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女神と、

クラシックな木製の家具がいくつかあるだけの、シンプルな部屋が転生の儀を行う為の部屋だった。


右手側には室内だというのに謎の噴水のようなモノと、そこにかかる繊細な貴金属製のアーチがあって、そのアーチの中心には水盆を連想させる、ゆらゆらと揺らめく虹色の膜があり、なんとなくだが、ソレが転生に使われるモノなのだろうと感じた。


「えっと…渡守さま、で、よろしかったでしょうか…?」


名簿でも持っているのか、一度目を落としてから確認するようにこちらを伺った女神に促されるまま、彼女の前、机を挟んだ向かいにある椅子に座る。


机の上には、色々と何の為にあるのかわからないが面白そうなモノが置かれていて、少し心惹かれてしまう。


「うん、渡守 アキラ。水晶のショウって書いて、晶。一応、多分、自分が最後かな?誰も残ってなかったし。」


「はい、確かに渡守さまが最後ですね…長らくお待たせしてしまい、申し訳ないです…」


「ん〜?順番に並ぶなら、絶対に誰かが最後になるでしょ?そういうの、別に気にしないし、待つのも慣れてるから、大丈夫だよ?」


「あ、ありがとうございます…では!転生準備で、まずは、えっと、容姿とかのご希望を…」


最初に会った時に比べ、疲れが原因なのか、いくらかやつれげっそりとしている女神に、クラスメイトたちは一体どれだけ無理や無茶を言ったのだろう。


気のせいとは言えないほど、目の前の女神はビクビクと怯えていて、最初疑っていた事さえ申し訳ないと思えるほど、可哀そうに見える。


「容姿とか、種族とか、特に希望はないよ?出来ればヒト型がいいなぁって程度かな?」


「え……で、でも、今までの方々の大半はそれはもう細々と指定をされてましたよ…?」


「どんな姿になろうとも、自分は自分だから、姿とかあんま気にしてないだけ。それに、細々と指定したら処理とか面倒くさそうだし?」


「あ…お心遣い、ありがとうございます…」


くしゃりと顔を歪め、ぽろりと一粒涙を零した女神に、世界を維持するのも大変みたいだなぁと、何処でも仕事の大変さは変わらないのだろう事を察して、少しだけ、世知辛さを感じた。


「で、では、早速加護の方を…」


そう言って女神が机の上に取り出したのは、どう見てもガラガラだとかガラポンだとか呼ばれる、回転式の福引き器で…うっかり一瞬呆けてしまったのは、仕方がない事だと思う。


そういえば…ゲームでのガチャも見た目福引き器だったっけ?


赤ベースに金の縁取りがされている通常の福引き器ではなく、スーパースペシャルレア以上確定の、銀ベースに金の縁取りと宝石等で飾り付けされた福引き器は、知識としては知っていたけれどゲームでは一度も見た事の無かった物だ。


持ち手の部分も、ラデンって言うんだったかな?、貝のキラキラした部分で飾り付けられてて、繊細でいて美しいソレは、博物館に納められていてもおかしくないぐらい、様々な職人の技術が織り込まれているように見えた。


「こちらの魔法の箱を回していただきますと、渡守さまに相応しい加護が出て来る仕組みになっております。えっと…予定ではお一人に加護を5つ、お付けする予定でしたが…5つでは少ない、と言われましたので、10個に改めました…ですので、あの、10回回していただければ…」


段々と声が小さくなっていく女神は、自分たちの顔色を伺い過ぎなんじゃないかと思う。


恐らく地球がある世界は女神の世界よりも上位に当たるのだろうけど、そうだとしても、その世界では地球の矮小な一存在でしかない自分たちにまで、1つの世界を統べる創造神たる女神が下手に出る必要はあるのだろうか?


自分たちの協力を得られなければ、女神の世界が邪神に滅ぼされてしまう、という事も関係しているのかも知れないが…。


「元々5個の予定なら、5個でいいって。過ぎたるは猶及ばざるが如しって言うし、多すぎても使い熟せなきゃ意味がないでしょ?」


「ううっ…渡守さまも、先にいらした若本さまも、とてもお優しく聡く謙虚な方々なのですね…!他の皆々さまは多ければ多いほど良いと、中には魔法の箱が選んだ加護は不当だと引き直しを行った方々もいらしたというのに…!!わたくし、ツェルキエスタはとても感動しております…!…渡守さま!渡守さまも、転生なされた後で、何かわたくしの力が必要となった際には、どうぞご遠慮なく、わたくしの神殿にてわたくしの名をお呼びくださいませ!わたくし、渡守さまや若本さまの為でしたら、すぐに駆けつけますので!!」


「お、おう…?」


何故かはわからないが、どうやら女神に気に入られたらしい…?


まあ、多分、クラスメイトたちに散々迷惑をかけられた後で、かなり常識的な若本女史や、そこそこ常識的な態度の自分が来れば、気に入っても仕方ないか…。


問題は、自分も女史も、どちらかと言えば戦うつもりが無い方なのだという事なのだが…戦うつもりが無いからこそ、そこまで加護が欲しいとも思って無かったのが、逆に気に入られる理由になっちゃったのかな?


火の粉が降りかかってくるなら振り払う気はある自分とは違って、女史にとってはコレは嬉しくない出来事かもだなぁ…女史が馬鹿共に巻き込まれないよう祈っとくか。


「それでは渡守さま!どうぞ、魔法の箱をお回しください!」


大人の美女の姿で、少女のようにキラキラとした目で見つめられると、居た堪れない気持ちになってくる。

その視線から逃れるように、ガラガラ…魔法の箱を回すけれど、何も出て来る事はなく。


あれ?早く回し過ぎたかな?と思って、今度はもっとゆっくりと回すけれど、やはり何も出て来なかった。


回す速さを変えて、5回回したけれど、やっぱり何も出て来なくて、まあ、いいか。と女神に視線を向ければ、今にも泣き出しそうな顔で、彼女は魔法の箱を見つめていた。


「どうして…?どうしてですか…?だって、さっきまでは、ちゃんと…!」


真っ青になりながら、魔法の箱をひっくり返したり、振ってみたりと、その調子を確認しているらしい女神は、徐々にその目に溜まっていく涙がいつ溢れるのか不安になるくらい、今にも泣き出しそうな様子で。


結構雑な扱われ方をしている魔法の箱が、そのうち地面に叩きつけられるんじゃないかとハラハラしながら見ていれば、先程は目に入らなかったモノが、チラリと見えた。


「ごめん、ちょっといい?」


「え…あ、はい…」


気になって女神から魔法の箱を取り上げて確認すれば、どうやらそれは数字?らしく、3XZ/200と書かれていて…ガチャの文字盤がバグっているようにも見えなくはなかった。


女神は1人あたりの加護は5つにするつもりだったと言っていたが、それならクラス38人かける加護5つで190…右側にある200がガチャを引ける回数だと仮定すれば、ギリギリ足りただろう。


しかし、それでは足りないと、加護は10個に増量させられた…それなら、一番左に3が来る理由も、なんとなくだが、理解出来なくはない。


「うん…多分だけど、コレ、限界を超えて回されたせいで、バグっちゃったんだと思う。」


「そ、そんな…!?」


ゲームの裏技とかの中には、その裏技を使うとゲームがバグったり、進めなくなったりするものもあるから、魔法の箱が壊れてしまうっていうのもあり得なくはない。


ガチャが動かなくなったら運営に連絡して詫び石請求だよなぁ…なんてゲーム脳な方の自分が告げるけど、コレはゲームによく似ていても現実だから、そもそも運営は……女神が運営なのか??


その女神は流さないように堪えていた筈の涙をぽろぽろと溢れさせていて、自分の目には、もう小さな女の子にしか見えなくなっていた。


「バグっちゃったなら仕方ないよ。ツェルキエスタさまに魔法の箱をくれた方に、直してもらえるようお願いすれば、ちょっと怒られるかもだけど、直してもらえると思うよ?」


「で、ですが…!それでは渡守さまに加護をお与えする事が出来ません…っ!」


はらはらと、その蒼穹のような瞳から、涙を零し続ける女神に、どうすればいいかと頭を掻けば、キラリと光るモノが目に止まって。


ちょうど魔法の箱から出て来るだろうサイズの、ビー玉のようなソレは、もしかすると不当だとされた加護なんじゃないだろうか?


それなら、女神の望んだ通り、5個の加護を得て転生する事も出来るんじゃないか?


そう思って、それを手に取れば、ソレはキラキラと輝く宝石のように一層輝きを増し…


「ねぇ、ツェルキエスタさま…コレって、捨てられた加護だよね?」


「え…?あ…はい、そうです…こんな加護は要らない、不当だと、引き直しされた方々が置いて行かれた加護ですが……あまりよろしくない加護らしくて…」


確かに、虚弱体質やら、当たれば幸いやら、名前を見る限りではあまり良いモノには見えないけど、1個1個では鈍い輝きも、5つ揃えるとまるで一揃えであるのが正しい姿でもあるかのように、キラキラと輝いて自分を魅了するから、きっとコレらは自分にとっては良いモノになってくれるだろう。


「コレ、ちょうだい?加護、コレで良いじゃなくて、コレが良いから、コレ、ちょうだい?…ね?」


「これ、が…?……わかりました、渡守さまがそう仰るのなら…」


まだ不安と不満があるのだろう女神に対して、安心させるように微笑みを向けてから、もう一度5つの輝きを見やる。


キラキラと煌めくソレは、自分にとっては間違いなく良いモノだ。


捨てる者あれば拾う者あり。


残りものには福があるとも言うし、誰かが要らないと捨てて残されたものでも、他の誰かにとっては拾うべき価値のある、福をもたらすものになり得るだろう。


捨ててくれた奴には感謝しなきゃな。


「えっと…では、転生に必要な事は、以上ですので…転生の門へ、どうぞ…?」


そう言って女神が指差したのは、予想通り噴水っぽい所にあるアーチで。


「じゃ、ツェルキエスタさま、また転生後にお会いしましょう!」


「あ…はいっ!」


カッコつけてボウ・アンド・スクレープと呼ばれるお辞儀をしてから、女神にウインクを飛ばせば、先ほどまで泣いていたのが嘘のように華やかな笑顔を浮かべてくれて。


うん、やっぱり女の子は笑顔でなきゃ!と思いながら、アーチを潜る。


この時の自分はまだ、自分が後々に邪神討伐の中心人物となってしまう事を、知る由もなかった…。

以上、第2話『女神と転生ガチャ』でした!


皆さんお解りかと思いますが、クラスメイトの内、輝く英雄さんが、最初にゴネて数を増やさせた人ですね。

女神は英雄さん以降、毎回、本来は5個の予定だった事を説明しましたが、ほとんどの人が貰えるものは貰っておこう精神で10個の加護を受け取って行きました。

捨てた相手も、なんとなく気付いているでしょうけど、そこはお口にチャックでお願いいたします。

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