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「何もそこまでしなくていいわよ」
冬夜は地面で正座している状態からさらにレベルアップして土下座までしていた。
その状況を見かねて陽菜は苦笑いしながらやめさせる。
「申し訳ありませんでした。立花様!」
ズボンについた汚れを軽く払って立ち上がる彼を彼女はその様子をあきれた様子で見ている。
冬夜の切り替えの速さは凄まじいものだった。
「それで話ってなんだよ?」
「あんたは久しぶりに会った幼馴染に対して他に言うことはないわけ?」
彼女の言うとおり二人は家が隣どうしの幼馴染である。
もっとも一緒だったのは小学校までの話で、中学に入ると同時に陽菜が全寮制の学校に進学してしまったためそれ以降は会っていなかった。
「それで?話ってなんだよ。俺、忙しいんだけど?」
「なんでそんな上から目線なのよ。1発殴っていいかしら?」
時計と陽菜を交互に見て忙しそうにする冬夜に、彼女は右手でこぶしを握りそれを構える。
「ちょ、ちょっと待て俺が悪かった!って昔から何も変わってないのな……」
「あら?昔と変わらずかわいいって言いたいの?そんな事言っても何も出ないわよ」
「言ってね――――」
言い終わるより早く頬を石がかすめて行った為その場から1歩も動けなくなる。
頬から流れる血がこれが夢ではないことを語っている。
ノーモーションで飛んでくる攻撃など避けようもない。
しかも、陽菜が笑顔で次の石を用意しているせいで次にしゃべる言葉は既に決まっていた。
「本日もとてもお美しいですね」
その言葉に満足したのか次の攻撃が来ることはなかった。