臨時ギルドカードと会議
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「所でお前何吸ってんの?駄菓子みたいな匂いしたけど」
「ちょいと特注品でな。心配すんな、副流煙ぐらいの微量なら周りを少し眠くさせるだけだ……お前は大丈夫みたいだけど」
「おお、カナタ。お前に依頼が来とるみたいじゃぞ」
喫煙所から帰って来ると、それに真っ先に気付いたソウコさんがそう俺を手招きする。
そこにはギルドの受付の一人、眼鏡の受付さんが居た。
おろー、どうしたんざましょ。依頼って俺ギルド員でも無いんでございますが。
役目を終えたソウコさんは入れ違いにトイレに向かったでよ。
「お前ギルド員だっけ?」
「いんや?登録とかはして無ぇよ?今の所フリーター状態」
悲しきかな無職。ルギくんの件でお金は手にすれどこれといった仕事は手にしていない。
いや別にこの世界じゃ金が無くても飢える事は無いし無職でも何も問題無いんだがね。
飯は狩れば良いし、お金欲しけりゃその素材やら売れば良いし。
「そんな無職の俺に何が用でござんしょか?」
「はい、カナタ様にご依頼したいと言う方が居まして……本来ならギルド員では無いカナタ様に頼むものでは無いのですがその方が……異世界人でして、特殊な依頼なのです」
「ほう」
「珍しいな。おいは寺の仕事と修行ばかりで依頼は見てないからなぁ。研究者か職人の依頼か?」
この世界で長いであろうデンイの言葉通り、ここでは異世界人は珍しい。
デンイが依頼を見ていないのはしょうがないが…まぁ他に異世界人が居るだろうとは思っていた。あのトイレの仕様とか。
「いえ、普通の仕事をしている一般の方です。分類としては職人の方に当たりますが……この後お時間は空いてますか?」
「空いてますとも。伺いましょう」
「即答かよ。目的はそれだったのか?」
「あたぼーよ。シラタマと俺の食い扶持はヤベェからな。稼がにゃ」
日持ちのする乾物や燻製の食料、腹持ちの良い食い物、安上がりで量のある食い物。
調べて探しては買わねばなるまい。シラタマはきのこで何とかなれど俺が食いたい。
ルギくんは普通の胃袋だが俺の腹は魔王クラスになってしまっているのでな。
「ギルド員にゃならねぇのか?戦闘の類いの依頼が来ない臨時ギルド員にでもなっとけよ。お前ならすぐなれんだろ」
「お、そりゃいい。なるわ」
「こちらがそのカナタ様の臨時ギルドカードです」
「いや、はえーよ」
俺の返答にシャッと目の前に差し出される半透明のカードに鋭く突っ込む。
優秀かっ。
「ギルドマスターから『アイツは登録試験パスでいい。ヴァサーゴの弟子なら問題無い』との事です。お望みでしたら正式なカードをお渡しします」
ファウストさんの粋な計いだったようだ。半透明のギルドカードにはしっかりと俺の名前と、左端にID代わりであろう小さな黒い魔跡玉が付いていた。
「臨時でだいじょぶです……ちなみに登録試験ってのは?」
「面接と簡単な実技がありますが……カナタさんこれ握り潰せます?」
目の前に差し出されたのは直径五センチ程の小さな緑色の球。
なんの変哲も無いそれを手に取り、力を込めた。
「ほい」
「うお…」
水分を含む木々がへし折れたかのような音にデンイが顔をしかめた。
びきょり、めきゅめきゅめきゅ。
思ったより硬かった緑色の球。トレントぐらいの硬さをしたそれは、手を開いてみると握力で雑に砕かれ、原型を失っていた。
「…凄いですね。魔物の外殻の硬さをイメージして作られた試験球がこんなに容易く……こんな事が出来るのは大猩猩族のカルロさんと猿人族のシュエンさん、それに牙狼族のヴィレットさんぐらいだと思ってました」
「人外乙」
「どや」
呆気に取られる受付の人と茶化すデンイに渾身のドヤ顔をしてやる。
そりゃあ頑張りましたからねぇ!なんど前腕が張り裂けそうな修行をしたか……ッ!!
「普通は身体強化ぐらいするんだよ、普通は。……まぁあのシュエンと組み手が出来るくらいだからそんぐらいは出来るだろうな。夢の人外おめでとう」
「出来れば尾っぽとか外見的特徴が欲しかったでござる。これは捨てても?」
「大丈夫ですよ。燃えるゴミです」
砕けた球だったものをゴミ箱にぽい。魔物の外殻をイメージした試験球、まさかの燃えるゴミだった。
大猩猩族のカルロ……ああ、ルギくんのお知り合いのツナギ姿のむきむきゴリラさんか。
ゴリラって平均握力五百キロあるんだっけ?ヴィレットが鉄をひしゃげる程の握力あるから……うわこわ考えないでおこ。
「おい達はギルド地下のトレーニングルームにいるから行ってこいよ。ルギ坊とシラタマは任せとけ」
「おう、任せた」
デンイがいりゃアイツらは大丈夫だろ。あれ、シラタマは……うわ、大人気。
シラタマ様、お肉でございます。
ふにゅにゅ〜
ぐああッ!もふもふだぁ!もふもふでほにほにでああ我が一生に悔いなしッ!!
早くそこ代われやァ!こっちは待っとんじゃコラァ!!
はいそこ!マナー良くッ!!
シラタマに餌付けする男女の群れ。ちなみに注意されたのは女性である。
癒しにでも飢えてるのかこの国は。
「あの付喪神は忘れんなよ。お前のもんだろ」
「あいよー。一応俺の装備品扱いかあいつは。そうかそうか」
あいつ置いてったらみんな困るか。もしかしたら餌食になった奴がいるかも知れないし……ん、ついでに〝この案〟も聞いてみよう。
「ではカナタさんご案内します」
「そんじゃなデンイ。また後でな」
「おう」
…
一方、ギルドの会議室には一般にはお目にかかれない面子が集まっていた。
「久しぶりだな、レーヴェ、ベイン」
「おいっす」
「連絡は取って居ましたが会うのは久しぶりですね」
ここのギルドマスターであるファウストは勿論の事、総ギルドマスターのバルロ、そして国王、ハウィ・ロクソドンタ。
そして、隣国【エテュディエ】より、ホワイトライオンの獣人、レーヴェ・トランスバール国王、ギルドマスターであり、ファウストの双子の兄、ベインだ。
いつもの重々しい豪華な衣装では無く、白いTシャツと黒いカーゴパンツをラフに着こなしているのは国王ハウィ。
それに対し、黒いローブを羽織り、深い青色の左目にモノクルを掛けているのはレーヴェだ。
なお、深い青色の左目に対して右目は白い、どうやらオッドアイのようだ。
ベインはファウストと同じく金色の装飾が施された群青色の上着一枚を羽織ったネズミ姿のまま。
ファウストと違うのはサングラスを掛けていない事と、左耳にリングピアスがある事か。
「どうだ久しぶりにこっちに来た感想は?」
「やはりこちらは活動的な人々が多いですね。私の国ではあんなにトレーニングエリアは賑わってませんよ」
「その分ギルドの魔力トレーニングルーム使う奴が多いっすけどね。まぁ、おかげで馬鹿な事をする奴が少なくて助かるんですが」
「羨ましいこって。こっちはトラブルが耐えねぇよ兄貴。脳筋が多いからな」
「うはっは!研修でもさせに数人交換するか?」
「今の時期は辞めてくれ。私の負担が増える……ちょっと調べ物で大会が終わったら北西に向かうんだ。その時までに仕事を済ませておかねばならないからな」
「ほう?どうしたのだ?」
「……聖霊の様子がおかしい。古代聖霊〝ウォルーラ〟様の元を訪ねようと思ってな」
「留守はどうする気だ?」
「娘に任せるつもりだ。心配は無い。護衛にベインを置いていくしな。そちらの息子を寄越しても構わんぞ?」
レーヴェの言葉にハウィは頭を押さえた。その理由がぐるぐると頭の中で渦巻く。
「それはよせ…お前の娘は苛烈過ぎてアイツとは馬が合わないのは知っているだろう?」
「冗談だ。私譲りなのは能力だけで性格は母親似だからな。それに比べてそっちは良く似たものだ」
そんな会話を交わしていると会議室の扉が開く。
一人の男、そして二人のスーツ姿の女性が姿を表した。
「おっ、集まってんじゃねぇか」
「来たか。遠国【高天津】からの代表、六道 白露よ」
夜叉のような白髪、筋肉隆々の身体付きが分かるライダースーツに左目下の泣き黒子の男を、総ギルドマスターのバルロは良く知っていた。
「久しぶりじゃねぇかバルロ。お前ん所の大会以来かぁ?相変わらず元気そうで良かったぜ」
「そっちこそ相変わらずのようで」
はにかむハクロにバルロはほくそ笑んだ。
続くようにハクロは彼らの方を見て口を開く。
「ハウィの旦那にレーヴェの旦那、それに〝フュジアーツ〟のご兄弟も元気そうで何よりだ」
「ようこそ我が国へ」
「そちらも相変わらずのようで何よりだよ」
「久しぶりに聞いたなファウスト」
「ああ、同門しかしらねぇからなぁ」
どうやらこの男、彼等とも顔見知りらしい。
空いた適当な椅子にどかりと座りながらハクロは一人足りない事に気付いた。
「あのねーちゃんが居ねぇようだが…?会議にゃ呼んであんだろ?」
「アイツはまだ仕事だよ。まぁ後で俺が連絡するさ……さて、一人足りないが会議を始めよう。議題は──例の組織についてだ」
…
カナタ
「ところでお名前は?」
受付の眼鏡の男
「クルトワジーと言います。クルトとお呼び下さい」