霊 と 神 御霊会『ごりょうえ』 第1障
この題名でる、御霊会とは、思いがけず、死を迎えた者達の霊を、神の御霊により、崇を防ぐ儀式の事でる。
人は、生と死を誰しも体験する。それはすべて、神のなせる業なのだ。人は、死がおとずれるその日まで、地球に存在する全てものを愛し、そして、死を迎えたその時に、この世の未練を
全て絶ち、天界へ旅立つのでる。
この小説は、著者が実際の体験を元に、一部変更し、作成した物語でる。
前書き
先日、テレビ番組に外国の脳外科医が、臨死体験談を語っていたことは、ご存知でしようか?
この脳外科医は科学者でありながら、天国の存在を自らが実体験し天国と言う所が実存すると認めた話でした。
この脳外科医は幼少期から、友人が数々の臨死体験を語っても天国の存在など、全く信じることなく過ごしました。
一流の脳外科医になった後も、それは同じで生死の境を体験した患者が、夢の一部始終を打ち明けても
彼が患者の話に耳を傾けることは無く、そのような体験をする人々は、脳内に異常があり、精神的なダメージが強いのだと科学者側の観点から、頑なに否定してた人物でした。
しかし、そんな彼の考えを真っ向から打ち消すような出来事が起こりました。
彼は突然自宅で意識が無くなってしまったのです。
妻は何度も彼の名前を呼び続けましたが、彼が妻の呼びかけに反応する事はありませんでした。
妻はすぐに、彼の勤務している病院へ救急搬送し、医者の診断結果を祈る思いで待ち続けました。
そして、その時がやってきました。
その診断の結果は何らかの原因で、彼の脳内に大腸菌が繁殖する病気でした
今までこの病気になり、回復した条例は無いという、最悪な結果になってしまったのです。
彼はその日から、人口呼吸器と抗生剤点滴投与の治療が開始されました。
しかし、妻と子供達の願いは届かず、彼の状態は悪化するばかりで、意識回復は絶望的だと思われました。
そしてついに、抗生剤投与の最終日になりました。
この当日の12時間以内に回復しなければ、死を待つ事になるのだと、同僚の医者が絶望的な死の宣告を下したのです。
妻は彼の親戚に連絡をし、彼のベッドの周りで神に祈りを捧げ続げました。子供達もそれぞれの想いを、彼の耳元で囁き祈り続けました。
さて、彼の生い立ちですが
彼がこの世に誕生し、彼は直ぐに養父母に育てられました。
それは実父母が未成年の高校生だったからです。
その事実知ってから、彼は実父母に会いたいと思うようになったのです。
彼は実父母の居場所を探し出しました。
そして両親に手紙を書いたのです。
会いたいと…
しかし、両親からの返答は、今は会いたくないとう返事だったのです。
彼は仕方なく両親に会うことは諦めました。
それから数日がたった頃でした。
彼は突然自宅で意識が無くなってしまったのです。
妻は何度も彼の名前を呼び続けましたが、彼が妻の呼びかけに反応する事はありませんでした。
妻はすぐに、彼の勤務している病院へ救急搬送し、医者の診断結果を祈る思いで待ち続けました。
そして、その時がやってきました。
その診断の結果は何らかの原因で、彼の脳内に大腸菌が繁殖していて、この病気になり回復した条例はかつて無いという、最悪な結果になってしまったのです。
彼はその日から、人口呼吸器と抗生剤点滴投与の治療が開始されました。
しかし、妻と子供達の願いは届かず、彼の状態は変化することなく、意識回復は絶望的だと思われました。
そして彼は、投薬効果もないまま、抗生剤投与の最終日になり、この日の12時間以内に回復しなければ、死を待つ事になるのだと、彼の同僚の医者が絶望的な死の宣告を下したのです。
妻は彼の親戚に連絡をし、彼のベッドの周りで神に祈りを捧げ続けました。子供達もそれぞれの想いを、彼の耳元で囁き祈り続けました。
彼の日常生活は家族を愛し、仕事も熱心にこなす ごく普通な人間でした。彼は何時もの様に、担当患者の病室に入り診察をしていると、その女性患者が語り始めたのです。
「先生の顔は、とても素敵で、良い顔をされているのですね・・・」
彼はその言葉に驚いたのです。なぜなら彼女は、先天性の全盲 で視力が無かったからです。
彼は驚き彼女の顔を見直しました。
すると彼女はポツリ、ポツリと語り始めたのです。
「先生から脳の手術して頂いた時の事です。
手術室に入り、麻酔が効き始めて間もなくの事でした。
フッと気が付くと私は天井の高い所から、手術をされているスタッフの顔と、話しを聞いていました。
その中に聞きなれた、先生の声が聞こえたのです。
声は知っていても、先生の顔は初めて見たのですよ・・・
不思議な光景でした。
私が手術されているのでしょうけど、私の顔は布で覆われよく見えないのですから・・・。
私は自分の顔を見た事が無いし、手で触ることしか出来ないのですもの・・・。」
彼は女性患者の話す事に、一瞬耳を傾けたが、その事を直ぐに打ち消していたのです。
脳の機能を一時的に停止させ、施行する大手術である為、そんな筈は有り得ないのだと・・・
しかし手術中に話していた内容は、全て彼女の言った事に 相違無かったそうです。
そしてもう一つの不思議な出来事がありました。
それは、彼の勤務する病院へ救急搬送された若い女性患者の話でした。
その女性患者は彼の担当の患者でした。
彼女は搬送された時から意識が無く、意識が回復したのは、搬送後3日目でした。
その患者が彼の回診時に、力無き細い声で語り始めました。
「先生私は長い長い夢をみていました。それは、とても不思議な夢でした。」
彼がその夢について尋ねると、さらに彼女は夢の内容を語り出したのです。
「私はこの病室のベッドで寝ていました。
すると何処からともなく、薄黒い煙がこの部屋へ入って来たのです。
やがて・・・その煙は私が寝ているベッドで、渦を巻き始めたのです。
すると私は、何の抵抗も無く体が浮き始め、煙の中に吸い込まれて行きました。
そして気が付いた時、私は、この病院の屋上にいる様でした。
そこに、赤くて美しいハイヒールの靴が、片方落ちていたのです。
私はもう片方の靴を探す事にしました。
しかし何処も探しても見当たりません。私は、探す事を諦め、赤いハイヒールのある場所へ戻り、その靴を拾い上げようとした途端・・・
私の体は一瞬でこのベッドに戻り、そして目が覚めたのです・・・
私の夢が真実の事なら、きっと屋上に、まだあの赤いハイヒールがあると思うのです。一度見て来て頂きたいのです。」
彼女は彼にそう告げたが、彼は笑いながら頷いてはいたが、本気にしていなっかったのです。
しかし、その話を隣で聞いていた看護師が、彼女の話し通りに屋上へ行き、赤いハイヒールを探し続けました。
しかし、彼女が言った赤いハイヒールは、落ちていませんでした。
看護師が諦めて帰ろうとしたその時、視線の先に赤い物を見つけたのです。、
看護師は駆け寄り確かめました。
それは、確かに彼女が言っていた、赤く美しいハイヒールでした。
しかし看護師は靴が落ちている場所に驚いたのです。
それは屋上を取り囲んでいるフェンスの先に落ちていたからです。
フェンスを越えてしまえば、足元がおぼつかない 患者は、落下する事になるでしょう。
看護師はそう考えると、人の生死には、まだ解明出来ない不可思議な出来事を、認識させられ 屋上を跡にしたのです。
さて、彼の話に戻ります。
彼の状態は死目前のタイムリミット に突入しました。
そんな時、彼は不思議な夢を見るのです。
彼の意識は彼自身の体から、ゆっくりと 離れ始めました。
彼は親族を高い位置から眺めていたのです。
抜け殻になった 彼に向かって幼い子供達が、それぞれの想いを語っていました。
一緒にサッカーやキャチボールした事、悪い事をして叱られた事など様々でした。
妻もまた同じで、 彼との結婚前のエピソードを、涙ながらに語っていました。
彼はここにいる事を、皆に伝えている筈なのに、彼の発する言葉は全く伝わっていない様でした。
すると彼の目の前に、灰色の大きな輪のトンネルが現れたのです。
彼は迷わずそのトンネルに入りました。
するとそのトンネルの中に、一筋の眩い光を放つ小さな穴を見つけた途端、彼はその穴に吸い込まれて行ったのです。
彼は眩い光を手で覆っていると、心地良い風を感じ、そっと辺りを見渡しました。
彼が見たものは、彼の住む街並みの光景でした。
彼が勤務していた病院や、研究室も彼の視界に入り 、彼はその風景を優雅に、鳥の様に飛んでいたのだと語っていました。
暫く空を飛んでいると、懐かしい街並みから彼の知らない地へ入り始め時でした。
彼は人の気配に目をやると、彼の隣に若く美しい見知らぬ女性がいました。
その美しい女性は彼に優しい微笑みを向けています。
彼女は彼とは違い、スワンの形をしたゴンドラの様な物に乗って いました。
彼女は彼に話し掛けました。
「あなたは、多くの人々の命を救ってきましたね。
まだこれから、もっと多くの命を救ってください。
こちらへ来るのは、まだ早いです。」
そう言うと彼女は、突然と彼の前から居なくなったのです。
彼女の姿が消えて直ぐに、彼の意識はベッドの上に戻りました。
彼は静かに目を開き辺りを見回しました。
そして、彼を取り囲んでいる、親族の歓喜満ちた顔を確認出来たのです。
その後、日に日に彼は回復に向かい、やがて仕事に復帰しました。
彼は自分の研究室にいました。
彼は自分が病気に侵された時のレンゲン写真を見て愕然としました。
脳機能が停止した状態で、あのような夢を、見ることが出来る筈が無い事を、彼は知っていたからです。
そしてそんな時、彼宛に一通の手紙が送られてきました。
それは、まだ顔も知らない、彼の実父母からの手紙でした。
「・・・・・・前回あなたが、私達と会いたいと手紙をくれましたね。
しかし私達は、誰とも会う事も出来ないくらいに、憔悴していたのです。
それは、あなたの実の妹が亡くなったばかりだったからです。
もう時がたち、今私達も心穏やかに過ごしていますので、今度会いましょう。」
そんな内容の手紙でした。
そして一枚の写真が同封されていました。
それは、若くしてこの世を去った、まだ見ぬ実妹の写真でした。
その写真を見て彼は驚きを隠せませんでした。
それは彼が危篤状態の時に夢で見た、スワンのゴンドラに乗り、彼がこの世に帰るようにと祈願した美しい女性だったからです。
《あの女性は私の妹だった・・・・・・》
彼はその時、天国があることを信じました。
*私がこの物語りに引かれたのは、科学の世界では、霊界の存在を中々受け入れてくれません。
そして、彼もまたそうでした。
しかし、彼の実体験により、彼はあの世が実在する事を確信したのでした。
私も彼の様な体験を、二度経験しています。
一度目は生まれて直ぐの事です。
私は生まれた時の光景を何故か鮮明に覚えています。
『御霊会』 第1障
霊 と 神
その男は、海沿いの細道を、息を荒げ重い足を引きずり、歩いていた。
そして男は、何度も後ろを振り返った。
誰も追って来ない事を念じながら……。
国道まで出れば、何とかなるだろう……。
男は、僅かな望みを賭け、海沿いの細道から獣道に入った。
しかし……。
男は、気が付かなかった。
何度も同じ道を、逃げていることに……。
その時男は、背後に冷たい気配を感じ、そして振り返ろうとするその時だった……。
一瞬キラッと、何かが光った。
「ヒィッーッ! ギェーッエーッ。」
男は、その陰に怯え、甲高い悲鳴をあげた……。
と、同時に男の首から、天高く血飛沫が上った。
『ドッスン……。』
そして男の頭部は遭えなく、地へ転がり落ちたのだ。
その男は恐怖を訴えるかの様に、大きく見開いた目と、歪んだままの口を開け放ったまま、すでに絶命していた。
その男の切り取られた頭部から、さほど離れぬ場所に残りの胴体があった。
それは、しばらく痙攣を繰り返していたが、間もなく、ピクリとも動かなくなった。
それらは全て、神業的な一瞬の出来事だった。
そして、その一部始終を、怪しく光る赤い目だけが見ていた……。
( 1 )
佐多銀子は、福岡の自宅を後に、長崎方面へ車を走らせていた。
カーナビが所要時間三時間と告げている。
道路は平日のため渋滞に巻き込まれる事無く、快適に走行していた。
このまま何事もなければ、2時間程で目的地に到着するはずだ。
銀子は、助手席の窓を少し開けた。
窓の隙間からは心地よい十二月の風が、銀子の髪を靡かせる。
空は快晴で、冬の寒さも感じない。銀子は、絶好のドライブ日和と感じていた。
車は諫早市に入った。
フロントガラスが、海の日差しに反射してキラキラと眩しい。
銀子はダッシュボードから、お気に入りのサングラスを取り出した。
その時、カーラジオから、賢そうな口調の男が語り始めた。
そのラジオの声に、銀子は興味をそそられた。
それは霊的な現象と、未確認飛行物体のテーマだったからだ。
その男は物静かに語り始める。
「人はストレスや、精神的な疲労を伴うと、幻覚を見ることがよくある。
しかしそれは実在しない物を、脳が見たと勝手に判断している……。」
その男の語る内容で、銀子は以前に、知人から聞いた出来事が蘇えってきた。
「私、小学校から使っている古い机が捨てられないのです。結婚する時も、持って行くつもりです。」
と……。
そう知人が語ったのだ。
「そんな、古い机どうして持っていくの? 」
と銀子が尋ねると、知人は暫く沈黙していたが、意を決したのか静かに語り始めた。
それは……。
半年前の事だったと言う。
知人は学生の頃に仲の良かった同級生と、道で偶然再開した。
二人は懐かしさもあって、近くのカフェへ行き、お互いの現況や昔話に華が咲いた。
その後、知人は自宅に戻り、学生だった頃の卒業アルバムを取り出そうと、古い机の前に立った。
そして、その一番下の引き出しを開けたその時だった……。
「あっ! 」
と思わず知人は驚いた。そこにいたのは、なんと小人だったからだ。
その男の小人は、知人の顔を見るなり慌てて逃げたのだ。
それは一瞬の出来事だったという。
知人は小人に対して、悪いことをしてしまった……。と思ったそうだ。
自分が小人の居場所を、邪魔したかの様に感じたからだと語った。
それから二ヶ月程たち、知人も小人の事を、忘れかけていた頃だった。
知人は又、何気なくその机の引き出しを開けた。
すると、今度は二人の小人が其処にいたのだ。
一人は、前回見た男の小人だったが、もう一人は女の小人だった。
女の小人は、知人の顔を見るなり、慌てて逃げたが、最初に目撃していた男の小人は、最初とは違って逃げもせず……。
それどころか、余裕をもって座っていたのだという。
男の小人は、知人の方を振り返り(ヨッ!)と、声は出さないが挨拶をするように片手を挙げたのだ。
服装も前回と違っていた。
前回はイギリス風紳士のように、黒い帽子を被り、黒いモーニング姿だったが、今回は赤いニット帽を被り服は普段着風だったとう。
今度は知人も、その男の小人を凝視した。
すると小人は少し顔を歪ませ、迷惑そうに知人を睨み付けた。
知人は思わず、その小人に話しかけていた。
「帽子変えたのですか? 」
そう聞くと、その小人は照れ臭そうに笑ったのだと言う。
小人は人間に例えると、六十歳位の年配で、目は大きくギョロっとし顔は浅黒く、深いシワが何本も刻まれていたのだと語った。
「体長20センチ弱程で、顔つきは、昔、何か悪いことをしたような感じで、とても善良な人には思えませんでした……。
その後、まだ引き出しを開けていません。」
そう知人は言うと、また言葉を続けた。
「私……。以前に聞いた事があります。
小人になる人は、元は普通の人間で、何かの罪を犯し地獄に送られず、小人にされてしまったと……。
そうなのでしょうか……。」
銀子は知人に、そう尋ねられたが、その小人とやらを、まだ目撃したことが無いのだ……。
「私には、残念ながら、答えられないわ。小人の目撃経験が無いもの……。」
そう答え、知人との会話を終えていた。
今のラジオで語られた事だと、そういう現象は一種の幻覚症状という事にる。
しかし、その知人は喫煙やアルコール飲酒も無く、薬物などの依存は無いのだ。
その知人は、どこの学校にも一人はいるような、教室の片隅で静かに過ごしている、そんな大人しい女性である。
銀子は、さっそく大学教授をしている友人に、この事を相談する事にした。
しかし……。
やはり、その答えは今のラジオで語られ事と同じだった。
幻覚症状の一種だろう……。
そう答えが返ってきたのだ
「銀子は、その知人を、よく知っているのかい? 」
友人は、銀子の顔を覗き込む。
「いや、それほど親しと言う訳ではないわ! でも嘘ではないと思うのよ。」
と、銀子が言うと
「本人の意識の中では、まったく嘘では無いはずだよ。」
と友人は言った。
人間が色付きで幻覚を見るのは、精神に何らかの、異常をきたしている事が多いのだと言う。
「しかし……。」
と、友人は、顔を曇らせた。
「これは、銀子だから、言う事なのだが……。」
と前置きし、友人は自らの出来事を語り出した。
「これは、私たち夫婦の事だが……。
私たち夫婦は長いこと、子供に恵まれなかった……。
しかし、やがて妻が妊娠したのだ。
結婚して十三年目だった。
生まれたのは、かわいい男の子だったよ。
しかし……。生まれて直ぐに、その子が亡くなってしまった……。
すぐに……だ。
妻はショックを受け、一時的に家事や外出さえも、出来なくなっていた。
だが少しずつ立ち直り、又、以前の様な明るい妻に戻ってきた頃だった。
私は、いつもの時間に就寝したのだが、その日は人の気配に目を覚ました……。
私は直ぐに辺りを見渡した。
そして、その時私の目に映ったのは、なんと亡くなった我が子だった。
その子が、直ぐそこに立っていたのだ。
その日を境に毎晩私の夢枕に立つようになった……。
ある日、私はジュースを買う為にコンビニへ立ち寄った。
そして店の冷蔵庫の扉を開けた。
その時だった…。
たちまちフラッシュバックしたのだ…。
あの病院の霊安室に……。あの冷風が……。
あの子が寝かされていた霊安室に記憶が戻り、あの辛い情景がフッラシュバックするのだよ。
その状態は三年も続いたよ。
しかし、その事は誰にも言わなかった。
妻に言うこともなかった……。
しかし……。
三年も続くこの状態を、私は、なんとかしたかった……。
そして漸く妻に、この事を打ち明けたのだよ。
それから、徐々に我が子が夢枕に立つことも無くなり、私の症状も落ち着きを取り戻していた……。
愛する者が居なくなると、精神状態は、バランスを崩すのだろう。」
そう言うと友人は、こみ上げる感情を抑えるよに、素早く立ち上がり、お茶を入れる準備を始めた。
銀子は、それを断り教授室を後にした。
ラジオはすでに、ロックの曲に変わっている。テンポの速い曲に体も自然と乗ってきた。
銀子は、快適に走行しながら、右手に広がる景色に目を向けると、そこには老女と幼い少女が海を眺めていた。
その老女が笑うと、少女も後を追う様に笑う。
そんな微笑ましい光景だった。
ふっと銀子も、祖母の事を思いだした。
祖母は銀子が小学生の時に、すでに亡くなってた。
銀子の両親は共働きで、幼い頃の銀子は、祖母と過ごすことが多かった。
その祖母には霊視能力があった。
しかし、それを商売にした事は、一度も無かった。
日々祖母は、誰よりも早く起床し、まだ暗いうちから豆腐造りに励んでいた。
近所の住人が、その豆腐を買い求めては祖母の霊感を頼りに相談事を打ち明ける、その程度だった。
そんな祖母の霊能力を、銀子が受け継いでいるのだろう。
幼い頃より銀子は、頻繁に霊現象に悩まされていた。
それは、人の霊だけに止まらず、動物霊や自然霊様々だった。
そんな銀子の霊体験の話を、祖母は黙って頷き聞いていた。
銀子は友人や両親にも、その事を隠していた。
子供ながらに言ってはいけないと、感じていたからだ。
そんな祖母が、いつも口癖のように言っていた。
「銀子、人を憎んだり恨んだり、人の陰口を言ったらダメだよ。
それは、地獄界と波長が
合ってしまい浮かばれない霊を呼んでしまうのよ。
その霊は、銀子を仲間だと勘違いして憑依してしまう。
そして、銀子を思いのままに操ってしまうのさ……。
銀子が、そんな気持ちになったら、神様に手を合わせ(ごめんなさい) と言って、地獄界とのスイッチを切るのよ。」
と……。
そんな祖母の話しを、幼い銀子がどれ程理解し、実践出来たのだろうか……。
しかし徐々に霊現象は軽減したのである。
この地球上には、大きく分けると、プラスに働く波動とマイナスに働く波動がある。
プラス波動は暖かく、空気も軽く心地良い。植物や生物が生きていく上で、必要なエネル ギーと言えるだろう。
霊的に視ると金色の輝きがある。現在パワースポットに人気が集まっているが、気が落ち 込んでいるときは早めに行った方が良いだろう。
しかし、一番良いのは、日々気持ちをプラスに保ちち、人が喜ぶことや楽しい事をやることだ。
感謝を口に出すのも良いだろう。
その言葉のひとつ(ありがとう)の五文字には、言葉に出すその人の口から金色の靄が視え、その靄が相手の胸に入り込むのだ。
だから言われた相手は、暖かい気持ちになるのだろう。
その反対のマイナス波動は、重い空気と冷たい心の集まりである。神社も廃墟になってる場所は、避けるべきである。
人の居ない神社は、霊のたまり場になっている事が多い。
憑依を避ける為に、行くべきでは無い。特に川や海、滝のある場所は心が落ち込んでいるマイナスの気持ちの時は、避けるべきである。
銀子が懐かしく、祖母を思い出している、その時だった……。
車の前方に人影が見えた。
顔は確認出来ないが、何か嫌な予感がした。
ブレーキペダルに足を置き、減速しようとした……。
その時だった。その人影が行き成り、 車前方に倒れ込んできたのだ。
「あっ……危ない! 」
そう叫び、咄嗟にハンドルを、右へきった。
『キーッキッーキーッ……』
車は不気味なブレーキ音を響かせ、対向車線を越えガードすれすれで止まった。
銀子は息をのんだ……。と同時に腹が立ってきた。
文句のひとつでも言ってやろうと、後ろを振り返った。
しかし、男の姿は、どこにも見当たらない……。轢いた形跡さえ無いのだ。
『霊だったのか……。』
と一瞬脳裏を過ったが、直ぐにその思いを打ち消した。
幼い頃なら別だが、今の銀子には現世の者か霊の仕業かは判断できる。
男は確かに生身の人間だった。
銀子は再度あたりを見渡し、戸惑いながらもアクセルを踏んでいた。
しかし、足の震えは暫く続いていた。
銀子は考えていた。
もしあの時、対向車がいたら……。
そう思うと、また身震いした。
「神様、守護神様、ご先祖様、守って頂き、ありがとうございます。」
そう言うと、そっと手を合わせた。
これが、いつもの銀子の口癖である。
少し気持ちが落ち着いたのか、急激な喉の渇きを覚えた。
間もなく自動販売機を見つけ、そこへ車を止めた。
財布を取り出す為に、ハンドバックに手を差し込む。
その時……。
何故か違和感があった。
何かが足りないのだ……。
もう一度調べたが結果は同じだった。
銀子は気が付いた……。
御霊がない事に……。
御霊は銀子にとって命と同じ位大切な物だ。
何時も肌身離さず持ち歩いている筈なのに……。
御霊とは、身を守るために祖母から譲り受けた、透明の石の事である。
その石の事を銀子は、御霊と称していた。
直径三センチ程の天然石で、7個数珠つなぎになっている。
普段は透明の石だが、いったん、霊的な現象を察知すると、七色に輝く不思議な石だった。
除霊の時や、結界(あの世とこの世の境)を引き、いち早く銀子の身を守るのだ。
祖母が亡くなる時、銀子に手渡した物だった。
「この御霊は、神様から譲り受けた宝物だ。
必ず銀子を守ってくださるよ。
だから、大切にするのだよ。」
と……。
そう言い残し、祖母は天界へ旅立ったのである。
不思議な事に、御霊を持ち歩くようになると、人々の背後に居る守護霊や風の神、火の神、水の神など様々な神の光を感じとる事を許されたのだった。
しかし、今その御霊がない……。
銀子は、携帯電話を取り出した。
友人の久美に電話を掛ける為だ。
恐らく自宅のテーブルに、置いているはずだ。
電話は直ぐに繋がった。
「もしもし、銀子姉? もう着いたの? 」
いつもの久美の声で、そう聞いてくる。
その問いには答えず、銀子は慌てて要件だけを伝えかた。
「御霊を自宅に忘れてしまって……。」
それだけ言うと、久美は全てを察したのか、
「はい。了解しました。仕事が終わり次第、そちらに向かうわ。
お姉のおごりで夕食よろ
しく……。」
それだけ言うと、久美は用件が済んだ様に、電話を切ってしまった。
底抜けに明るい久美の声に、心なしか救われた気がした。
今日は久しぶりの一人旅のつもりだったが、いつもの様に、久美との二人旅になってしまうなんて……。と苦笑するも、何故か心強く感じていた。
銀子は缶コーヒーを飲みほし、車を出そうとした。
すると、その時……。
けたたましい、パトカーのサイレン音が響く。
サイレン音が頂点に達した時パトカーは呆気なく銀子の前を通り過ぎて行った。
『何かあったのか……。』
と思ったが、銀子は余計な詮索はしなかった。
御霊会 第2障へ
続く…