変わり始めた日常
遅くなりましたが、続きです。
授業が全て終わり、多くの生徒が帰ろうとする中、藤花先生が入ってくる。しかし、朝とは違い深刻な顔をしている。先生が席に着くように言う。そのあとに続いた言葉は、日常でよく聞くことだったが、生徒達を慌てさせるには十分だった。
「街中に、感染者が現れた。BV対策本部より討伐部隊が向かったが、逃走されたらしい。くれぐれも、寄り道等をしないように!」
クラス中が騒がしくなる。BV対策本部に文句を言う人もいる。そんな中、花咲だけが周りとは違う、険しい表情をしている。少し気になったので話しかけようとしたが、秀に遮られてしまった。
「なあ、感染者がどんなやつなのか見に行こうぜ!」
「はあ!お前、それはさすがにダメだろ!」
秀の提案に、素早くツッコむ。
「ははっ、冗談だよ!」
「なんだ、驚かすなよ。」
そんな会話をしている内に、花咲は帰ってしまったようだ。
「そろそろ帰ろうぜ!司。」
「あっ、ああ、そうしようか。」
秀に急かされ、慌てて用意する。慌てて用意したせいで、ノートがないことに気づかずに帰ってしまった。
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夕食を食べた後、課題をしようと思い、カバンを開く。司は、この時になって漸くあることに気づく。
「ヤバイ、ノート置いてきた…。面倒だけど、取りに行くしかないよな…。」
司は、家を出て学校に向かってしまった。感染者のことを忘れて。
「校門は時間的に閉まってるだろうし、ここを通るしかないか。」
そう言って、フェンスに空いた穴をくぐるのだった。
野球部の部室の前を通り、横に曲がる。たまに通るその道の先に、犬のような顔をした感染者と、血で服が赤く染まっている花咲がいた。花咲は倒れており、近くに刀が転がっている。
「花咲さん!」
司が叫ぶが、反応がない。司の脳裏に1つの記憶が蘇る。それは、1つのトラウマでもあり、決意でもあった。
両親の背中から、鋭い爪が生えてきたようだった。感染者に両親を殺され、死の恐怖を感じ、二度とこんなことが起きないように、僕が守ると誓った時の記憶で、はっきりと覚えている。この光景が、両親が、花咲とかぶって見える。このままだと花咲が死ぬ。そう思った時には、司の体は動いていた。
「花咲さんから離れろ!」
近くにあったバットを掴み、感染者に向かって降り下ろす。しかし、当たったはずなのに傷1つつくことがなかった。
「嘘だろ、なんで…。」
感染者は煩わしそうな顔をしたあと、司に向かって右手をふるった。それだけで司は、ゴキッ、ベキバキッ、と音を響かせながら吹き飛んだ。すこしづつまぶたが落ちてゆく。必死にあらがうが、抵抗も虚しく、司の意識はそこで途切れてしまった。