燈下線路
ある11月末日のことです。
私は彼と共に、柔らかな夕方を歩いていました。その日の空は、灯色に茜を染めて、蜜色の陽は澄んだ冷たい風に、透き通って煌めいていました。小さな町の私鉄線路沿いに人の気配はなく、私たちの足音と、時々短な列車が、ガタンゴトンと通り過ぎていくばかりです。
「ここまででいいよ」
彼は私にそう言いました。
「ここで僕は死ぬの」
彼は私にそう言いました。
「僕がここで死んだら、君は僕を一生忘れないでしょう?僕のことを心に置いてくれるでしょう?止められなかった罪悪感と共に一生生きてくれるでしょう?」
彼は私にそう言いました。
確かにそうなのです。ちっとも違わない。
目の前で自殺されることほど、印象深いことなんて、この世界のどこにあるでしょうか。
陽はゆっくりと落ちて、空は夜色に覆われていきます。さっきまで目立たなかった、列車の車内の灯が、藍とのコントラストを作って、黄白色が夜を切り裂き、輝いていました。
立ち止まった踏切の、警告音が鳴り響きました。遮断機は闇に濡れて見えませんでした。
彼は笑っていたようでした。
「君を好きだよ。」
あぁ、私もそんな思考をする君を好きだよ。
燈下、線路上に彼の色を、過ぎいく列車の灯は暖かに照らして、とろりと零れる行き場のなかった愛が、じわりと溢れていきました。
そんな光景を、ぼんやりと眺めながら、夕陽と列車の灯の暖かさが同じように見えたことについて、不思議に思いました。
彼の名前を、私は憶えていません。
ありがちな晩秋の自殺を書きました。
でも、男の子は彼女を信じているので
幸せな人生だったと思います。
一応男の子が後輩で女の子が年上の設定です。分かるわけないですよね。でもセリフを少し子供っぽく短絡的にしてみました。
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