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「せっかく来ていただいたのでお手伝いでもしてもらお――――」
「お断りします」
神崎が言い終わるより早く断りを入れるとそのまま踵を返し帰っていく。
「単位……」
ボソっと言われたその言葉は、神崎のすぐ近くにいる冬夜ですら聞き逃しそうな程小さかった。
テレパシーでも使えるのかはたまた地獄耳なのか、彼女は瞬時に帰ってくる。
「あんたそれでも教師なの!?人質を取ってまで私に何をやらせる気なのよ!!」
「どうして私が怒鳴られなきゃいけないんでしょうね?」
二人が白熱している中、冬夜は完全に放置されてしまった。
このままだと埒があかなそうだったので仕方なく止めにかかる。
「一体何があったんですか?さっきから単位がどうとか言ってますけど」
「よく聞いてくれたわ凍夜!この外道教師が私の進級を人質にして脅してくるのよ!!」
「あー、はいはい」
陽菜の話を聞いたところで無意味なのは目に見えているので水無瀬に詳しく聞く。
後ろから裏切り者と言う叫び声が聞こえるがそのまま無視する。
「それで陽菜はどうしたんですか?」
「困ったことに彼女は私の担当している必修科目を落としかけてるんですよね」
とりあえず手伝いを理由に保留にしてますけどねと神崎は続ける。
今回ばかりは陽菜を擁護しようにも擁護できる理由がないため陽菜を突き出す。
「この裏切り者ぉぉーーーーーーーーーーー」
「ご協力感謝しますよ皐月君。それじゃあ中にお入りください」
じたばたしている陽菜をひきずりながら応接室へと消えていく。
その様子に手を合わせてから冬夜も中へ入る。