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アナタに0%の青春を。  作者: でれるり
第一章【青春するとは一体】
7/10

青春7%『女子の家』

 





「い、いやぁ、そんな女の子の家に住むとか無理に決まってんじゃん!! ははははは⋯⋯」


「⋯⋯そう」


 あれ? と思うような返答。何か悲しげな様子。微妙な空気が二人の間を流れる。


「木下さん? どうしてそんな落ち込んでいるのですか?」


 立花はまさかの事態に木下に敬語を使ってしまうという謎が発生する。




「⋯⋯私は全然オッケーのつもりだったんだけど」



 まさか、これは本当なのか? 現実なのか?

 冗談のつもりで聞いてみたのにどんでん返しのオッケーという意味のわからない展開。きっと夢なのでは無いのだろうか?



「でも木下の家の許可とか両親に取らないといけないし、木下だって準備とか色々あるだろうし、その⋯⋯えっと⋯⋯」


「大丈夫よ。私の両親のことなんか気にしなくても。それに私は準備なんかしなくても平気」


 木下は立ち上がり、濡れてシワの着いた制服を気にしながら言った。




「と、いうことは────」






 冗談のつもりで聞いてみたのに謎の展開。普通じゃありえないような漫画とかドラマであるようなラブコメ的な展開。


 あの日、木下と初めて出会ったあの瞬間から色々なことがあり約一ヶ月。木下との問題も解決し、一段落を終えたと思った矢先、ある高校のある男子高校生のなんでもない一言によって、片想いの女の子の家にこれから住むことになる。


 これは夢ではない────





「これからどうぞよろしくね!」



 木下の満面の笑み。そして立花の漫画で描かれたような驚いた顔。

 そう。もう一度言うが、立花 春樹はこの瞬間から、片想いの女の子の家に住むのだ。




 これから立花と木下の同居生活が始まる────。













 それから数十分。立花と木下は同居するにあたって真面目に相談をしていた。


「俺は元々家に両親がいなくて、近くの別の家で働いてるから全然木下との同居は大丈夫なんだけど⋯⋯」


 立花の母と父は共に不動産屋を経営していて、立花と両親は別々に住んでいる。家では立花一人で、たまに両親が帰ってくるという仕組み。


「もしハルキの両親に断られたらどうする?」


 木下は不安げにそう尋ねたが、立花は苦笑いをした。


「⋯⋯多分だけど聞いてみる価値ないと思うんだけどな」


「それってダメってこと?」


「いや、その逆だ」


 そう言って立花はまた大きなため息をひとつ、ついた。


「木下の家に住むの早い方がいいだろ? 今日の夜中にでも電話しとくよ」


 さっきまでは驚いていて現状を理解できていなかった立花だったが、すっかり同居モードにチェンジしてしまっていた。


「電話、でいいの?」


 謎の疑問が立花に返ってきた。じゃあ電話じゃなかったら一体どうすれば、という立花の疑問も同時に頭に浮かんだ。


「え? じゃあどうすんの?」


「⋯⋯私、ハルキの両親にご挨拶しにいく」


 木下はやる気に満ちた表情で立花をじっと見つめる。そこからはご挨拶に行くということしか木下からは感じ取れなかった。


「良いけど多分会ったらわかるよ」


「うん! 分かった!」


 そう言って木下はスリッパを履き、鏡で少し乱れた髪を整えて、急いでドアの前まで行った。


「早く! 急がないと他の生徒が来ちゃうよ!」


「そ、それはまずいぃ⋯⋯」


 勢いよく扉を開け、木下と立花は走り出した。











 ────夕日も沈み、外も暗くなった頃、立花と木下は微妙な距離間をとりながら商店街を歩いていた。これから二人は立花の両親の仕事場兼家に行き、承諾を得に行こうとしていた。


「私、勢いでオッケーとか言っちゃったけど、ハルキは大丈夫なの?」


「えっ? あ、うんうん! 大丈夫大丈夫」


 内心では天にも登るような嬉しさで、喜んでいるが、木下に伝わらないように留めている。


「とにかく心配するような事は一切ないと思うよ」


「どういうことなの?」


「⋯⋯とりあえず行ったら理解出来ることかな」


 立花は曖昧な返事をして、会話を濁す。

 この時、立花には分かっていた。百パーセントを超えるんじゃないかくらいの確率で木下の家に同居できるということを。


「とにかく遅くならないうちにさっさと済ませよう。行こ!」


「う、うん!」


 さっきまで歩いていた二人は一直線に目的地まで走った。










 それから数分後、目的地に到着した。


「大きなお家⋯⋯」


 そこらの普通の家とは比べものにならないぐらいの大きさの超豪邸で、不動産屋を想像させないような外観に、入口は鉄格子で仕切られ、たくさんの美しい桜がライトアップされている。



「まぁ、父さんが社長やってるからそこそこの金は持ってるんだよ」


「そうなんだ⋯⋯」


 ドン引きしたように木下はだんだん小声になっていった。見たこともないような超豪邸を見れば誰だってそうはなるだろう。


「とにかくちゃっちゃと済ませよう。さ、中に入ろ」


「は、はい!」


 立花はポケットから黒いボタンを取り出し、それを押して鉄格子の扉を開けた。

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