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ヘタレの努力家  作者: りばーしゃ
第3章 武術大会〝アーツカッチア〟
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武術大会、開幕

また一つ年を取りました。


とりあえず一年健康でいつつ学生時代よりも増した筋量と腹筋を維持していきたいです。





 巨大な円形のステージ、それを囲むは種族問わずの人、人、人──いわゆる円形闘技場コロッセオ


 そのステージへと道が続く、控室に備え付けのディスプレイ状の魔道具に映る景色を見て感嘆の息が漏れた。




「うへぇ、流石にすげぇな本戦は。この国の殆どが見てるんじゃねぇの?」




「正解だカナタ。この国の中心に作られた巨大な闘技場は国王と有数の建築士達が創り上げた建物で、国中の人々がまるっと入れる程の巨大さを誇ってる」




「もちろん至る所に備え付けの魔道具で家の中でも観れる一大イベントだよ。この日ばかりはどこの店も殆ど休みだから売店や清掃の出稼ぎに来てるぐらいだからなぁ」




「ほえー」




 そう言えばそんな事を〝幸食亭こうしょくてい〟店長のバルちゃんが言ってた気がする。


 ちなみにだがシラタマとルギくんを出店の手伝いとして預かってもらってたり。


 出店の手伝いだからそんな難しい仕事は無いだろうし客寄せの看板としてはぴったりだろう。


 今俺たちは控え室にて呼ばれるのを待っている所だ。


 見せ物らしくマイクマンが盛り上げながら呼ばれるのだろう。




「しかしロスとダグの武器がそれだったとはな。見せてくれよ」




「ほらよ、壊すなよ?」




 ふと二人の背に担いだその大きな武器を見ながらそう言うと素直にその言葉が出た。


 ロスの背には青い長銃スナイパーライフル、ダグの背には携帯大砲バズーカ


 俺は近距離、ゼーベックは中〜近距離、遠距離はどうするのだろうと思っていたのだが……問題は全くと言って良いほど無かった。


 合わせて修行しようとロスが提案してくれた時に武器を見せてくれたのが二人の背中に背負われたゲームで良く見た〝銃〟だったのだ。


 ロスの長銃は普通のよりは短めの銃身のボルトアクションと呼ばれる手動で薬莢やっきょうを排出する仕組みのスナイパーライフルだ。


 すぐに聞けば良かったかもしれないがそれで修行する時間を無駄にしてはな…と思ってたので今聞いたのだ。




「…ストレートプルアクションじゃねぇか。レバーの前後で薬莢の排出と同時に装填リロードが出来るイカした奴」




「随分詳しいじゃないか。元々そう言うのもやっていたのか?」




「まさか。ゲーム(仮想空間で出来る遊び)で愛用してた銃にそっくりだからな。コイツの装身リロードの音がたまんねぇんだよなぁ…ちょっと聞かせてもらって良いか?」




「ああ、良いぞ」




 ロスが快くそう答えると、銃身の右横に着いたレバーを前後に動かし、廃棄、そして装身。


 奏でるは金属と金属、カラクリとカラクリが織りなす短い呼吸音。




「あー、めっちゃ良い音でサイコー」




「ははは、僕もそれで引かれたクチだよ。他の銃には無いこのアクションも好みなんだ」




 なるほど、ロスもそういうのが好きな人種だったらしい。


 金属が奏でるあの心地良い音色、良いよね。楽器とかには無い美しさがある。


 ダグの持ってるバズーカは特殊で台座にもなるような折りたたみの盾が付いているが……それだけでは無いが今言う事では無い。そんな事よりもっと根本的に聞く事がある。




「ところで……どうして俺の世界にもあった銃があるんだ?」




 そう、何故、異世界にこんな物があるのか。


 仕組みも作りもまるで俺の知っている銃のそれ。


 その質問に「なんだ、そんな事か」、とロスが答えた。




「英雄の一人に銃を使う人が居てな、名前を…〝時遊びのロベルト〟」




「あー、ゼーベックが手本にしてると噂の」




「魔武器職人のビットと同じ希少な古代人の生き残りらしくてな。そのロベルトの一族がこの世界に銃の文化を与えたらしい。実弾だけの銃じゃなく、魔武器としてな。コレもダグのも魔武器だ」




 ロスの説明を聞きながら、脳内でケスルタ先生にその事が乗った本を見せてもらう。


 おいおい、マジかよ。その人の力ならワンチャン元の世界にも帰れるかもしれないのか……ま、帰る必要も予定も無いけど、もう死んだ世界だし。




「なるほどな。……あの俺とルギくんで作った〝弾〟はちゃんとぶっ放せそうかダグ」




「もちろん大丈夫だよぉカナタ。…使ったら驚くぞー」




 俺がにたぁりと悪い顔をすると、それにダグもロスも悪い顔で答えた。




「上手くいったら…ゼーベックも例の通りに」




「おん?…ああ、任せとけよ。全くとんでもねぇ事考えるよなカナタ。え?」




 ゼーベックの言葉が終わるなり重なる悪どい笑い声。


 ひとしきり笑った後、〝アレ〟を思い出した。


 大事な大事な〝アレ〟だ。




「ほんで俺達のパーティ名はどうなったんだ?」




 幾つか候補があったとは聞いたがどうなったのかは俺は知らないのだ。


 流石にチームゼーベックは俺もごめん被りたい。




「もうそろそろ〝ソレ〟が呼ばれるよカナタ。おっ──」




 ホーン、とアナウンス音が鳴ると、大会の様子を映していた画面のスピーカーっぽい所から男性の声が聞こえた。




──〝スタナーテラポス〟ステージへ向かって下さい。




「スタナー…テラポス……?」




 テラポスはナージ語で〝使徒〟という意味。


 スタナーは…多分、【闘神スタナ】の事だ。




「カナタの闘い方を見て僕とダグがピンと来たんだ。肉体をメインに戦場を舞う姿、自在に変化する武器を扱うその様子が【闘神スタナ】にそっくりだなってさ。それにちなんで名付けさせてもらったよ。スタナーテラポス、チームゼーベックよりは遥かに良いだろ?」




【闘神スタナ】とは図書館の本の一つ、〝古代聖霊と神々〟にも書いてあった神の一人。


 弱きを助け、自身から自在に生み出される神器を巧みに操り、幾百の敵を瞬時に屠りさったと言う。




スタナーテラポス(闘神の使徒)か……ははッ、確かにその通りだわ。アイツ等の為なら闘神にだってなってやるよ。それに……チームゼーベックより遥かに良い」




「で、どんな気持ちだが?ゼーベック?」




「……まさかオレが女性を眺めている間にそんな事を考えてたとは……」




 ダグがジト目をしてそう聞いたのを真面目な顔でそう答えたゼーベック。よし──





「──よーし、さぁ行くぞロスにダグ。呼ばれてんだから早く行かねぇとな!」




「そうだ早く行かないと。ダグ、置いて行くよ」




「ほーい、今行くだよー」




「……──ほあッ!?おいお前ら置いて行くな!!」





 じゃあかぁしいこのぼけぃ。







「レディィィィィィィスエン、ジェノメェェェエン!!!良く来やがったナァ!!!おめぇ達ィ!!!!」




 この闘技場一帯に、灰色の短髪をした威勢の良い鳥人の女性の声が響き渡った。


 それに答えるは雄々しく、黄色く、盛大な声の津波。


 今──幕が上がる。




「異種族混合武術大会『アーツカッチア』!!!開幕だぁああああああッ!!!!!」




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