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ヘタレの努力家  作者: りばーしゃ
第3章 武術大会〝アーツカッチア〟
202/213

朝から試合の研究




「昨日知らせた通り、ギルド員のパーティ、アガポジ対炎雷流武術えんらいりゅうぶじゅつ一派の試合は凄惨たるものだったよ。ルールは勝ち抜き戦、それにも関わらず炎雷流武術一派のリーダーのムクゲ含む二人が欠席、二人居ない状態で行われた」




『炎雷流武術、火花の舞』




『速ッぶ、ごはッ!!』




『凄まじい連撃の猛襲ゥウウウ!!ソウゲ選手の体術がアーニスゾイル選手を捉えて離しまセーン!翼で宙に逃げる事も敵わない程の猛襲に同じ鳥人としては心苦しいでスガー』




『そこまで!勝者ソウゲ!』




 連撃を避け、鳥人であるアーニスゾイルが宙に逃げようとするも、明るい赤髪をした細身の男性はその脚力で間合いを詰め、少しの高さすら追いかけていく。


 まさに電光石火、そして速さだけでは無い、それに伴う威力がアーニスゾイルの意識を奪っていた。


 知人である人物の一方的にやられる様子にルギくんの表情が曇る。




「アーニスゾイルさん…」




「先鋒で出たソウゲはもちろん、続いて出たパーティも一方的だ。だが僕達が注意するのは副将戦、大将戦と続けて出たこの男だろう」




『ガァアアアアアアアアッ!!!』




『大将ガルマル選手の咆哮と猛獣の如き爪が乱れ飛ブゥウウウ!!』




『……』




 虎の獣人、ガルマルの攻撃を容易く避け、いなす白に髪先だけ桃色をした長身の男は無言。


 細身のソウゲよりも高いその男の足の運びは身長の高さを感じさせない程に滑らか。ふと、選手入場時に彼がムクゲをたしなめていた長身の男だというのに気付いた。




『ですがその攻撃は二連戦している筈のサキシマ選手に容易くかわされ、あるいは流されてしまってイルー!!これが炎雷流武術えんらいりゅうぶじゅつの実力なノカー!?先に倒された仲間と同じく屈する事になってしまうノカー!!』




『ギルドの中では確かな実力者なのであろう。だが、魔物や猛獣とは戦い方が違う、対人戦が甘い』




『こ…の…!!このまま負けったぱなしでたまるかぁアアアアッ!!〝猛獣変化もうじゅうへんげ〟!!』




 その叫びと共にガルマルの身体に変化が訪れた。


 身体の周りに起きた変化へんげの煙、四肢は太く大きく、爪はより鋭く、口元に生えた牙はより凶悪に。


 見上げる程に大きな虎の姿に変化したのだ。




『なな、なんトォオオオ!?ガルマル選手の身体が大きな虎の姿に変化しまシタァ!!』




『対人戦がどうしたってぇ!?この大会で使う事になるとは思わなかった対魔物戦のとっておき!躱されるなら躱されねぇ程のデカさで攻撃だぁあああああああ!!!』




 咆哮と四肢にみなぎった力。


 巨大な虎、処刑道具のような凶悪な爪がサキシマに襲い掛かった──が。




『──訂正しよう。貴殿はギルドの中では確かな実力者だ。だが、相手が悪かった…炎雷流武術えんらいりゅうぶじゅつ輝砲雷きほうらい




 す、とガルマルの攻撃に合わせるように無造作に出したサキシマの右手。


 刹那、その右手から稲妻がほとばしり、凄まじい速さで何かが発射、ガルマルの腹部を捉え、吹き飛ばす。


 巨大をものともしないそのサキシマの技に、ステージに張られた結界に叩きつけられる、ガルマルの苦悶の声が響いた。




『ガッ、ア──ッ!!』




生憎あいにく、貴殿より遥かに小さく強い者達の背中を見て来たのでな。自身より大きな者の戦いはそちらより遥かに慣れている』




『決ッ着──』




「副将、サキシマ。ああ見えて〝付与系〟、〝無属性〟の猛者だ」




 映像の音量を下げながら、ロスがそう遮った。


 聞き間違いだろうか、今、ロスは〝付与系〟、〝無属性〟と口にしたような気がする。




「おいおい、何かの間違いだろ?コイツの何処が付与系、無属性なんだよ?思いっきり右手からなんかぶっ放してんじゃねぇか。手がバチバチなってるしよぉ」




「事実だ。実際にその場で見た放出系のルギくんも確信してる」




「そうなのルギくん?」




「うん、オレも放出系だからかもしれないけど…なんかあの人の感じはオレと同じ放出系では無いと思う。むしろカナタ兄ちゃんに近いかな」




「俺ぇ?付与系なんだからむしろダグじゃねぇのか?」




「初めて会った時、兄ちゃん魚を焼いてた串を消毒しようと魔跡玉オーブで火を出してたでしょ?あの時と〝そっくり〟だったんだ」




「あの時か…よっ…と、この時と同じか?」




 右腕に付けた魔跡玉を着けておける腕輪、それに意識を向け、手のひらに小さな火を灯す。


 思えばこの火も安定したものだ。最初の頃はもっと小さくが弱い物だったのに。




「あっ、それそれ!その時とおんなじだった!ゼーベック兄ちゃんが技出してる時とは全く違ってた!」




「…ルギ坊がそこまでいうなら本当なんだべな…でもオラと同じ付与系、それに…すげぇ威力だよ」




「幸いお見舞いには行ったが大事には至ってはいない、意識もはっきりしてたし今日の昼には観戦も出来る筈だ…と、それはさておき、〝残りの二試合〟、見ておくと言い。特にカナタ、君はな」




「また俺?…って、ああ、〝残りの二試合〟ね、そりゃ確かに」




 ぽしゅん、と火を消して呟く。


 自分で言っていて改めて気付いた。そうだ…ヴィレットと、デンイ達の試合だ。


 ロスが手にするリモコンによって映像はヴィレット達の試合へと切り替わる。


 そこには懐かしい顔もいた。




『おおーット!?今大会初参加となるヴェイール選手、傷を負おうが血が出ようがお構い無しにゴリ推しで果敢に戦場を走るものの、ファードラゴンに捕まってしまッター!!』




『うおお!?た、高いー!?離…せッ!ぐぬー!!』




── 一人──ご──案──内〜──♪




『クオっ』




『わぁああああああ!?目が回るぅうううううう!!』




『ああットー!ヴェイール選手、とんがり団の曲芸に弄ばレルー!!』




「ふははは、ヴェイールの奴やられてやんの。にしてもアレ強えなぁ…捕まったら一撃じゃねぇか」




 狂狼鬼きょうろうきvsとんがり団。


 ペストマスクがトレードマークの団長のプラズマ球による拘束と、ファードラゴンのミレーネによる曲芸攻撃。


 単純だがあれは強い。自身の身体の上というフィールドで起こされる多方向の重量の攻撃は、強靭な牙狼族や鬼人族にも通用するようだ。




『情けねぇなぁヴェイール…団長とやら、我にもそれをやって見るが良い。〝効く〟とでも思っているならな』




──!──な──ら──ご──案──内〜!




 ぽい、と放り出されるぐるぐる目のヴェイールを横目に、ヴィレットはそう誘って見せた。


 プラズマ球によって同じく拘束されるも、ヴィレットは腕組みのまま仁王立ち。


 アイツは何をやっているんだ?と思っていると、ヴィレットも同じく曲芸の攻撃を──!?




『ぐはははっ!愉快愉快!なるほど、これならば普通な奴ではひとたまりもないだろうな!』




 まるで平気だとでも言うように笑うヴィレットに団長は困惑した。




──そ──ん──な──!




『悪いな団長とやら。我は〝酔った事が無い〟のでな、それに──空脚くうきゃく




『クオっ!?』




 ヴィレットの技の掛け声と共に回転から抜け出し、ファードラゴンはその衝撃に短いに悲鳴を上げた。


 空脚くうきゃくでその大気ごとファードラゴンを蹴り出し、脱出しやがった…!




『我はこれより速い景色を良く見ている。そちらのドラゴンは我の力量が分かった筈だが…続けるか?』




──降──参──




『クオ〜…』




『け、決着ーッ!ヴィレット選手、たった数秒で実力を見せつけタァーッ!!』




 何処からともなく団長とファードラゴンは小さな白旗を手で、尻尾で振り、負けを認めた。





「そうか…アイツ酔わねぇんだった…」




「次はこちらの戦いだな」




 映像が映すのは…妖風霜ようふうそうvs陰陽化怪流(いんようけがいりゅう)




『ウォオオオオオオオオ!!』




『氷のつぶて!』




『氷雪の嵐!』




零下れいかの滝!』




 デンイ達に襲いくる霜月の巨人、オーダムの拳と妖精達による幾つもの氷の魔法。


 そこで動いたのはトウカさん、シュエンさん。




『妖術、荒炎あらほむら。ほれシュエン、出番じゃぞ』




『その拳、拙僧がお相手致す!〝樹木変化〟、むぅん!!』




 青き豪炎が氷の魔法を掻き消し、シュエンさんの巨大な木の拳がオーダムの拳を殴り飛ばしていた。




『デンイ、行くぞ』




『あいよ、魑魅魍魎ちみもうりょう現界。河童、奴の顔面までたのんます』




 デンイの能力で召喚された河童が、その怪力で二人を──投げ飛ばした。

カナタ


「そう言えばシラタマ達はどしたん?姿が見えねぇぞ」




ルギ


「シラタマ達ならまだくろ助と夢の中だよ。オレは兄ちゃんと修行の時一緒に起きてたから慣れたけど」


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