ギアの前身
なあ、アヴァランチ――俺が、もともと兵士だった、って言えば信じてくれるか?」
部屋に入ってくるなり、ヴァイアランは言う。
「何を言ってるんだ? 無論信じるさ」
「すまないな――少し、昔話をしよう」
目と目を合わせる。
「オーストラリア大陸での戦いは知っているだろう」
頷く。そりゃそうだ。だが、あれはかなり昔のはず。どういうことだ?
「その中で俺は、自分の味方だった、ある機械を見たんだ。それの名は――パンドラ」
「パンドラ?」
思い当たる節もないし、何よりそんな記録も残っていない。
「ナノマシンを兵器化する――ギアと同じ技術。それを使っていた。だが、一筋縄ではいかないと分かった瞬間。奴らは、ユーラシア連合は。ミサイルですべてを破壊し尽そうとした」
なんとなく、わかった。彼の眼が震えている。
「俺は死に――死体は日本へと冷凍された状態で送られた――その数日後。オーストラリア大陸は、沈没した」
「そう、だったのか……」
そうとしか言えない。何を言えばいいのかなんてわからない。ただ、つらい思いをしてきたということしかわからない。
「そのあと、お前と同じミサイルであたかも新鮮な死体だった俺は、ギアになったというわけだ」
「俺は、ただ、普通の――」
「いやいい。言いたくないなら言うな。一つだけ最後に。俺はもう味方を、仲間を失いたくはないんだ」
「わかった。精々努力するさ」
彼は、部屋から出た。廊下から、何かが、液体が垂れる音が聞こえる。
それが何かは察したが、そっとしておいた。
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