始まりの朝
鳥の鳴く声を聞いて、ゆっくりとまぶたを上げる。次に上半身を起こし、握ったままの右手を開いたり閉じたりする。三上司の毎朝の癖だ。伸びをしたあと、ベッドから降りてクローゼットにむかう。途中で視界に入った時計の時刻に、司は慌てだした。
「うわっ!このままだと遅刻する。急がないと!」
先程とは対照的な速度で、着替えて荷物をまとめ、急いで家を出る。高校はそれほど遠くないので、10分程でつくだろう
「よかった!間に合って。」
そう言いながら教室に入ると、クスクスと笑い声が聞こえてくる。
「残念だがギリギリ遅刻だ。」
佐々木藤花先生
が近づいてくる。
「お前はどうしていつもギリギリなんだ?他のことは大概できるくせに。」
呆れた表情で言われてしまう。なんですかねと答えるがと言うが、その言葉は無視された。
「ホームルームを始めるから席に着け。三上!お前も早く席に着け!」
言われて渋々席に座る。
「それじゃあ、始めるぞ。」
こうして、騒がしいながらもホームルームが始まった。
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4時間目の授業が終わり、昼休みが始まる多くの人が席をたつ中、司は机に菓子パンをならべて、1つ目の袋をあける。その時、1人の青年が近づいてきた。
古くからの親友の大道秀だ。黒髪でお調子者のような感じのやつで一緒にいると楽しい気分になる。
「よう、司!お前は相変わらずの甘党だな!」
「そういう秀も、昔からの辛党だろ。」
そう、秀は大の辛い物好きだ。昔、秀が分けてくれたカレーを食べたことがあるが、いまだに忘れられないぐらいに辛かった。舌が辛さで痛くなったのも覚えている。
「本当によくそんなのが食べれるよ...。」
「なに言ってんだよ。こんなの甘口だろ。」
「いや、相当辛そうだが?」
現に、今食べているカレーは真っ赤だ。
「大道くんは、舌まで鈍感だもの。しょうがないわ。」
不意に、凛とした声が響く。花咲玲がこの席に来たのだろう。
「やあ、花咲さん。もう食べ終えたの?」
「ええ、もう食べ終えたわ。」
「さすが、早食い女王花咲だな。」
秀が嘲るような表情で言う。
「あなたのデリカシーの無さもさすがだと思うわ。」
「なんだと!」
秀と花咲さんの間に、嫌な空気が流れだす。咄嗟に離れようとするが、遅かったようだ。
『どこに行くつもり(かしら?)(だ?)』
「どっ、どこにも行かないよ?」
「そうか。」
「それなら良いのよ。」
このあと、司はずっとピリピリとした空気の中、昼休みを過ごすのだった。
スタイルの良い女性→佐々木藤花先生に変更しました。