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譜捲り係…?

結局…これを狙ってたのかもしれないけど、譜捲(ふめく)りの恐怖に怯え、百合さんから渡された謎の文―タイトルが『スカルボ』(辞書にのっていなかったからどういう意味なのかは不明。悪魔?虫みたいなヤツ?)で、外国語はフランス語だとわかった。とりあえず、約束の日までに死ぬ気で訳を頭に叩き込んだ。暗誦できるよ。…不安しかない。



言われたとおりヒゲを剃って(といっても薄いからあんまり変わらないけど)、集合場所にやってきた。自分が一番早かったらしく、しばらくして小林さんたちが到着した。背の高いキリッとした顔の男性も一緒だ。よかった男が自分だけじゃなくて。彼にいろいろ聞いてみよう…と思ったのだが。


「リク、緊張してるの?」


小林さんが親しげに彼の頬に触れる。いや、わかるよ?君たちそういう関係なんだね!リア充…小林さんの彼氏。マジかよ。


改めて小林さんの彼氏を見て思った。世に言う細マッチョってヤツだ。…ムリ。負ける。完全アウェーに動揺しまくっていると、その彼氏から声をかけられた。


「どうも。神宮寺(しんぐうじ)と申します。」


「あ…水島です。よろしくお願いします。」


互いに名乗り、軽く頭を下げる。


「専攻をうかがっても?」


「あ…ロボティクス学科です。」


「………は?」


「え…?」


ヒュウゥ。二人の間を生ぬるい風が吹き抜けていった…。



◆◆◆



いろいろと不安になって、百合さんに聞いてみようとしたのだが、


「私たちは支度に時間がかかるから、」

とか言って小林さんが連れ去ってしまった。そうこうするうちに自分と神宮寺君が呼ばれた。呼んだのは人の良さそうなおじさん。彼は神宮寺君を見てほくほくと笑った。


「おおっ。格好いい彼氏だねぇ…え?眼鏡君?!」


視線が自分を捕らえて、おじさんの顔が引き攣る。


………すみません。地味で。譜捲り係にルックスが要求されるって知らなかったんです。


「……とりあえず、そのワカメみたいな前髪なんとかして、眼鏡外そうか。」


「……はい。」


項垂れる自分を神宮寺君が気の毒そうに見ていた。



◆◆◆



「……その、小林になんと脅されたんですか。」


盛大に髪を弄られている横で、神宮寺君にズバリ聞かれた。え…それ聞く?


「そ、その…」


鏡越しに神宮寺君をチラ見する。……うん、言えないわ。死ぬ気しかしないもん。とりあえず曖昧な笑みで誤魔化した。


「ロボ…工大の方と百合が知り合いとか、どうしても信じられませんで。」


「…アハハッ」


名前を呼び捨て…!親しいんですね。無理です言えません。


「何があったか知りませんが…アイツらが無茶言うなら、止めますから。」


「……ありがとうございます。」


普段洗ったら放置の髪に櫛を入れられ、リア充っぽくセットされた。やけに視界がクリアなのが落ち着かない。さっきのおじさんが似非(えせ)リア充な自分を見て、ほくほく笑った。


「お、男前になったじゃん。安心したよ。ああ、身長いくつぐらいかな。」


「191です。」


おおっと仰け反るおじさん。ハイ、身長だけは特撮ヒーロー並みの男、水島結弦(みずしまゆづる)。彼女いない歴=年齢です。


「百合ちゃんが170くらいだから、ちょうどいいねぇ。けっこうけっこう。」


タキシード何色にしよっかな~、とどこかへ歩いて行くおじさん。譜捲り係はタキシードを着るらしい。…この気合の入りよう、失敗したら……処刑?!


「大丈夫ですか?」


「………たぶん?」


神宮寺君に苦笑いで答え、自分に言い聞かせた。大丈夫…!なんとかなるさ!三十分だか一時間だかわからないけど、捲ればいいんだ捲れば……解放される、はず。

更衣室に押しこまれ、指示された衣装に着替えて、女性陣と合流すべく神宮寺君と女子更衣室に向かった。

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