第83話【ぬくもり】★
ローエさんもカティアさんも、先の見えない不安に駆られて俺のもとにやってきた。
心身ともに疲れはて、それでも眠れぬから愛する男に会いに来た。
それはフランベール先生も変わらない。
この極限状態で眠れないというのは、ある意味で仕方ないのだが、前線に出る騎士にとっては深刻な問題となる。
睡眠不足はドラゴン戦において致命的なミスを誘発する。
そのミスで命を落とす可能性は高い。
みんなそれを知っているから、なんとかしっかり眠りたいと考え、俺のもとに来たんだろう。
そう考えれば、こんな状況でこんなことを考えるフランベール先生も不思議ではないと思う。
「──あの、なんですかこれは?」
最初に口を開いたのはカティアさんだった。
ちなみにここは俺の家。
思ったより被害が出てない我が家だが、四人も中にいると結構せまい。
そして俺の自室にはベッドが1つと、もう1つ横に繋げて並べられたベッドがある。
たったいまフランベール先生が自分の家から持ってきたベッドだ。
こんな大きなベッドを1人で持ってきたフランベール先生は、やはり女でもS級騎士なのだと再確認させられる。
あんな細腕のどこにこんなパワーがあるのか。
「いやぁ~1回でいいからやってみたかったの! エルガンディ王国で寝るのは今日で最後になるからね。みんなでここで一緒に寝よう!」
まるで子供のようにウキウキとフランベール先生は答えた。
やはりみんなで寝るのか!
まぁベッドを繋げた時点でわかってたけどね!
やったぜ!
「み、みんなで寝る!? 何を言ってますの先生! こんな状況でそんな淫らな行為は……っ!」
ローエさんがなんか言ってるぞ!
これにはさすがのフランベール先生も目が点になっていた。
「へ? いや、違うよ! そんなんじゃなくて! 普通にみんなで添い寝しようってだけだよ!」
ローエさんが何を言っているかを察したらしいフランベール先生は顔を真っ赤にしながら否定した。
可愛い。
「え!? ぁ……」
ローエさんは自分の早とちりに気づき、顔を真っ赤に染めた。
「そ、そんなの分かってますわよ? ええ。わたくしが言いたいのはこんな状況で四人で添い寝なんてしてる場合じゃないと言う意味で」
「じゃあ何しに来たんだおまえ?」っとカティアさん。
「わ、わたくしはゼクードと二人っきりで──」
「っていうかローエさん今ぜったいエッチなこと考えてたでしょ?」
ボキィッ!
「ああああああああああああああああ! 指が! 指がああああああ! ありえない方向にぃいいいいい!!」
け、剣が握れなくなるぅうううううう!
「とにかく先生! 添い寝は却下ですわ」
「ナンデ!?」
「四人で寝たら狭いですよコレ」っとカティアさん。
「そうですわ。狭ぃ──って違いますわよ!」
ローエさんの鋭い突っ込み。
やはりみんなで寝るのには抵抗があるのか。
「横1列に並んだら誰か一人はゼクードと離れて寝ることになってしまいますわ」
──寝ること自体は良いんだ結局。
「それなら今回はわたしが離れて寝るよ」
フランベール先生が手を上げて、俺たち三人は揃って「え?」と視線を向ける。
「言い出しっぺだしねわたし。それにさっきたくさんゼクードくんに抱き締めてもらったから」
「そんな先生が我慢しなくても。そこのカティアさんを床で寝かせれば済む話ですわ」
「お前が寝ろ」
「いやダメですよ! 風邪引いたらどうするんですか! カティアさんたちが床で寝るくらいなら俺が寝ます! 床で寝るのは俺以外は禁止です。絶対!」
「ローエなら床でも大丈夫だと思うがな」
「そっくり返しますわその言葉」
ほんと仲良いなこの二人。
最近はとくに。
「あ、そうだ! 俺に良い考えがあります」
今度は俺が手をあげた。
みんなの視線が集中する。
「まず俺がベッドの真ん中で寝ます。んでその左右に二人寝ます。そして最後の1人は俺の上で抱き合いながら寝る。これならみんなでくっついて寝れますよ!」
「阿呆。どう考えても上の人間が寝にくいだろ」っとカティアさん。
「ですよねー」と俺は笑ってかえす。
……今日のカティアさん、なんか突っ込み上手だな。
いや、というより、ここにいることを楽しんでいるようにも見える。
まるで家族のような。
「ゼクード。わたくしできれば横向きで眠りたいですわ」
「私もできればそれがいい」
「うん。わたしも」
まさかの三人一致。
まぁこれは男の俺でもなんとなく想像はつく。
カティアさんたちはみんな胸が大きいからうつ向けで寝るのは苦しいのだろう。
なら仰向けでいい?
そうでもないらしく、仰向けだとやはりその大きな胸が重くて息苦しいとか。
あとフランベール先生いわく横に広がるのが嫌だとかなんとか。
だから必然的に横向け一択になる。
俺の上に股がって寝ると、横向けになれないから嫌なのだろう。
俺としては女性の柔らかさ・暖かさ・香りなどを堪能しながら眠れるので最高なのだが残念だ。
不謹慎だが、こんな状況だからこそ残念に思う。
「じゃあとりあえず。ここはジャンケンで配列を決めましょう。後腐れなく」
※
そして三人の嫁が眠るまでに、そう時間は掛からなかった。
あれだけ眠れないと言っていたローエさん・カティアさん・フランベール先生だったが、今はもうすっかり寝息を立てている。
俺の左右にローエさんとカティアさんが寝て、カティアさんの隣にフランベール先生が眠る。
本当にあっという間だった。
横になってから少しくらい雑談でもするだろうと思っていたのだが、そんなことは無かった。
よほどみんな疲れていたらしく、俺の隣で横になるやスヤスヤと落ちてしまったのだ。
みんな無防備で、安心しきった寝顔だった。
そんなみんなが可愛くて、年上だと言うことを忘れてしまいそうだった。
そして思う。
暖かい、と。
物心ついたときすでに、両親がいなかった身としては……この温もりこそ求めていたものだと分かる。
少し前までは、この家には俺しかいなかった。
でも今は、こんなにも愛しく、守りたい大切な女性が三人もいる。
居てくれている。
俺という男を信じて、俺の嫁になる決意をして、集まってくれた妻達だ。
剣の天才それだけで、他には何も持っていないカラッポな自分。
そんな俺に生き甲斐を与えてくれた。
「ありがとう」
自然と言葉が漏れた。
眠る三人には決して届かないほどの小声で。
「愛してますわゼクード」
「愛してるぞゼクード」
「愛してるよゼクードくん」
「!」
それは──……三人の寝言だった。
三人は規則的な寝息を立て続けている。
寝たふりをしている様には見えなかった。
奇跡のような同時の寝言。
寝言でも、本当に嬉しかった。
「俺も、みんなを愛してるよ」
そう告げた口の中が、涙で少ししょっぱかった。
※ペケさんから頂いたイラストを↓に貼っています。
苦手な方は戻るボタンを押してください。
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★ついにペケさんが我らが隊長ゼクードをプレゼントして下さりました!
かっこいい……やはり俺のとはクオリティが段違いですね。もう比べるのも悪い気がします。
ペケさん本当にありがとうございます!
★そしてドラゴンキラー隊集結!
ペケさんシリーズ!!
ちょうどみんな家族になった回なので、この集結イラストは本当に嬉しいですね!
★そしてなんと!
ペケさんがS級騎士のタイトルロゴを作って下さりました!!
タイトルロゴ【ローエ】
タイトルロゴ【カティア】
タイトルロゴ【フランベール】
素晴らしいタイトルロゴです(//∇//)
ライトノベル風の表紙にあってもおかしくないですよね!
みなさんは誰が好みですか?
俺はこっちですね。↓
タイトルロゴ【妻】
やはりみんな素敵です……。
ペケさんには本当に、感謝しかありません。
今回は暖かい家族の談話を意識した回になりました。
次回から物語は大きく動き出します。
どうかお楽しみに!




