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アナタに0%の青春を。  作者: でれるり
第一章【青春するとは一体】
10/10

青春10%『不意打ち』

 





 ────翌日の学校で、おかしな現象が起きたのだ。




「おーい、木下⋯⋯」


 出会った際に挨拶を交わそうとしても木下が顔を真っ赤にして逃げていってしまうのだ。

 自分なりに好きな女の子に挨拶するのに勇気を振り絞っているのだが、何故か避けられてしまう。


「俺何かしたっけ?」



 避けられる理由を理解出来ず、不安を抱きながらホームルームに走る。





 その後、何度も木下と話そうとしたが、結局昼過ぎまで一言も喋らなかった。

 確かに木下と出会った時はこんな調子だったのを覚えているが、あれから進展もあり、木下とは結構話せていると思っていのだが、ただ自分でそう思っていただけだったのかもしれない。


 しかし、こんな調子では放課後からの木下ハウスでの同居生活に支障をきたしてしまう。


「⋯⋯よし、やるしかねぇな」



 ここから立花の木下と話すぞ作戦が始まったのだ。









 ────その頃、木下は教室でガン萎えしていた。


「あぁ⋯⋯。どうしちゃったんだろう。昨日まではあんなに話せてたのにぃ⋯⋯」


 保健室の件からは立花とかなり話せるようになって喜んでいたが、これが恋なんだと気づいたあの瞬間から立花のことを恥ずかしさで見れなくなってしまったのだ。


 これが恋だとわかっていても、恋は決して抑えられるものでは無い。好きな人と普段のように接することが難しくなることなんて初恋女子にはあるあるだ。

 木下はそう自分に言い聞かせる。


「ハルキ、怒ってるだろうな⋯⋯」


 この一言で、木下は気づいてしまった。



「⋯⋯ていうか私、下の名前で呼んでたんだぁぁ!! あぁぁぁぁぁぁ」


 今更立花を下の名前で呼んでしまっていたことに気づき、木下は机に勢いよくおでこを叩きつけて思いっきり発狂した。

 当然のことながら周囲のクラスメイトは何事? みたいな目をして木下を一斉に見ている。


「もう変えても遅いかな⋯⋯」


 既に後の祭りであり、今まで下の名前で呼んでいた瞬間を消し去りたい気持ちで胸がいっぱいになった。



「とにかく次にハルキに会った時はちゃんと話さなきゃ」


 次こそ立花と話さないと今度こそ避けられてる、って思われてしまう。それだけは死んでも避けたかったので木下は心を決めた。



「って、私ってばまた下の名前で⋯⋯」



 とある高校のとあるクラスのとある女子高校生が一人、初恋で悶えていた。








 ────何だかんだあり、放課後となった。二人は木の下で待ち合わせをしており、木の整備が終わったら木下の家に行くという計画であった。筈だったが。





『は、話しできねぇぇぇぇ!!!!』


 一人の男が好きな女子を目前にして何も出来ずに頭の中が爆発していた。


 木下とは一応合流したが、何も話せない。物凄くドロドロした空気になっていた。


『木下怒っているのかな?』


 無言の中、考えに考えるが理由もきっかけも何も思いつかない。

 唯一思い当たることとしては昨日の訪問だろう。突然豪邸で驚かせ、超頭のおかしい両親でさらに驚かせてしまったので怒らせたのだろうか?


 立花の手は勝手にホウキを物凄い速さで動かしていた。







『や、やっぱ無理ぃぃぃぃ!!!!』


 一人の女は好きな男子を目前にして何も出来ずに悶えていた。


 合流した際に何か立花に話を持ちかけようとは思っていたのだが、結局恥ずかしさが勝り、現在に至る。


 あれだけ無視したのにまたこの状況を作ってしまったので立花はきっと怒っているに違いない。

 木下は罪悪感と羞恥心でいっぱいだった。


 いつもより勢いの強いホースから出る水は巨木をびしょびしょにする。






『やっぱ俺から話しかけよう────』


『ハルキに話しかけないと嫌われる────』







「あのさぁ!!」


「た、立花君!!!!」



 二人の発言が奇跡的に重なり、どちらも話の続きが途絶えてしまった。



「!?」



「えっと、き、木下からどうぞ⋯⋯」


「え? え、私? たっ、立花君からどうぞ!」


 どちらも同レベルのコミュ障なので、譲り合いが凄く、一向に進まない。






「ふっ」





「あはははは!!!!」


 そして二人とも涙を浮かべながら同時に笑った。今まで笑ったこともないような大声で。




「いや、今日初の会話が同時って⋯⋯ふははは!!!!」


「あはははは!!!! あぁ、おかしい⋯⋯」


 今まで頭の中で悶えていたのが嘘みたいに笑いで吹っ飛んでいった。


 二人の笑い声はしばらくの間鳴り止まなかった。








「⋯⋯てか何で木下俺の事避けてたの?」


「あ、あれは⋯⋯」


 恋してますから、とは流石に言えない。それを言ってしまうと自爆行為であるから。




「ただ恥ずかしかっただけ」



 木下は少し顔を赤くしながら小声で言った。



「なーんだ⋯⋯。良かった。またあの時と同じ勘違いか」


 立花と木下がまだ出会って間もない頃、立花は木下に謝ろうとしたら逃げられてしまい、怒っているんだろうと勘違いしてしまったのだ。



「なんかあの時と全く同じで笑っちゃった」




 ────と、木下は突然よろけてしまった。



「お、おい大丈夫か?」



 いつもと違う。距離が違う。心音が聴こえてくる。


 立花はよろけて倒れそうになった木下を無意識に抱き抱えてしまっていたのだ。


「わぁ!! ご、ごめん!」


 自分のしていることに気づき、立花はすぐに手を離した。






「ご、ごめん────」


 いつもは一定の距離感を保っていたが、不意打ちに立花と接触をしてしまった。


 いつもより心臓の鼓動が速い。そして立花のいい匂い。


 木下は顔を真っ赤にして立花と目を逸らした。



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