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「すいません。神崎って人にこれを見せればいいって言われたんですけど」
「皐月さんですね。話は聞いているのでどうぞ」
受付に来た冬夜は以前もらった神崎の名刺を受付の人に見せると、笑顔で学園内に入れてくれた。
春休みで生徒も余りおらず来客も居ないだろうが、ここにいなければならない受付の人には同情する。
「あれ?正門入れてくれたけどこっから先どこ行けばいいんだ?ここどこだよ……」
数分学園内を歩いたところでふとよぎったことをつぶやく。
学園自体が街一つ利用している分敷地が広いのは至極当然のこと。
普通なら数分歩いたくらいじゃ迷わないが、似たような建物が複数あるため初めて入った人が迷ってしまうのも無理はない。
外見からもわかっていたことだが実際に歩いて改めてその広さを実感する。
「えーと……誰もいないのか……な?」
普段なら平日であるため学生がいる場所なのだろうが、生憎今は春休みだ。
冬夜の言葉は虚空に消えていくのみだった。
それと同時に自分が変な汗をかいているのに気づく。
「さ、さすがに地図機能くらい使えるよな」
そこからの動きは早業だった。すかさず携帯を取り出すと地図のアプリを起動する。
しかし、現れた地図が絶望を告げるまで時間はかからなかった。
「敷地しか書いてない……ま、まぁ当たり前だよね。建物の立地まで親切に書いてあるわけないよな」
所詮無料だしなと付け加えると大人しく携帯をしまいもう1度あたりを見回す。
どこを見ても似たような建物ばかり。唯一上を見上げればきれいな青空が広がっている。
冬夜は初めて空を飛べる鳥をうらやましく思っていた。