第19話【国王さまの真の目的】
まったく喋らなくなった他国のS級騎士たちを見送り、俺はローエさんたちの方へ振り返った。
「見たかみんな!」
「見ましたわ!」
「見たぞ!」
ローエとカティアが歓喜の声を上げ──たかと思ったら両頬を思いっきりつねられた!
「いだだだだだだだだだだだだ! なんで!?」
「もっと他に言い様があっただろ!」
「そうですわよ! さすがにムカつきましたわ!」
「ごご、ごめんなさい! すいません!」
必死に謝罪してると、玉座に座る国王さまがコホンと咳払いして間を取り繕ってきた。
「賑わってるところ悪いが、君達は今すぐ狩猟に向かいなさい」
国王さまのいきなりな出撃命令に俺達は揃って「え?」となった。
目を点にして俺は国王さまを見る。
カティアとローエも手を離してポカンとした。
なんでこのタイミングで?
「彼らが帰国する前に、君達の実力をしっかり見せてやるんだ」
「彼ら、とは先ほどのS級騎士たちの事ですか?」
カティアが聞くと国王さまは頷いた。
「うむ。このままではマズイのでな」
マズイ?
何がマズイのだろう?
A級ドラゴン相手に8分も掛かる奴しかいないからかな?
「マズイですね」と国王さまに同意したのは先ほどから黙っていたフランベール先生だった。
「A級ドラゴン相手に8分は【エルガンディ王国】のA級騎士たちの平均討伐時間ですから」
フランベール先生の言葉は俺の予想通りだったが、同時に事の深刻さにも気づかされた。
他国のS級騎士たちは【エルガンディ王国】ではA級騎士レベルということになる。
ならば他国のA級騎士は? B級騎士は?
このままで本当にS級ドラゴンの襲撃に耐えられるのだろうか?
「そのとおりだ。だから彼らの意識を変える必要がある。8分などで満足しているなとな」
なるほど。
だから今から狩猟に出向いて彼らに俺たちの実力を見せつけてこいというわけか。
それであいつらの意識が変わればいいけど、どうだろうなぁ。
「了解です国王さま! すぐに狩猟へ向かいます!」
「頼むぞ。すでにA級騎士たちにドラゴンの誘導を指示してある。みな個人で分かれて各個撃破してほしい。正確な位置は受付に聞いてくれ」
準備いいな国王さま!
もしかして今回の件はこれが目当てだったのかな?
他国の平均討伐時間を教えてくれたのは他ならぬ国王さまだし、そうかもしれない。
10年前のS級ドラゴン戦から国王さまは騎士の強化に随分と力を入れていたから、この他国の事態にはとっくに気づいていた可能性がある。
それで今回は顔合わせという名目で他国のS級騎士たちの意識向上が目的だったのだろう。
全て俺の憶測だが、当たっている気がする。
なんだかんだ国王さまは視野の広い御方なのだから。
「わかりました! みんな行くぞ!」
「了解ですわ」
「了解だ」
「了解よ」
まさに部隊らしい号令と応答を成して、俺達は『謁見の間』を後にした。
※
アークルムの隊長は部下を連れて【エルガンディ王国】のゲートを潜っていた。
部下はみな、先ほどの事件でショックを受けているらしく、誰も喋ろうとはしなかった。
無理もない。
1分だの20秒だの、現実味のない数字を聞かされすぎた。
彼らは本当にそれほどまでの実力者たちなのだろうか?
できれば、この眼でしかと確かめたかった。
そう悔やみながらも自国のある東へ大地を進めば、そこには一匹のドラゴンが【エルガンディ王国】の騎士たちと交戦していた。
見たところA級騎士たちだが、なかなかいい動きだ。
我々とあまり大差ない気がするが、気のせいだろうか?
「隊長。あれは」
「見えている。【エルガンディ】の王国騎士たちだろう」
「いい動きだ。やはりS級騎士があれほどならA級もかなりのレベルということか」
「あぁ、悔しいがそういうことかもしれん」
本当に悔しい思いをした。
いや、大恥をかいた。
あんな女子供のメンバーがそんなに強いとは思わなかったから。
「あ! 隊長!」
部下が指を差すのでその先を見た。
するとそこには凄まじい速度で前進する一人の女騎士を確認できた。
そいつはベージュ色のブロンドをした『弓使い』の女騎士。
「あれは……!」
先ほど『謁見の間』にて見たS級騎士の1人だ。
なぜここに?
その『弓使い』はドラゴンと交戦しているA級騎士たちに加勢するらしく、まっすぐ突き進んでいく。
なんて速度だ。
あの脚力、本当に女か?
その『弓使い』がドラゴンの元へたどり着くと、展開していたA級騎士たちはそそくさと撤退を開始した。
なんだ?
共に戦うんじゃないのか?
まさか、単騎でやるつもりかあの女!
アークルムの隊長が予想した通り、その『弓使い』は武器を展開してドラゴンに攻撃を開始した。




