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ヘタレの努力家  作者: りばーしゃ
第2章 王都〜ミーション〜
118/213

服屋【双蜘蛛(ふたぐも)】

祝!!2周年!!!




「お、見えた見えた。まだ昼前だから空いてるな。良かった良かった」




 道中の出店で買った肉を既に食い終わったゼーベックが前方に見えて来た店を見てそう口にした。


 俺の目的である服屋でいいとこはないかと聞いてみた所、ゼーベックが「良い店がある」と自信あり気に言っていたのでじゃあそこにしようとなったのだ。


 ロスや話しやすそうなダグならまだしも、女大好きゼーベックが知ってるのは気がかりではあるが二人ともそこに行く事に否定はしなかったので大丈夫だろう……多分。




「そんなに人気があるのか?その服屋ってのは?」




「おうとも。人気さ。娼館の美女達も太鼓判を推す程の店で昼過ぎともなりゃ新作が出てるから人が溢れてるって話だ」




「あーはいはい。やっぱりとは思ったけどあーはいはい」




「ああ…兄ちゃんの目が死んだ魚のように……」




「娼館のが言ってるなら大丈夫じゃね?」




 ルギくんが俺の表情にぽそりと呟いていたのが聞こえたが気にしない。


 自信あり気だったからと黙って聞いてみりゃーやっぱりそういう路線からだったか。


 仕方ないのだよルギくん。「次に標的になる人が犯人です」と予告されたお話しが面白いと思うかね。


 聞き流してはいるがやれ「あの子は良い尻だった」だのやれ「〇〇の上目遣いが堪らんかった」だのほざいている男がそのまんまの紐繋がりの話題を出したに過ぎない。


 まぁシャクが言った通り……ゼーベックがこの店は良いぞと言った訳では無いので品質に関しては大丈夫だろうと思うが。この国の人達の服のセンスは良いみたいだし。




「まま、腕に関しては確かだから大丈夫ですよカナタ。証拠としてダグが来ている真っ白な長袖はそこで買ったモノです」




「店の特注品(オーダーメイド)なんだよぉ。採寸するなりあっという間に拵えてくれて助かっただよ。オラの身体はデカいからなぁ、中々良いのが見つからないんだぁ」




「…確かに良い腕だな。あっという間と言う割にはほつれの後すらない。あとロゴ可愛い」




「可愛いよなぁこれ」




「どれどれ…あっ可愛い」




 ほらと、ダグに差し出された服の袖口をシャクと一緒に見ると寸分狂いも無く縫い後が綺麗に仕上がっているのが分かった。


 あと、ハイタッチしてる二匹の蜘蛛のロゴ可愛い。吹き出し付けるなら「いぇーい♪」。間違い無い。


 そんなこんなをしているとその店の前へと着いた。




「さぁ、着いたぞ。ここが国一番とも言われてる服屋【双蜘蛛(ふたぐも)】だ。さぁ…噂の美人姉妹は如何に……」




「美人だと…?ほう……じゅるり」




 あ、デフォルメ化された白黒のゴスロリ服を着た蜘蛛と、赤黒の和服を着た蜘蛛がハイタッチしてる看板だ。


 店名看板通りでめっちゃわかりやすいのな。ロゴのモチーフこれか。


 あとシャク。舌舐めずりをするな。







 中が見えるガラスのドアを開けると、心地よい音が鳴った。


 それと共に鼻腔の奥へと飛び込んで来るのはツンとした染料の臭いと、消毒だろうか、アルコールの臭いがする。


 僅かな物だがその臭いは眉間がきゅっとなる。


 その証拠にシラタマとルギくんはその顔のパーツをきゅっと中央に寄せていた。可愛い。


 店内には数体のマネキン、そして様々な柄の布や革が丸められた多数の壺。


 中は広い為、服屋とは予想に反してシンプル…というかこざっぱりしていた。


 服屋と言えば様々な服が並んでいるイメージがあったが……これはどう言う事だろうか?




「あやあや?姉さんお客様のようで?」




「んえー?お早いですなぁ?」




「おお…なるほど……そう言う事か」




「ほう…ゴスロリに和服ですか…良いですな……」




 奥から現れたのは黒白のゴスロリ服を着た、蜘蛛の胴体に女性の身体が生えてるような亜人──いわゆるアラクネと、一見普通の和服の女性に見えるが背中から蜘蛛の足が四本生えた──いわゆる女郎蜘蛛(じょろうぐも)だった。


 なるほど、看板の意味も店名も合点が言った。


 ここは西洋、和の亜人、妖怪二人のお店だったのか。




「どうも、また来させて頂きました」




「どうも〜」




「あやあや?その顔は何時ぞやのお二人。服の調子はどう?」




 特徴的な口癖を放つ、アラクネの女性。黒いショートボブカットが良く似合うゴスロリ服の印象はとても人懐っこそう。


 背丈はアラクネと言う事もあり、大体俺やダグと同じくらいの目線だ。




「とっても良いだよ。肌触りも良いしなんも悪い所はねぇよぉ」




「今日は連れが衣服を買いたいらしいので、それで」




「あやあや。それはありがとう」




 両手をぱちんと合わせて彼女は感謝の意を表した。


 すぐ側でゼーベックが「美しい…ほう、小ぶり…七十くらいと見た」とか胸元を見てなんかほざいてるが聞いていない事にする。




「どうも。自分のとコイツの肌着をいくつか欲しいのですが……」




「あやあや?貴方も大きな人ね?姉さん肌着ならすぐ(こしら)えれるわよね?」




「んえー。これまたおっきい人と可愛いらしい人が来たもんだねー。肌着ならすぐ出来るわよー」




 これまた特徴的な口癖を放つ、女郎蜘蛛の女性。アラクネの女性と同じく黒いショートボブ、いや、服装からしておかっぱの髪型に、黒赤を貴重とした和服は対象的に綺麗という印象を受ける。


 しかしながらそののんびりとした口癖によってその印象は砕かれており、やはり柔和に思えた。


 ゼーベックが「…なんだと……!?あの衣服の下にとんでもないモノがある気がする…!!クソっ、奴らめ俺が居ない間にこんな良い所へ…ッ!!」とかほざいているが知らない事にする。あとロスとダグの二人で来た理由は単純に衣服だと思うぞこの女好きめ。




「採寸するから奥に着いといでー。大丈夫素っ裸にはならなくて良いからー」




「あっはい。じゃあルギくん行こか」




「うん」




「ちょっとオレも採寸を──ッぐ!?何をするダグ!!」




 着いて来ようとしたゼーベックをダグがガッチリと羽交い締め。ナイス判断。




「コイツはオラ達がふん縛っておくから安心して行っておくれなぁ〜」




「丁度良い。さっき魔道具屋で買った怪しい薬をお前で試そう」




「うわロス止めろ!お前いつの間にそんな物を!?アッ──」




「さぁ行こう兄ちゃん」




「おう。シラタマ、シャク、お前達もおいで」




「ふにゅ」




「お、ラッキー。行く行く」




 ジト目になったルギくんに答えて奥へと行く。


 俺達は何も見ていないし聞いていない。なぁお前達。




ルギ


「ああいうのを反面教師にしろって爺ちゃんが良く言ってた」




カナタ


「良かったなシャク。お前もアイツと同じ運命にならなくて」




シャク


「ウチは超絶美少女だからやっても許され──あっ、シラタマさんやめてよして潰れちゃう冗談ですごめんなさい」




シラタマ


「ふにゅーん」

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