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「えー、皐月君、皐月凍夜君。いるのはわかってますので、至急応接室に来てください」
二人が話を終えて一息ついてると神崎の声で放送がかかる。
気が付いたら冬夜が受付に来てからずいぶんと時間が立っていたらしく、ついには呼び出されてしまったというわけだ。
「そうだすっかり忘れてた……じゃあ俺そろそろ行くから!」
「待ちなさいよ冬夜!」
すぐさま向かおうとした冬夜を陽菜が襟をつかんで無理やり止める。
「何するんだよ陽菜!?」
「何するも何もないわよ。冬夜、応接室がどこにあるのかわかってるの?」
「あ……」
陽菜に言われたところで、自分が先ほどまで迷っていた理由を思い出す。
今まで迷ってた挙句、陽菜がいなかったらそのまま遭難していたであろう冬夜が応接室を見つけられるはずがない。
その様子を見てか陽菜はため息をついてこっちよと言うと歩いていく。
「悪い助かったよ陽菜」
「別に今度何かおごってくれればいいわよ。それじゃあね冬夜」
応接室前まで来たところで陽菜にお礼を言うとそのまま別れるつもりだったが、応接室から出てきた人物によって止められる。
「おや?足音が聞こえたから出てきてみたら立花さんまでいるじゃないですか。これは好都合ですね」
もちろん出てくる人物なんて他にいるはずがない。呼び出した本人がその場所にいるのは当たり前だ。
出てきた人物。神崎に声をかけられると陽菜はピタリと足を止める。
「な、なんでしょうか神崎先生?」
会話をしている陽菜の様子が目に見えておかしい。
具体的にどこがおかしいかというといつもの覇気が全く感じられない。
逆に今の陽菜は隙あらば逃げ出そうとしているようにさえ見える。