上下(さかさ)ラビリンス
上下冬夜は成績優秀、運動神経もよく見た目もクールな万能高校生だが、どこか情熱に欠けていた。
いつも通りの学校生活、いつも通りの帰宅の最中に、子供が溺れている所を助けるが、助けた後、突如何者かに足を引っ張られ川に引きづり込まれる。
息が苦しい中、最後に見たのは上半身は女下半身はタコのようなイカのような触手の化物だった⋯⋯。
次に目が覚めたときは病院の中だったが、周りの心配とは裏腹に冬夜の心は熱くなっていた。
なぜなら、あの意識が無くなった後、すぐに場面がゲームのように切り替わり、俺は手に刀をもって闘っていたのだ。
それは毎日、毎日繰り返しているかのように体に染みついており、戸惑いながらも化け物との戦闘に勝利した。
川から出ると手が差し伸べられる。それは仲間なのだろうか分からなかったが手を取り立ち上がるとーービルや家もなく車のかわりに馬が、飛行機の代わりに竜が飛び交う、広大な世界が俺の目前に出現していた
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私、春乃言葉は黒髪で目を隠す様に生きてきた為、校内では根暗やオタク、貞子とも呼ばれていた。
ゲームなどは確かに大好きなのでオタクと言われるのはいいんだけど、私には額に大きな傷があり、それを隠してるだけだから根暗に見えるだけであって、根暗ではない。
いつも通り学校生活を一人でで過ごしていると、
「春乃、お前確かゲーム系得意だったよな?」
上下冬夜君に声をかけられたのである。
女子なら冬夜君はアイドル並みに好きなのではないだろうか? 実際、私も何回か助けてもらってからゾッコンであるし、ゲームも主人公の名前はトウヤにしているし⋯。
ストーカーとか思ったそこの君、だまらっしゃい!
トウヤ君はファンタジー系ゲームの話をやりたい訳でもないのに物凄く詳しく聞いてきた。
その影響だろうか⋯その数日後から私も夜な夜な夢を見るようになったのである。
「うん! 今日もかわいくできた!」
夢の中では私はヒーラー職であり、額も傷がないので目を隠さずメイクも堪能する可愛さ全開の女の子だ。
「今日は、私含めて16人で飛竜討伐だったね」
準備をして出発する。
1匹の大きな飛竜を、16人で戦うのだが私の勇姿とくと見よ!
SEEDさる事ながら、自称種割りヒーラーである私の場合、
(右側前衛に軽めのヒール、左には継続ヒールして真ん中に特大ヒール、こうすると竜のヘイトが私に一瞬切り替わるがその一瞬の隙を前衛がクリティカルで攻撃するっと)
オンラインゲームで鍛えた、このスキルは夢の中でも有効であり、アイドルヒーラーと呼ばれてもいいぐらいの人気であった。
こうして討伐した後に、素材を回収し回復しながら帰り支度をしていた。
「ギャァァァァァ!!」
突如、新たな飛竜が飛び降りてくる。
しかも先程より大きい。
「グギャァ! ガァァ!!」
空からも声が聞こえ向くと、同じ大きさの飛竜がいる。
「つがい⋯⋯って事は、いま倒したのは⋯⋯」
子を失い怒り狂った飛竜が、2匹とも襲いかかってきた。
勝てる筈もなく、戦線が崩壊する。
私達に出来る事は、死ぬまでの時間を稼ぐかのように延命するだけであった。
死が近づいていると感じる。
どう足掻いても助かる未来は残されていなかった⋯⋯筈なのに、事態は急変した。
【トウヤside】
「⋯⋯竜鱗硬いな」
刀でカンっカンと突き刺そうとするが刺さらなかった。
トウヤは、空の上ーー飛竜の背中に乗っていた。
正確には森を探索中に飛竜を発見し試したいことがあり、ここまで来たと言える。
【多、重、空、断】
飛んでいた飛竜の翼が胴体から切り離される。
飛竜が叫ぼうとした瞬間に、首、頭、身体、尻尾、至る所全て、落下しながら刻まれていった。
「まぁ、こんなところか、この刀でもやろうとしたら出来るんだが、こっちの方が楽だな」
落ちながら冷静に判断し、飛竜の身体から赤い宝石を抜き取る。
飛竜を含めて、地上にいた者は空中で刻まれていく飛竜を見る。
「トウヤくん!!!!」
地上から自分の名を呼ばれた。
「ん? あれは⋯⋯だれだ?」
見た覚えは無いのだが、今の大きな声で飛竜はその子に突進していった。
もしかすると、自分の女を失くすという事をやり返したかったのかもしれない。
気づいた時にはもう遅く女の子は竜に背を向け縮こまる。
【空、走、超、速】
空を走り、超速で竜の目前までいく。
【土、流、槍、盾】
刀を抜き、地面に突き刺すと土が生物の様に動き、槍となり飛竜の突進を食い止める。
止めどなく飛竜の血が流れるまま、腹まで進み、赤い宝石を抜き取る。
【爪、葬】
土の槍は爪の形になり、飛竜の身体ごと、土の中へと押し潰しながら沈んでいった。
「俺の名前呼んだって事は俺の事をしってるのか?」
「あ、えぇっと、ここではなくて、学校⋯⋯いえ、学舎で一緒に習っているクラスメイトにそっくりだったので⋯」
現実世界といったら変に思われるかもしれない為、出来る限り似たような言い方をしてみた。
「うーん」
私の顔を、物凄く見てる。
嬉しい!! 正直卒倒しそうだけど、もっと見て!!
「あぁ、春乃か、額に傷がないから分からなかったよ。可愛いとはおもってたけど、やっぱり可愛いのだな」
「ひぇっ!! そ⋯そんな事⋯ないです」
顔から火が出るほど、赤くなってるのがわかるぞ! こんちくしょう! さらりと可愛いとは言わないでよね。クリーンヒットだよ!
「傷の事知っているのですか?」
「ん? あぁ、髪で隠していても、結構見えるもんだぞ?」
「傷見えてたら可愛くないから⋯」
「まぁ、目立つだろうけど、傷があろうがなかろうが春乃だろ? 少なくとも俺は可愛いと思うけどな」
「じゃあ、見当してみる⋯。もしかして頑張ったら付き合ってくれたりもする?」
「ん? いいな、頑張ったら付き合ってやるよ」
言質取っちまったよこんちくしょう!
っという夢を見た。
「⋯⋯ははは、夢⋯よね⋯」
が! なぜかこの日の朝、私は前髪をバッサリ切った!!
乙女というのは単純なのである。
「ふふふ⋯⋯ついに、この封印を解くときが来たようね!!」
今まで2サイズ程上の制服を着ていたが、元のサイズを着用する。
なぜかって? 妄想で膨らんだ私の胸を隠す為だ!
が、もういい。封印は解いた。
髪型もしっかりとして、額の傷は軽く隠すが見えない訳では無い。
「さて、戦場にいこうか⋯」
私はこうして向かっていった。
案の定、学校に向かった私に、周囲の目が突き刺さる。
「あの子転校生?」
「うわ、すげぇ可愛い」
「額に傷があるのに、堂々としてるなんて凄いかも」
「すごいといえばあの胸はヤバイな」
完全に注目の的である。
(だが、私の戦場はここでは無い!)
教室に向かい、ドアをスパーンと開けると注目を集める。
その中には、上下冬夜もいた。
(よろしい、ならば戦争を始めよう!)
「上下冬夜くん!!!」
「ん? 春乃、おはよう。今日は髪で隠してないのだな」
「お⋯おはよう! えっと、約束通り、私とつ⋯つっ⋯付き合ってください!!」
教室がドッと騒いだ。
私の姿を含めた全てにおいてだろうが、そんな事知っちゃこっちゃない。
わたしの戦争はこれだけなのだから!
「ふむ? 構わんが⋯⋯」
いやっほぉぉぉぉぉ!
「はい、そういうわけで私の行って見たかった、侍喫茶にきました」
その後の返事は、構わないぞ、どこにいこうか? だったのはいうまでも無い。
流石にあそこから一生にパートナーになってくださいとは言えませんでした⋯私のバカ⋯。
「殿と姫、おかえりなさいませ」
案内され席に着く。
「これがメニューでござる。決まり次第、鈴を鳴らしてくだされ」
「春乃はどれにする?」
メニューを見る。
鬼斬り(おにぎり)⋯⋯あなたも、これで鬼斬りをマスターしようと書かれている。
動かざること山の如し⋯⋯富士山を模したパイを食べればあなたの気持ちも揺らぐことはない⋯はず。
(最後に、⋯はずをいれんなや⋯)
山の恵み「流水」⋯⋯すっきり爽やかの天然水。
(やばいなこの店⋯)
「春乃どうした? 決まったか?」
「う⋯うん。冬夜君もきまった?」
「あぁ」
ベルを鳴らすと、「待たせたでござるな!」と勢いよく入ってくる。
「鬼斬りと身分違いの恋をお願いします」
身分違いの恋⋯パラパラと見るとドリンクの場所にある。
(えっとなになに、結ばれたいけど苦難がまっている君に特性のジンジャエール。コレを飲めば叶わぬ恋なんてない! ⋯かも? だーかーらー!! 最後のかも? 入れてんじゃねぇ!)
「春乃はどうするんだ?」
「動かざること山の如しと雪解けの恋と恋の逃避行をお願いします」
「わかったでござる。しばし待たれよ!」
雪解けの恋⋯⋯爽やかな氷菓子、甘酸っぱさも恋と一緒でいずれなくなるさ。
恋の逃避行⋯⋯甘い時間を過ごせるのも僅か、その後は離れ離れという苦味しかない。
(言い方、ひどいな!!)
「そういえば春乃は、いつから夢を見ている?」
「え? 夢? いつも見てるけど⋯」
「いや、冒険をする夢だよ」
「それは、最近かも。え?! トウヤ君も記憶に残ってるの?」
「あぁ、俺は入院した時からずっとやっている」
「そうなんだ⋯じゃぁ改めて助けてくれてありがとう」
「ああ、助けれてよかったよ。死んでいたら大変な事になっていた」
「夢⋯なのに?」
トウヤ君でもジョークいうんだ?
携帯をだして、今日のニュースを見せる。
「コレがどうしたの? 知り合い?」
「昨日のPTにいた人だよ。38才で心不全の急死」
「え⋯?」
そういえば、この顔は見たような⋯。
「少なくとも俺が調べた結果、あっちで死んだ=コッチでも死んでいた」
「そ⋯そんな」
「ただ、確実に死んで無いなら、こっちで死ぬことはない。回復役もいるし、死んで無いなら治療ができるようにはなっているからな」
(そういえば、私⋯自分のことばかりであの世界の事全然知らなかった)
「やっていくと徐々に思い出していく感じだな」
「成る程。それは分かったわ。で、トウヤ君の職は? 強さはどれぐらいなの!」
「強さはわからんが、基本ソロだよ。職は黒白、希少エンチャンターらしい」
流石トウヤ君! 職にも愛されてるとは⋯!
「成る程、エンチャンターなら味方にもかけれるの? 効果は何秒もつの?」
「残念ながら味方にはかけられない。まぁ、効果恩恵は受けれる程度にはできるが⋯」
「待たせたでござるな!!」
料理が運ばれてくる。
(まってねぇ!!)
「まぁ、今夜からは一緒に行動してみよう。俺も春乃からの意見を聞いてみたかったしな」
「oh⋯」
今夜、誘われちゃったよ。オールナイトでウキウキか!
「う⋯うん! よろしくお願いします!」
「ご注文は以上でござるな。ではごゆりとしていってくだされぃ!!」
なんか侍喫茶のせいで全て台無しだよ! こんちくしょう!