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記憶の欠片(陰)


薄暗く斜のかかった世界をそれと認識出来た時、自分の記憶と存在がひどく曖昧な様に思えた。


黒い靄のフィルターの向こうに重なって見える光に溢れた世界。多くの人々が忙しなく道路を行き交っている。少しずつ朧げに輪郭を帯びていく記憶の中にかつての私がその「光溢れる世界」に身を置いていたことに気付く。


暗く斜のかかった灰色の世界に多くの影が蠢いて漂っている。揺蕩う時間の流れの中で私はある事に気付いたのだ。


私の肉体もまたかつての形質は無く、見下ろした体は影の様に空間にへばりつき、透き通った体は黒い靄の集合体の様だった。


私自身が周りに漂うそれらの存在と同じである事を認識すると共に喪失したはずの心の奥から禍々しく狂おしいまでの慟哭が浮かび上がる。


帰りたい、還たい、孵りたい。


私は、私の奥底に消え去ったはずの心の記憶を奮い起こす様に棒切れの様に細く黒い霧で出来た腕を必死に伸ばす。


私の居場所はこんな薄暗い場所などではない。黒い霧の向こう側へ、伸ばせ、伸ばせ!手を!!


その強い渇望が私の眩しい記憶すら飲み込んで大きく大きく黒い影は膨れ上がっていく。


世界が軋み、悲鳴をあげながら、私はもう一度……生まれた。


私は……私は誰……だっ…ケ?



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