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世界の鼓動を担う都市  作者: しみしみ
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3話 動き出す計画

 先ほどこの俺がそりゃあもう綺麗に綺麗に片づけた本棚の部屋をさらに奥へ進むと、2階への階段があった。

 国で1番のギルドだ、どんな依頼があるのだろうと心弾ませながら階段を上る。

 そして見えた景色は、まるまんま酒場だった。

 バーカウンターの横にこじんまりと掲示板があり、主役はさも酒場かのような空間がひろがっている。

 だが賑わいをみせているわけでもなく、カウンターの奥で注文を受ける酒場のマスターと、そこに座る男がいるだけで、他に人がいるわけでもない。

 そして俺は気づく。

 この酒場に来るには、あの本棚エリアを通らなければならない。

 そして俺が片づけをしていた時、人を見かけることはなかった。

 つまりこの男は、かなり前からここにいることになる。

 よほどの酒好きなんだろうな。

 んなことはどうでもいい。

 静かに酒を飲む男を横目に、掲示板に目を通す。

 正直、度肝を抜かれた。

 古代文明の解明にあたっての研究材料調達や、技術開発のための素材でドラゴンを倒してこい、だとか。

 思ってた以上の迫力の依頼に、圧倒された。

 だが、俺はこれでもゴールドランクの国家魔術師。

 どんな依頼も受けて見せようぞ。

 まずは手慣らしに簡単なのを受けようか。

 そうだな、防衛壁付近の警備、なんていいかもな。

 ここで一応解説をいれてあげよう。

 君たちみたいな底辺階級の人間は知る機会すらない、防衛壁について。

 魔術都市レルトンの街は、城下町があり、その外側に市街地、そしてさらにその外側に市街地郊外エリアがある。

 市街地郊外エリアはいわゆる敵の侵入にあたって戦闘をするフィールドという扱いなので、一般市民がそこに足を踏み入れることはまずない。

 そして市街地郊外エリアの外側、レルトンの一番端には、防御壁と呼ばれる物理的に侵入を拒む壁があるのだ。

 防御壁は一番危険な区域でもあり、日々警備担当達が古代兵器を食い止めているのだ。

 ま、ばちぼこに強い古代兵器が攻めてくることはまずないし、常に牽制のような中途半端な強さの古代兵器しかこないので、まず死ぬことはない。

 もしばちぼこに強い兵器が攻めてきたら、それはあちら側が本気で国を支配しようとしたサインともいえるだろう。

 よし、決めた。

 この依頼を受けよう。



 ※   ※   ※



 集合時刻に現場へと到着。

 防御壁の上にある通路にて、依頼主とコンタクトをとる。


「ダメもとだったがまさか純白の死神から人員がくるとは、いやぁ頼もしいよ」


「ま、ゴールドランクの国家魔術師なんで、任せてもらって大丈夫ですよ」


「そのつもりさ! むしろ我々が参戦してはかえって足手まといになってしまうからね!」


 これこれこれこれぇ!!

 相手から向けられるこの信頼感と、希望、憧れの眼差し。

 これこそ俺にふさわしい。

 これこそ俺に対するあるべき姿。


「じゃあB14エリアは任せるよ、頼んだぞ」


「ま、軽く揉んでやりますかね」


 依頼主の男はその場を去り、今このエリアを守っているのは俺一人だ。

 上から偵察するに、古代兵器の姿はまだ確認できない。

 と、思っていた。


「……っ!!」


 背中を斜めに走る鋭い痛み。

 態勢を一瞬崩したが、すぐに持ち直し後ろへ振り向きざまにファイアボルトを撃つ。

 サーチ型のステルス兵器、だと。

 五角形のボディに、1本のアームと、2本のナイフアームが伸びる、単眼の兵器。

 ひとまずは魔術が命中し、兵器の活動は停止したものの、負った傷は大きい。

 その場にしゃがみ込み、傷をいやす魔術を唱えようとした瞬間。

 背後から、つまりは防御壁の向こう、敵が攻めてくるであろう方向から大量の駆動音が聞こえる。

 まさかと思い振り向く。

 そこにはたった今鎮静化させたものと同じ、サーチ型ステルス兵が5機ほどステルスを解いてこちらへ敵意を示していた。

 これは、正直言ってやばい。

 痛みに耐えながら立ち上がり、もう一度ファイアボルトを撃つ。

 ボルトは2機を墜落させたが、まだ3機残っている。

 そしてその3機に気を取られ、油断していた。

 もう1機いたのだ。

 足元でステルスを解いた、隠れていたサーチ型ステルス兵が両脚を切り裂く。

 俺は地面に吸い付く様に倒れこんだ。

 やばい、やばい、やばい……!!

 しかしなぜ、今日に限ってこんなにも積極的にアタックを仕掛けてきた?

 ステルス兵1機の生産に使う魔力は普通の兵器の何十倍もあるのに、なぜこのタイミングでその高価な兵器を大量投入した?

 目の前で3機が一斉に捕獲用のワイヤーを背部から伸ばしているのがぼんやり見える。

 俺は、慢心したあげく人質としてとらえられ、今までの功績を全て失う?

 そんなわけには、いかない。

 そんなわけには。

 胸を押し広げるほど高ぶった感情が、最初に撃墜させたステルス兵のモノアイ部分と共鳴するように光り、俺に大量の魔力が流れ込む。

 恐ろしいほどの自然治癒力。

 そして一瞬でも気を緩めれば乗っ取られそうなほどの強大な魔力。

 形勢は逆転した。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」


 俺は叫びながら、渾身の一撃を放つ――





 ――フレアゾーン!!


 一瞬でステルス兵達を蒸発させ、跡形もなくなるほどの熱量で空間を包み上げた。

 そして、俺の記憶はそこで途切れていた。



 ※  ※  ※



「国王、先ほど試験導入したサーチ型ステルス兵ですが、魔術による熱で全て蒸発したもようです」


「蒸発……? どういうことだ」


「言葉通りです、直前の映像が転送されています」


「……ほほぅ、この少年……この少年こそ、私が求めていた人間だ」


「やはりこの少年が……」


「間違いないだろう、ふふっ、ふははっ、1機に賢者の石を搭載して正解だったな」


「では、あの計画を」


「あぁ、実行するときがきた」

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