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第2話 ハルトとの出会い

「やべー!完全に道に迷っちまった!」


屋台が建ち並ぶ街を走りながら、1人の少年が、そう声を上げる。


「クソ!ルークの奴、せめて起こすくらいは、して行けよな!」


そして少年は、自分を置いて先に行った親友に、そう吐き散らすが、その言葉に返事をするものは居らず、周りから奇異の目で見られるだけだった。

実は今日は、学園の中等部の入学試験の当日であり、少年―ハルトはそんな日に、まさかの寝坊(まだ間に合う程度)をしてしまい、その上、道に迷うという、最悪な状況に陥っていた。


「まじでやべー!···こんなんだったら、事前に道を調べとけば良かった」


そして先程からどうしても学園に辿り着けないハルトは、そう弱音を吐く。

入学試験に遅れれば、勿論入学は疎か、試験すら受ける事すら出来ない。

そんな事になれば、俺の為に学費を稼いでくれた、おふくろや兄貴に面目が立たない。

そう考えた時だった。


「ん?あれは?」


ふと、先の方を見ると、街の少し開けた場所にある噴水に、1人の女の子が座っている事に気付く。

その女の子は黒髪で、綺麗な整った顔をしていたが、動かずに無表情のまま座っていた為、一瞬人形かと思ってしまった。

そして入学試験に間に合う事を、半端諦めていたハルトは、ゆっくりとその女の子に、近付いて行った。

____________


「おい、お前はこんな所に座って何してんだ?」


噴水に座ってボーッとしていたレイは、突然声を掛けられて、無表情のままだったが、内心びっくりしていた。

そしてレイがそちらの方向を見ると、そこには赤茶色の髪をした男の子が立っていた。


「···?」

「ん?聞こえなかったか?お前はこんな所で何をしてるんだ?」


そして最初はボーッとしていて、何を言われたのか、良く理解できなかったレイだが、男の子に同じ質問をされて、ようやく何を言われたのか理解する。


「···道に迷った」

「なんだ、俺と同じかよ。···あっ、俺はハルト。お前はなんて言うんだ?」

「···レイ」

「レイか、良い名前じゃねーか」


そして最初は、お互いに自己紹介をしていた2人だが、その内容は次第に今の状況の方に変わって行く。


「それで道に迷ったって言ってたけど、レイは何処に行きたかったんだ?」

「ん、友達が出来るところ」


そしてハルトの質問に、レイは少し嬉しそう言う。


「ん〜?···あっ!友達が出来る所って、もしかして学園の事か?」

「ん、そんな名前だった」

「はぁ、そんな所まで同じかよ···」

「···?」


そしてレイの行き先を聞いたハルトが、そんな呆れた様な声を上げるが、レイは良く理解出来ずに、首をかしげるが、それを見たハルトは、直ぐに分かりやすく説明する。


「実は俺も学園に向かってて、迷っちまったんだよ」

「···同じ?」

「ああ、まじで最悪だな。せめて地図でもあったら、良いんだけどな」

「···?地図なら持ってる」


そしてハルトのふとした呟きの後、レイのそんな言葉に一瞬ハルトの動きが停止する。


「はぁ!?お前地図持ってんのか!?」

「ん、持ってる」

「じゃあ、どうして迷ってんだよ!?」

「·····どうして?」

「いや、俺に聞くなよ!」


そしてハルトは、本当に地図を持ってるのか聞いた後、地図を持っていて、迷ったレイに呆れながらも、ハルトはレイがどんな人物なのかをなんとなく理解した。

(···もしかしてこいつ馬鹿なのか?···いや、今はそんな事どうでも良い)


「レイ!この時間なら、まだ受付の時間に合うかも知れない!その地図を貸せ!」

「ん、分かった」


そしてレイがハルトに地図を渡すと、ハルトの案内の元に、2人は全速力で学園に向かって行った。

_________


「よっしゃ!ギリギリ間に合った!って、あっ!?」


受付の時間にギリギリで間に合い、そう歓喜の声を上げるハルトだが、ここでレイの存在を忘れていた事に気付き、直ぐに後ろを向く。


「···?どうしたの?」

「ふぅ、悪い、レイの事を忘れて、学園まで来ちまったから、途中で逸れたかと思ったぜ。ほら、レイも受付して来いよ」


そしてレイがいた事に安心し、そう言うと、レイは訳が分からず、首をかしげる。


「···受付?」

「はっ?何言ってんだよ。今日は学園の入学試験の日だろ?」

「···?入学試験ってなに?」

「はぁ!?お前正気かよ。学園に通うには、この試験で合格しなきゃ駄目なんだよ。お前、試験を受ける為の登録はしてるんだよな?」


そして首をかしげるレイを見たハルトは、「こいつ、もう駄目かも知れない」と小さく呟く。

そんな時だった。


「···あっ、ジンが学園に着いたら、この紙見せろって言ってた」


レイが今思い出したと言わんばかりに、数枚の紙を出して、そう声を上げる。


「ん?なんだそれ?俺のとは少し違うな?まぁ、とにかく書類持ってるなら、受付に行って来いよ」

「ん、分かった」


そしてレイはそう返事をすると、受付に向かって行った。

________


「あら?あなたも試験を受けに来たの?」


受付に近付くと、レイに気付いた受付の女性の人が、そう声を掛けて来た。


「ん、これを渡せって言われた」

「ああ、書類の事ね···えっ!?」


そして受付の女性は、レイから書類を受け取って、目を通そうとして固まる。

そこにはこの学園のトップである、何故か学園長の印が記されていたのだ。

別に学園長の印があるからと言って、驚く程の事ではないと思うかも知れないが、受付の女性が驚くのにも、勿論理由がある。

実は学園長は、数十年前に魔族の侵攻から、このエルダス王国を救った英雄であり、王国最強の魔法使いと言われているのだ。

そんな国のトップレベルの存在の印が入った書類とは、一体どんな内容なのだろうか?

そして受付の女性は期待と緊張の中、遂に書類に目を通す。

しかし、想像とは違い、その内容はとても簡素なものだった。

1:この少女に試験を受けさせること。

2:試験の結果に関係なく、この少女を合格させること。

他にも幾つか書いてあったが、今必要な所を要約すれば、大体こんな内容だった。

そして受付の女性は、目の前の女の子に目を向ける。

(試験の結果に関係なく、入学させるって一体何者なの?)


「·····か、確認出来ました。レイさんですね。試験は筆記試験からなので、まずは指定の教室に向かって下さい」

「ん、分かった」


そしてハルトの元に戻ったレイは、筆記試験を受ける為に、指定の教室に向かって行った。



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