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ビーストトリマー~よろずトリミング承り〼~  作者: 水野 ナオ
第二話 祖父の日記とイチキシマ
17/26

動き出したハサミ製作

 統皇暦5年 10月4日

 鉄鉱石から鉄を取り出す作業に慣れてきた。

 今は5分から10分で分離させられる。

 次の段階にいく準備ができた。

 取り出した鉄を錆びにくくするための素材を探そう。

 しかしどのような素材が必要かわからない。

 様々な物を混ぜてみよう思う。

 しかし、明日から妻と久しぶりの旅行だ。

 三泊四日で以前より訪れたかった、鳥人と鳥獣の国パフラミンアイランド。

 とても楽しみだ。


「――」


 ここから祖父母の惚気のろけ日記になっている。

 目を通すも、そのラブラブっぷりにシュネは読み飛ばした。

 盗み見しているみたいで申し訳ない気持ちと気恥ずかしさで……。


 統皇暦6年 1月19日

 市場で売り出されている鉱石や素材で刃物を作るが、使えない物にしかならなかった。

 これは一度根本から考え方を変える必要があるかもしれない。

 鉄ではなく、チタンかコバルトを探そう。

 妻の方も進展があった。

 簡単な刻印魔法の連動化ができるようになった。

 俺も負けてられないな。


 統皇暦6年 1月22日

 チタンもコバルトも数が取れないらしい。

 あったとしても物凄く値が張るみたいだ。

 鉄鉱石から分離した鉄や不純物を売ったとしても到底足りない。

 これは困った。

 何か現状を打破するヒントを探しにラブラとコーテッドに行こう。

 

「へ~、昔はチタンもコバルトも流通してなかったんだ」


 統皇暦6年 2月2日

 コーテッドの魔鉱石研究所でいくつかの素材を勧めれた。

 【メモ】

 ・デルライト鉱石……破損しにくくするが、加工が難しくなる。しかし加工後は刻印魔法と相性が良い。

 ・マジカライト鉱石……魔力を通しながら添加することで切れ味が変化する。魔力量、鉄、マジカライト鉱石の比率が難しい。

 ・緋色石ひいろいし……チタンの代わりにコーティング素材として活用できる。研磨時にコーティングし直す必要がある。

 入手のしやすさを考えるとこの三種だろう。

 それとコバルトの取れる場所を教えてもらった。

 ラブラから西の山脈を越えた森深くの地中に眠っているらしい。

 六年前の世界戦争以降、凶暴な魔物が出現して取りに行けなくなったようだ。

 魔鉱石を使っても納得いかなかった場合は行ってみよう。


「ラブラの西ってここのこといってる……よね。レイ姉が採掘場で取ってる物にコバルトもあったな」


 統皇暦6年 6月24日

 魔鉱石を使ったものはハサミには適していなかった。

 だがデルライト鉱石と緋色石はドライヤーやシャワーには使えそうだ。

 マジカライト鉱石は予想以上の加工のしやすさで、スリッカーブラシやコーム、クリッパーの刃にもできそうだ。

 後はハサミだが……ラブラの西に行ってみるか。


 統皇暦6年 7月4日

 ラブラの西の森に行く準備が整った。

 鉱石の鑑定士と昔一緒に旅をした仲間を今回のパーティーに迎えた。

 妻も久しぶりの旅でワクワクしているみたいだ。

 そういえば今は大人しいけど、昔は猪突猛進でみんなを振り回していたな。

 ……今回は無事に終わらせることができるかなぁ。


「へぇ~おばあちゃんの方が勝気な性格だったんだ」


 統皇暦6年 7月8日

 魔物の強さは大した程ではなかった。

 妻はガッカリしていたが、鑑定士がいるのだからなるべく安全に行きたい。

 コバルトの鉱脈はまだ見つかってないが、広い湖に出た。

 とても空気が澄んでいて気持ちがいい場所だ。

 話し合いの結果、ここをベースに周囲を探索していくことになった。

 湖には魚もいるし、煮沸すれば水も手に入る。森には木の実に小動物もいる。

 これなら腰を据えて鉱脈探索ができるな。


 統皇暦6年 7月10日

 思ったよりもベースから近い場所で鉱脈が見つかった。

 コバルトとダイヤモンド、銅が主に採掘できるようだ。

 これでコバルトのハサミが試作できる。

 鑑定士に使えそうなコバルトをいくつか見繕ってもらい、マテリラの鍛冶師にいくつか打ってもらおう。


「おぉ~、やっとハサミの素材を手に入れた。ハサミは作れるのかな?」


 カップを口に近づけるが、コーヒーが無くなっていることに気付いた。

 空のカップの底を見つめて、おかわりをするか明日に備えて眠るを考える。


「何かあったら大変だから寝よう」


 ランプを消して布団に入る。

 目をつむるとシュネは考えた。おじいちゃんがイチキシマに懸ける思いを。

 おじいちゃんがどんな人だったのか。なんとなくシュネは几帳面でメモ魔で行動力のある変わり者、という印象を持った。

 しかしその印象も睡魔の波にさらわれて消えていった。

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