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その日は高校1年の最後の日である終業式だった。
よくある校長先生たちの長い話を聞き終え、いつも通り帰宅しこれから春休みを満喫する予定だった。
冬夜は家の前に近所では見かけない男を目撃する。
興味本位というか不審者を追い払うためというか、とりあえず話しかけたのが運のつきであったのだろう。
その男は結果がわかっているとでも言わんばかりに、軽く言い放ったのだ。
「魔術学園に転校してほしいんですよ」
「はぁ?」
冬夜にとっては唐突という次元をはるかに超えているセリフであっただけに何を言っているのかすぐには理解できない。
今、この男は魔術学園と言った。
それが何かは知らないわけではない。
この世界には魔術と呼ばれている現象がある。
それは誰にでも扱えるわけではなく、一部の人が使える能力だ。
魔術学園とは読んで字のごとくその魔術を専門に扱う学校である。
「すまん。今なんて言った?」
「だから私の魔術学園に来てほしいんですよ。あ、私のって言っても私が勤めている学園ですけどね」
男は冗談のつもりだったのか一人で軽く笑っている。
冬夜は対象的に険しい顔をしている。
突拍子もない話を振られているので当然かも知れないが。
「いや、ちょっとというかかなり意味が分からないんだけど。話が読めないってレベルじゃない」
「そりゃいきなり知らない男に話しかけられたら、そういう反応になりますよね。私の名刺をどうぞ」
差し出された名刺には神崎 亘という名前と私立聖鳴学園という学校名が書かれていた。
その学園名は嫌でも忘れられない。
冬夜の姉が通っていた学園なのだから。
「これはどうもご丁寧にありがとうございます。――――ってそうじゃないだろ!」
冬夜はもらった名刺を地面に叩きつけてツッコミを入れ、そのまま肩で呼吸しながら名刺を拾い上げる。