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第13話【早朝のローエ】続

 騎士学校が始まるまでまだ時間がある。

 せっかく来てくれたローエさんを自宅に招いた。


「あらあら、思ったより中は綺麗ですわね。男の人の家ってもっと汚いイメージがありましたわ」


 いやだからそれ偏見ですってば。

 部屋が綺麗な男性だってたくさんいますよ?

 俺とかいろいろ俺とか。


「ははは、昨日来たカティアさんも同じ事を言ってましたよ」


 保存しておいたアーモンドミルクをコップに注ぎながら俺は笑った。

 するとイスに腰を下ろしたローエさんが目を丸くする。


「カティアさんが来ましたの?」


「はい。昨日わざわざ夜食を作りに来てくれたんです」


「へぇ……あの万年ツンツンガールが……意外と優しいところもあるんですわね」


 心底意外そうにローエさんはボソボソと呟いていた。

『へぇ……』までしか聞こえなかったが。

 

 俺はアーモンドミルクを注いだコップをローエさんの手前に置いた。

 

「あら、お気遣いありがとうですわ」


「いえいえ。お口に合うかはわかりませんが」


 言いながら俺もローエさんの向かいに座って頂いたパンにバターを塗って食べた。


 くは! これは美味すぎる!

 昨日と今日とだいぶ贅沢してるな俺!


「ローエさん! これめっちゃくちゃ美味しいですよ!」


「当然ですわ。誰がこねて焼いたと思ってますの?」


 自慢らしい金髪をふわりと撫で揺らしながらローエは自信満々に言い切った。

 しかし、その自信に見合うだけの美味さだ。


 俺、パンなんて焼いたらなぜか真っ黒になるんだよなぁ。

 ライ麦なんて使ってないのになんでだろ?


 当のローエさんは出されたアーモンドミルクを特に気にせず飲んでくれた。

 こんな上等な白パンとバターを提供できるのだから、ローエさんがよほどの上流家系なのは間違いない。


 だから彼女の口にこんな庶民くさいアーモンドミルクが合うのだろうかと心配してたが、大丈夫みたいだ。


「それでローエさん。なんでその妹さんに『S級ドラゴンの爪』が必要なんです?」


 元よりこの話をしっかり聞くために家に招いたので聞いた。

 するとローエさんの目が真剣になる。


「ええ……実は妹は昔からある病に侵されてまして、それを治すのに必要なのが『S級ドラゴンの爪』なのですわ。これは【秘薬】を作るために必要な素材なんですの」


「なるほど【秘薬】の素材ですか」


【秘薬】の素材『S級ドラゴンの爪』か。

 まだ相手にもしたことがないS級相手にこれはかなり危険だが、男としてやらねばなるまい。

 ローエさんに『頼れる男アピール』するため引き受けるのはもちろんのこと。


 何よりローエさんの妹さんを助けたいという気持ちがヒシヒシと伝わってくる。

 これには男として……いや俺個人として誠意を持って引き受け応えたい。


 カティアさんもそうだったが、ローエさんも見た目だけじゃなく心も素敵な人だ。

 こんな素晴らしい女性の頼りにされるなら俺としては本望である。


「そういうことなら任せてください。がんばっちゃいますよ俺!」


「ありがとうございます隊長! 本当に頼もしいですわ!」


 ローエさんの顔がパァッと明るくなった。

 可愛い。笑ったローエさん本当に可愛い。

 年上だって忘れてしまう。


「こんなに美味しいパンを毎日焼いてくれるなら、それくらいは頑張らないとローエさんに悪いですからね」


「パンの事なら気にならさないで隊長。それはわたくしなりのお節介ですわ。それにとても危険な事をお願いしているのはわたくしの方ですもの。パンの1個や100個焼くなんて御安いご用ですわよ」


 いやいや、妹さんのためにそこまで出来るローエさんが本当に凄いと思いますよ。

 よほど大切にしている妹さんなんだなと分かる。


「……どうか隊長。よろしくお願い致しますわ」


 また立ち上がって深々と頭を下げてきたローエさん。

 

「任せてくださいローエさん」

 

 この黒騎士ゼクード!

 ローエさんと妹さんのために存分に剣を振るいましょうぞ!

 ──なんてね。

 

 それにしても、俺にもこんな優しい姉さんとかいたら良かったのになぁ。

 可愛い妹でも可。


 ん?

 兄貴?

 弟?


 いらんな。


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