5話 気をつけろ
それから一時間後、クエストもクリアで終わり、ゆっくりしているとメールが届いた。
〈ピコンピコンピコンピコン〉
メールを確認すると運営からだ。
〈開催時間が決まったよ! 12時に開始するよ!〉
とても運営が送って来たとは思わない文章だ。
開催時間が決まったことにより解散することになった。
「じゃあ俺は寝るわ」
「俺も寝る」
二人がログアウトするのを私と花岡が見送る。
「じゃあまたね!」
「ちゃんと起きろよ」
そして二人の姿が消えた。
残ったのは私と花岡どうも気まずい。
「じゃあ私も寝るね?」
恐る恐るログアウトをしようとすると花岡が話を始めた。
「おう、明日頑張ろうな」
さっきよりも元気がない、そう思ったがログアウトし現実に戻ってきた。
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「花岡どうしたのかな? 開催時間決まったらスタレンしてって言ってたっけ? なあでも時間が時間だしやめとこ」
真彩にスタレンはせず一文だけ送る。
「正午開始だって! 明日頑張ろうね!」
携帯を充電し電気を暗くして明日に備え寝る。
「おやすみ」
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「このゲームの運営は何かを企んでるな」
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朝になったのかやけに周りがうるさい。
〈ブルブルブルブル〉
あまりにもうるさくて目が覚めた。
「んん......」
携帯を手にし時間を見る。
11時20分
時間を見ると一瞬で目が覚めた。
「げっ! やばい!」
急いで準備をする。
朝ごはんを食べる暇がなく顔を洗い歯磨きをする。
終わる頃には11時30分だ。
「やあばああああい」
そしてセッティングをしゲームを開始する。
「すすスタート」
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大会があることによりいつもより人が多い。
メールがいっぱい来ている。
〈おい!〉
〈ゆあたんまだあああ?〉
〈起きろ!〉
〈遅刻はまずい〉
〈広場で待ってるから早く来い〉
猛ダッシュでみんなが待っている広場に向かう。
「怒られる」
ゲームでこんなに猛ダッシュしたのは初めてだ。
人が多くてみんながどこにいるかわからない。
するとどこからか声が聞こえた。
「ゆあたん!」
「甘城こっちだ!」
その声が聞こえる方に進むと誰かに腕を掴まれた。
「きゃ!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「遅刻だぞ甘城」
「ゆあたん、やらかしだね!」
「ほんとだよ!」
「ザキお前も来たのさっきだからな?」
私は遅刻したことに謝罪をする。
「みんな本当にごめんね!」
みんな怒った様子ではなく安心しているようだった。
「リアルと変わんねえよな、次からは気をつけろよ?」
「私と会った時も遅刻したもんね!」
「言い返す言葉もありません」
みんなと出会えてすぐに、上からモニターが出てきた。
「あれなに? すごいでかいね」
「通算戦績が書かれているモニターの十倍でかいんじゃない?」
モニターの画面がつき仮面をつけている少年が出てきた。
「やあ! はじめましてこんにちわ! 僕の名前はカロン、大会の主催者だよ!」
見た感じ小学五年くらいの子がモニターに映って話をしている。
「小学生か?」
「ザキとおんなじだな」
「違うはアホ! マアルと同い年だな」
「では今から、参加者の確認をします! 人数が足りてないところは参加を認めません! 帰るべき場所に行ってもらいます!」
そういうとおそらく今回の参加者が書かれている名簿を取り出し確認していく。
「あのやり方だとすごい時間かかるな翔太、翔太?」
マアルの呼びかけにもなにやら考えごとをしていて気づいていない。
「あ? ああそうだな」
心配そうにザキが見つめる。
「もしかして振られたか?」
「振られるもクソも俺は付き合っていない」
すると何処からかすごい怒鳴り声が聞こえた、チームでの揉め事らしい。
「早く呼べって! まじあいつないわ」
「落ち着けって」
「今度会ったらぶち殺してやる」
モニターの方から声が聞こえた、さっきまでは可愛らしい声で話していた少年が先までとは違う声のトーンで話した。
「あーそこの君たち、十八番かな揉め事はいけないよ? しかもメンバー足りてないし、しまいには殺すだって? 君にそんなことができるのかい?」
静寂に包まれている広場、十八番のメンバーが一人いないことで揉めていたらしい、すると怒声をあげてた人が少年に向かって指を指す。
「何言ってんだ? お前? 冗談もわかんねえのか?」
挑発したつもりなのかバカにしたような言い方だ、だが少年はビクともしない、逆に喜んでいた。
「あはは、冗談か......冗談でもね、言ってもいい事といけないことあるのわかる?」
男性は恐怖に満ちていた。
「は、は? お前だって冗談で言ったことあるだろ? お前もいつかあったら殺してやるよ」
先ほどよりも不気味な声で話す少年。
「ああわかったよ、なら君は僕が考えていたことよりもひどいやり方をしてあげようじゃないか」
モニター越しで指を指す。
「お前死ねよ」
そのモニターを見ている男性が笑う。
「ガキがそんなこと言っても怖くねえよ」
すると少年は普通戻り進行を続ける。
「ごめんねみんな! あの人はもう行ったから気にしないで!」
私たちも二人の会話中一言も話すことなく聞いていたが、話が終わると顔を合わせる。
「すごい怖い」
「ほんと怖いね」
「どういう意味なんだろうな」
「翔太はどう思う? 翔太?」
さっきからやはり様子が変だ。
「ああいや、不気味だと思ったさ、ちょっと緊張してるだけだからきにするな」
マアルがそうかと言わんばかりにモニターを見る。
「じゃあそろそろかな」
少年がそういうとさっき揉めてた人が名前を叫んでいる。
「キング! キング!」
モニターが男性のところに近き不気味に笑う。
「あっははははは、かわいそうに可哀想に可哀想に、死んじゃってるねえ」
そのことを聞いた相方がキングを抱きしめて広場を後にしようとする。
少年は待つように言ったがその声が聞こえていなかったのだろう、そのまま広場を後にした。
「あーあ、みんなも口には気をつけてね!」
男性が広場を出たすぐ騒ぎが始まった。
「俺はやめるぞ!」
「俺もだ!」
「私いやだよ!」
「どういうつもりだよ!」
「ログアウトログアウト......なんでだよ! なんでできないんだよ!」
私たちははぐれないように近づき収まるのを待つ。
「みんなパニックだね」
「そりゃそうだよ! もしゆあたんがあの人みたいになると私もあーなる!」
「人が押し寄せてくるな、はぐれないようにしろよ!」
そこが戦場みたいになっていたが少年の一言で一瞬で静かになる。
「ああ、騒ぐとどうなるかわかる?」
逃げようとしていた人たちも足を止める。
「やればできるじゃないか、じゃあ足りないチームの確認出来たし、大会始めよっか?」