百合について
2021.8.28 さば・ノーブ様に挿絵を描いていただきました!ありがたやありがたや……(*´▽`*)
さば・ノーブ様の御作品『魔鋼騎戦記 熱砂の要塞 <闇の逆襲>』もぜひ♬挿絵付きですぞ~(*^^*)
https://ncode.syosetu.com/n6923ek/
私は江上りさ。百合は従姉妹なんだ。
「ね、百合と一緒に住んであげて?」
百合のママ―金森のおばさんから電話がかかってきたのは、高校卒業を間近に控えたある日のこと。
音大に入った百合と同居してくれないかって。
ピアニストになる百合をサポートするため、家事全般を頼みたいのだそうだ。交換条件は、合格したのに学費がキツくて諦めかけてた四年制大学の学費援助。もちろんマンションの家賃負担もナシで。
正直めちゃくちゃ美味しい話だ。
…でも、美味しい話にはウラがある、なんて言うしな~。
「りさちゃんならしっかりしてるし、何より信頼できるもの。運転免許も取ったんでしょ。せっかく受かった大学諦めるなんてもったいないわぁ~。ね?お・ね・が・い♡」
しっかりしてる、信頼できる…?え、エヘヘッ。そ、そうかな~?なんか照れちゃう。
気がついたら「任せて下さい」って言ってた私。
免許がどうとか言ってたけど、送り迎えでもさせる気なんだろうか。ま、いいけどね。それにしても…。
百合ってどんな子だっけ?
記憶をひっくり返してもイメージがさっぱりだ。
最後に会ったのいつだっけ?
…ま、いっか。会えばわかる。それより、夢の四年制大学ヒャッハー♪家賃ナシだしぃ、新しい服買っちゃおっかな~。
◆◆◆
で。引っ越し当日、百合と会ったんだけど。
誰、この美人。
モデル体型って言うの?
背が高くてスレンダー…ちょっとムカつく。
百合は相手が従姉妹なのに、「よろしくお願いします。」って神妙な顔して頭下げてきてさ、ちょっとウケた。
◆◆◆
共同生活を始めて早一日目、早速百合は爆弾投下してきた。
朝起きてリビングに行くと、玄関から「ゴミ出してきた~」って百合の声がして。
引っ越しでゴミ袋が五つくらい、いっぱいになってさ。全部なくなってたから、「百合ありがとー」って玄関覗いて、私は硬直した。
百合ったら髪はボンバーだし、着てるのは男物の肌着(彼シャツじゃないよ、お父さんが着てる綿のアレだよ!)、ふさふさの尻尾がついた謎のキャラものの超ミニスカ、足にはトイレスリッパ、極めつきにノーブラ…なんて格好なの!
(挿絵/さば・ノーブ様)
「ちょっと百合!あんたそのカッコでゴミ出し行ったの?!」
って聞いたら、百合はキョトンとして
「そうだけど?」
って。あんたの服装は通報されるレベルだから!
いやな予感がした私は、すぐさまクローゼットの百合の服を全部床にぶちまけた。
そしたら出るわ出るわ、個性的すぎ且つ原色なワードローブの数々が。どこでこんなん買ってきた?
昨日のまともな格好の方がミステリーだよ。
つーか、お父さん肌着、多っ!
「ゆったりした服が~好きなの~。」
「…。」
「防犯にも効果があるんだって~。」
ダメだ。ファッションセンス以前の何かがぶっ壊れてる。
私は即、金森のおばさんに電話をかけたのだった。
◆◆◆
数日後、百合のクローゼット内はカジュアルブランド『エニクロ』一色に統一された。
スタイルの良い百合はベーシックなモノなら何でも似合うし、簡単だったよ?個性的原色服と男肌着は段ボールに詰めて送り返した。百合がごねると面倒だから、女子が着てもオッケーな彼シャツも買ったし、私って気が利くぅ~♪
真っ黒天パーだった髪も、カラーとパーマで手ぐしだけでサマになる。
これでもう、ゴミ出しドッキリみたいなことにはならないだろう。うん、私って優秀♪
◆◆◆
百合との生活?
まあ、思ってたより忙しくはなかったかな。
百合は家にいるときはほぼピアノ(なんとマンションに防音室があるの!さっすが金持ち金森家!)だし、家事全般は自分のも兼ねてるし、バイトする余裕もあった。
あ、でも金森のおじさん(百合のパパだね)から、百合が受ける講義にいろいろ口出しがあって、履修組むのを手伝ったりはしたかな。
百合は口をひん曲げてたけど、おじさんもアンタの将来が心配なんだって。
生活能力皆無だし、一人で電車に乗せると二百パー迷うし…だいぶ抜けてるからね。
それに…百合はかなり変わった子だった。
独特な感性持ってるし、超マイペースな性格だし、子供の頃からレッスン漬けってこともあると思う。
けど、なんというか…コミュ障?
フツーに会話できる人が極端に少ないってゆーか。
友達もいないんじゃない?
まあ、挨拶からして全っ然言わないし、それが当たり前って感じだし。
いつもぼっちだったよ。
たまにね~、なんか言いたそうにしてる時もあるんだけどさ、美人だから?も、すっごいコワイ顔で睨んでてさ~。
友達できないのも納得だわ。
私?あ、全っ然へーき。あんな見かけ倒し、怖くもなんともない。




