表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘタレの努力家  作者: りばーしゃ
2つの【出会い】
16/213

ゆっくりやっていこう

花粉が大分落ち着いて来ましたね。


マスクしなくてもいいレベルまで来たから眼鏡常備の俺には有難いでござる。


しなくてもいいレベルになったのにこの寒さはどういう事なの……教えてくれシラタマ←

「あ゛ーーー!!終わったーーーー!!!」




 支えの無くなったペンがからりと机の上に転がる。

 右手の一部分はすでにインクで擦れ、真っ黒になっていた。




「…うん、これならこの世界の何処へ行っても大丈夫だろう。それじゃあ昼食にしようか、大分時間過ぎてるけど」




 そう、昼はとっくに過ぎていた。

 胃袋の魔王が吠えて催促している。もちつけ。

 なおシラタマは既に夢の中へと旅立っている…あ、ぷわーっと鼻ちょうちん出してら。いやまて鼻どこだお前。




「おお…やっと我が胃袋の魔王が落ち着く時が…ほれシラタマ飯だってよ」




「…にゅっ!」




 呼びかけた瞬間、ぱぁんと鼻ちょうちんを破裂させてシラタマが起きた。なんだその天然アラームは。







「うむ、ご馳走様でした。ようやく胃の中の魔王も納得してくれたようだ」




 くぴりと食後のコーヒーを一口飲む。

 いつもの甘めのコーヒーではなく食後なので少し苦めでスッキリとしたものだから口直しに丁度良い。




「大体通常の2倍程度の食欲に落ち着いたね。良かった良かった、これなら狩りに行かなくて良さそうだ」




 汚れて役目を果たした食器達を浮かせながらアルは答えた。

 ふわりと浮いた食器達が流し台へと向かうと何処からともなく現れた泡と水が踊るように洗っていく。




「おお…すげぇ。そしてあの食料は全部アルが取ってきた物だったのか」




「世界樹の葉とかアルラウネの葉は貰い物だけどね。ここには無い物だからわざわざ取りに行くのはめんどくさいし」




 手をひゅんひゅんとさせながらアルは食器達を踊らせる。

 ここまでスムーズだと一種の芸だよな。おお、もう洗い終わったのか。




 浮かんだタオルによってピカピカに水気を拭かれた食器達は静かにかちゃかちゃと音を立てながら次々と棚へと滑り込んで行く。




 あーら便利ね。あたしも使えるようになるかしらシラタマさんや。


 ちなみにシラタマさんは食事に満足したようで膨れたお腹?をぽんぽことリズミカルに叩いている。和む、もっとやれ。




 シラタマで和んでいると、不意にアルがあ、そうだと俺に言ってきた。





「腹ごなしに魔法の練習でもしてみるかい?」




「あたぼうよ」




「にゅっ!」





 即答した。いやそらそうでしょ。れっつあふぁんたじぃ!!

 シラタマも両手をはーいと上げているのはご愛嬌だ、というか愛嬌しかないわこの毛玉。







「さて、何から教えるかね」




 ふぅむと顎に手をやって唸るアル。

 今現在の場所は俺がゴーレムと腕試しした場所に来ていた。

 ちなみに俺がゴーレムを投げ飛ばして崩れた場所は既にアルによって修復済みである。




「…よし、とりあえず基本から教えよう。魔力を感じる所から始めようか。カナタ、手を出してくれ」




「ほい」




 断る理由も無いので素直に右手を出した。まるで犬のような反応だな、俺。




「今から魔力を流す。少しぞわぞわすると思うけどそれは我慢してくれよ」




「あいよ」




 ぞわぞわするのね。やだ気持ち悪い。




 などと巫山戯た事を思ってると、そっと手を取ったアルからノーアクションで何かが送られてくる。




「…おっほ、ぞわぞわする」




 何とも言えないぞわぞわが右手から俺の中へと入って来ている。

 そうだな、例えるなら耳に息をかけられたようなぞわぞわが右手から伝ってくる感じだ。

 思わず変な声出した俺の気持ちが理解出来ただろう。


 流れて来たぞわぞわが体内へと進み、心臓付近へと流れていく。

 そうか、ここが魔力の錬成場所か。




「…分かったみたいだね。それじゃ、意識を集中させるんだ」




 そう言ってアルは俺から手を離した。

 目を瞑り、『そこ』へと意識を向ける。




…ああ、分かる。心臓付近の『ここ』。はっきりと分かるぞ。




「次はそれを体内で循環させよう。血の巡りのように、カナタのイメージで構わない」




 『ここ』から体内へ循環ね。…おお、動かせる。




 じわり、じわりと『それ』が、『魔力』が動く。

 イメージだ。地に染み込む水のように、そして流れろ、地下から流れる水脈のように…!




「…うん、上出来だよカナタ。これで魔力は目覚めて君の身体へと流れ続ける。じゃあそれの速度を上げてみよう」




 速度を上げる…なら水じゃなく電気のイメージで…ッ!




 体内を巡る魔力が加速していく。

 ぐんぐん身体が熱く火照っていく…まるでウォームアップ後の万全な身体のようだ。




「身体が熱い…うお、身体に薄ぼんやりとなんかが覆われてる」




 ふと目を開けると何かが俺の身体を包み込んでいた。

 厚さはそこまで無く、色という色も無くてまるでゆらゆらと揺れる陽炎のような物にも見える。




「それが身体強化。今のカナタに勝てるのはなかなか居ないんじゃないかな?」




「おお、これが身体強化か。…あ、消えた」




 すう、とそれが無くなったのが分かった。なんか切ない。くしゃみが出そうで出なかった時みたい。




「はっはっは、最初は誰でもそんなものさ。まずは魔力に慣れる事が最初だよ」




 ふぅむ。まぁ、呼吸のように繰り返しやってこうかね。…なんかこの感覚覚えがあるんだよなぁ……何だったっけか。




 覚えの有るような無いような感覚が歯痒いが、思い出せないならしょうがない。

 ゆっくり行きますかね。

カナタ


「くしゃみ出そうで出ない時と分かるんだけど思い出せない時ってどっち嫌?俺はどっちも。…へっきし」




シラタマ


「ふ……にゅあー」←暇再来




アル


「シラタマも運動するかい?」←魔法で小さな滑り台建設

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ