9話 決着
「前らは後ろに下がっとけ!」
初めて男らしいザキを見た気がする。
睨み合いが続き、背後からマアルが来るのを待つ。
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「バレないように、バレたら蜂の巣だ」
血のついてあるナイフを手にしながら恐る恐る階段を降りる。
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前にばかり集中していたせいで、背後を警戒していなかった。
気づいた真彩が叫ぶ。
「後ろにも敵が来てる!」
漁夫の利を狙っているのか、状況を見つめている。
「くそ! どうする翔太」
花岡は作戦を続けることを決めた。
もしやめてしまうとマアルが死んでしまうことになる。
そんなことはよく考えればわかることだ、だが今は殺すか殺されるかの状況、みんなが恐怖に満ちていて、冷静な判断ができなくなって来る。
「マアルがしっかりとやってくれる、そしたら次はあいつらだ、とりあえずザキ、俺はこいつらを相手する、お前は後ろを頼んだ」
一度、ためらったが、その指示に従い、私たちの前に立つ。
「俺が守るから、安心しろ」
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心臓が出て来そうなくらいバグバグと音を立てている、階段を降りきると、何やら翔太と敵の声が聞こえる。
「やばい、一人やられた、どうする? あいつらの背後にも敵がいる、もしこも状況を打開できても、次はあいつらが攻めて来る」
今回の戦いで、十人死ぬことになる。
みんな死にたくないのは当たり前だ、だが、生き残る方法を探しても見つからない。
冷静になることができないのだ。
「リーダー!」
二人の声しか聞こえない、おそらく一人はダメになってるんだろう。
「お前、早く立てよ!」
少し怒りが入った声が聞こえた。
階段を降りてゆっくり玄関に向かう。
「ここ左か」
そして敵の声も近くなっていった。
「確実に一人やらなきゃ、俺は、味方が」
ナイフを強く握りしめ、壁からゆっくりと玄関を覗き込む。
「真彩の予想は当たってたのか、流石だな」
俺は心を落ち着かせて、覚悟を決める。
「よし、いくぞ」
ゆっくりゆっくり、敵に近づく、狙いは一番、後ろにいるやつだ、しゃがみ込んでいる。
「後ろにいるやつをやると、あいつらが中に突入する、大丈夫だ、いくぞ」
敵全員を確認できて、仲間も確認できた。
俺は強くにぎったナイフを後ろのやつの胸あたりに刺した。
流石に後ろから来るとは思わなかったのか、驚いた様子で俺の方を見た。
悲鳴と怒声が聞こえる。
「ぐああ、痛い痛い」
「大丈夫か! 隆」
リーダーがこちらに走って来るがチェックメイトだ。
怒りに任せ、我を忘れ、完全にあいつらのことを忘れて、俺の方へ走って来るが、作戦通りだ。
翔太とゆあたんが突入して来た。
俺は後ろに下がりながら言う。
「ゆあたん? ザキはどうした?」
翔太がリーダーを後ろから刺して、隆の近くにいた一人をゆあたんが戦う。
翔太はやり損ねたのか、リーダーがなにかを言いながら血まみれで近づいて来る。
「この運営は、くる、って、や、が」
そしてとどめの一撃を翔太が刺す。
返り血がすごい。
ゆあたんの方を翔太が見つめる。
まだ殺せていない、ラストの人が命乞いをしていて殺すことができないのだ。
「お願いします! この通り! ナイフは!」
ナイフを横に捨てた。
翔太が何やらおかしなことに気づいた。
「甘城? 様子が変だ」
「どういう風にだ」
私はその言葉を聞いて、嬉しく思った。
「ねえねえ、」
顔を近づけナイフを当てる。
「やめて! ください!」
「ごめんね?」
そう言ってナイフを顔に刺したのだ。
だが血が出ていない、そのことを確認するとお腹に刺す。 とどめの一撃だ。
花岡が名前を呼びながら近づいて来る。
「甘城! 顔に刺すって、お前らしくないぞ?」
何事もなかったかのように答えた。
「だって、血が出てなかったから」
甘城が殺した敵は顔を刺されたはずなのに血が出ていない、だが切れ込みは入っている。
「顔は流石にあれだからじゃね?」
マアルが歩いて来る。
「そうだな、流石に刺激が強すぎるもんな、お腹でも変わらないけど」
すると真彩とザキが部屋に入って来る。
「やばいって! 相手がナイフを投げてきて、それがザキの足に当たって」
ザキは何事もなかったかのように歩いているが、とても痛そうだ。
「大丈夫か? ザキ」
「ああ、大丈夫だ」
すると敵の声が聞こえた、女だ。
「私たちは、運営チームA、君たちは強い、だがら消すことにするよ」