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「じゃあそろそろ本題に入りたいんだけど。いいかしら?」
「ああ、いいよ。どうせ、なんでここに来たとか言いたいんだろ?」
「流石!わかってるじゃない」
それじゃ場所を変えましょ、と言うと陽菜は歩いて行ってしまう。
再び迷宮とも思えるこの学園で迷うわけには行かないので、冬夜は黙ってついていく。
2人は先程の場所から少し歩いたところにある中庭のようなところに来ていた。
陽菜はそこにある自販機での飲み物を買うとそこにあるテーブルに腰掛ける。
「コーヒーでいいかしら?まぁコーヒー買ったからこれで我慢してね」
「じゃあ最初から聞くなよな……」
冬夜は陽菜の向かいに座るともらった缶コーヒーを開けると一口飲んで一端落ち着く。
ここまで特別何も飲まずにさまよっていたため、普段の数倍はおいしく感じられた。
「とりあえずここに来た経緯を教えてもらおうかしら?」
陽菜がいつになく真面目な顔をしてるので、冬夜はわかったよ、と言いここまでにあった事を話す。
「なるほどね。真冬さんから連絡あったらシスコンの冬夜は断れないわよねー」
「シスコンじゃねえよ!」
はいはい、と陽菜は冬夜の否定を無視する。
その様子を見てこれ以上いう意味がないことを察したため、そのまま諦める。
陽菜のこの様子は昔から何1つ変わっていない。
一言で言うなら傍若無人で片が付く。いつもいつも他人を振りますような人物だがなぜか憎めない。
それは単に冬夜がお人よしなのか、陽菜の性格がそうしているのかはわからないがどうしても怒る気になれないのだ。
「まぁ何はなくとも元気そうでよかったわ。これで心配事が1つ消えたわ」
陽菜は笑顔でそう言った。普段からは考えられないような純粋な笑顔は一目見ただけで一瞬固まってしまうレベルだった。
「べ、別にお前に心配されるほどのことじゃねえよ……」
冬夜は一応反論するもののまともに陽菜の顔を見てはいなかった。