、グラスを2つお願いします」


 フィージアが、持参した透き通った美しいグラスに、特注の水筒から注がれた冷たい水には、果物やハーブが入っていて、その色とりどりの水を、ミオは、最初に飲み、友情を表し、その後、サーティも飲んだ。


 「すごく美味しいです」

 「良かったです。お互い、喉が渇きましたでしょ?」


 「ええ。ふふふふふ・・・」と二人は笑いあい、曲を決め、舞台に立った。

 「さぁ、行きましょう!」


 そのサロン内の人々は、固唾をのんで二人を見守る。その場所は、色々な思惑が流れていた。


 ミオが選んだ曲は、出発前に、エレナミ夫人が、ミオに教えてくれた曲だった。この曲さえ覚えておけば、王都では生きて行けますと・・・。


 その時、ミオには、まだその曲の意味がわからなったが、どうやら有名な曲らしく、会場内は、ミオの歌声に包まれ、全員がおっとりしながら聞いていた。


 その曲は、祖国の伝統を守る騎士の歌で、男性主流で歌い継がれた曲だったが、ミオの透明感溢れる歌声で、歌われると、自然に、心に直接響き、辛い戦いを思い、涙を流し始める男性貴族も沢山いた。


 当然のように、拍手喝采で終わり、歌声を聞きつけた国王陛下や、サージ宰相もやって来て、ミオの歌を聞き、ミオを、真剣に見つめるジュリエールを発見した。


 「ジュリエール! 」と、国王陛下は気軽に話しかけ、ジュリエールは、これが正しい挨拶の仕方だと、周りにわかるように、国王陛下に頭を下げた。


 「久しぶりだ。生きていたのだね」


 「はい、何とか生き抜いています。陛下もお元気そうで、いつも嬉しく、ご活躍を拝見しています」


 「っふ、本当に?」


 「はい、・・・半分、嘘です」


 「・・・・・・」


 「今日はどうしてここに?」


 「はい、アイシン男爵のヴァイオレット家で、ミオ様のメイドとして雇って頂いています」


 「・・・そうか?彼は、王都に来て、幸運を得たな。優秀なメイドと、歌の上手い奥方」


 「はい、わたくしもそのように思います」


 「所で、地方出身者と、王都在住の貴族が、上手くやって行く方法は無いかね?」


 「ーーーその案件は、王宮の役人の仕事で、わたくしの仕事ではありません。わたくしの仕事は、ミオ様が授かるお命をお守りする事です」


 国王陛下は、相変わらず、手厳しいジュリエールに微笑み、話題を変える。


 「うん、ーーーさてと、この場を、治めるとするか・・」


 その後、珍しく、もう一度、舞台に乗った国王陛下は、すべての貴族が、協力し合いこの国を守り抜き発展することが、今は、一番大切だと、念を押し、その後、サージ宰相が閉会を告げた。


 帰り際に、ミオとサーティは、互いに微笑み合い、何も語らずに、別れを告げて馬車に乗り込み、家路についた。


 揺れる馬車の中。

 「奥様、すっかり、寝てしましましたね」


 「流石に、今日は、疲れただろう。ハプニング満載の一日だったから、寝かせておこう」


 馬車を降りたアイシン男爵は、そのまま、大切にミオを抱き、二人の寝室に連れて行き寝かせた。


 「ジュリエール、フィージア、今日は、疲れただろう、大丈夫だから、今日は二人とも休んでくれ。おやすみ。お疲れ」


 「ありがとうございます。おやすみなさい」と言い、二人は頭を下げて、その長い一日は終わりを告げた。フィージアは、体力がなく、その状態のまま眠っていた。


 そんなフィージアを見て、何も言わずにジュリエールは、自室に戻って行った。


 翌日はお休みで、その次の日から通常通りにアイシン男爵は出勤して行った。


 ミオは、男爵を見送り、庭に出て、散歩をする。体力増進を過ごしずつ図っている。


 その散歩にいつも同行して、トハルト家令は、屋敷内の事、ご両親、ヴァイオレット家の事などを報告する。


 「フィージアはどうしたの?」


 「はい、奥様の目覚める前に、ジュリエール様の講義があり、朝食後、旦那様をお見送りになった後、昼食までは、また、厳しい指導が入ります。当然ですが、奥様のご用がございましたら、それらは中止になります」


 「屋敷内は、それで回っているの?」


 「はい、今は、屋敷内の清掃などは、彼女たち二人が行い、外の整備は、外部の労働者を雇っています」


 「それにしても、大人数ですね」


 「はい、毎日、50人以上の人間が、庭や池などの工事に当たっていますが、すべての人間を私達の監視下に置いていますので、万が一の間違いなど無いようにいたしています」


 「そう・・・」


 「奥様のご希望がございましたら、その都度、工事の変更が出来ます」


 「そう・・・」


 「フィージアが居なくて、暇ですので、絵を描いて、イメージを伝えます」


 「では、絵画の準備をしてまいります」


 ミオは、庭の一番涼しい場所で、お茶を飲みながら、絵を描き、庭の事を考えている。すると、3、4歳くらいの小さな男の子が、ミオをじっと見ていた。


 ミオは手招きすると、喜んで飛ぶようにやって来て、ミオに「何しているの?」と聞き、言い終わると、テーブルの上のお菓子に釘付けとなり、口に指を入れ、ヨダレが流れていた。


 「食べる?」と聞くと、頷いたので、コップの水で手を洗って、キレイになった手にクッキーをのせて食べさせた。


 あまりにも美味しそうに食べるので、絵を描きながら、二人で話をした。

 「お父さんと来たの?」

 「うんう、違う。お母さんと来た」


 庭師の中には、女性もいるのかと思い、

 「お父さんは、いないの?」

 「病気・・、寝てる」


 「そう、・・・クッキーは美味しい?」

 「美味しい」


 その男の子は、ダルマルと言って、良く洗濯されている服を着て、ミオの隣に座り、ミオと話しながら、絵をひたすら見て、大人しく座っていた。この年齢で、じっと、座れるには、両親の躾が行き届いているのか?この男の子が賢いのかどちらかだ。


 1時間くらいすると、その子の母親が、全身男の作業着を着てやって来て、ミオの前で膝まづいて、懇願する。


 「奥様、申し訳ありません。ごめんなさい、許して下さい。夫が、病気でお金がなくて・・・、子供も置いてくることが出来なくて、申し訳ありません。どうか、お許しを・・」


 その女性は、地面に顔をつけて謝る。


 「別に大丈夫ですよ。ご主人がご病気で大変ですね。この子は、大変大人しくて、私と友達になりました。アレルギーとかありますか?クッキーを食べたのですが、子供に与えても大丈夫だったでしょうか?」


 「??????」


 トハルトとジュリエール、フィージアが、急いで駆け付け、

 「奥様、どうなさいましたか?」


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