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まどろみ(陽)

悪夢にうなされながら目を覚まします。辺りの静けさで今の時刻が深夜帯である事が分かりました。鳥のさえずりも聞こえません。私は時計が見れないので正確な時刻が分かりません。誰かに教えて貰うか、ラジオを聞くぐらいしか時刻を知る術を持ちません。時計を持たない生活をしてみると分かるけど、自分だけ世の中から切り離された様な嫌な感覚に陥ると思います。私はそれを毎日経験しているのです。

さっき見た悪夢の所為で手の震えが止まりません。その手で枕元に置いているいつものラジオとヘッドフォンに手を伸ばし、それを装着して必死にスイッチをつけて周波数を合わせるとザリザリと言う不快音の中から徐々に人の声が聞こえて安心します。どうやらお笑い芸人と人気声優さんがパーソナリティを務めるラジオらしい。私の乱れた呼吸が人の声を聴くことによって落ち着いてゆく。

しばらくたわいもない内容を話しているようだったけど、私はその声に救われたような気がした。時刻が4時を指し示し、時報のチャイムが鳴り終わると私の大好きなアーティストSORAさんの曲が流れてくる。彼女の馴染みのヒットナンバー。円盤も持ってるけど、ラジオで流れてくる馴染みの曲は一味違う気がする。彼女もまたこの町の出身なのでいつか地元ライブが開かれたら参加したいなぁ。深く深呼吸をして一息つくとヘッドフォンを外して周りを見渡します。

目の見えない人間は常に恐怖と隣り合わせ。だけど私の周りを何体もの影法師がまるで囲む様に並んでくれているのです。薄気味悪いと思う人も居るかもしれませんが、兄が居なくなり、私の目が抉り取られた日を境に、彼等はこうやって私をまるで守る様に見守ってくれているのです。それだけで心強いのです。よく見ると彼等の顔にあたる部分には白く光る点が二つ並んで、まるでつぶらな瞳の様でちょっと可愛い。私が怯えたり不安になったりするとまるで寄り添う様に集まってくれるのです。それにしても、時折見かける仮面にローブを纏った彼らは一体何者なのだろうか。影法師さん達とはまた違う存在のようだ。そして、そんな彼等からまるで私の存在を守る様に影法師さん達は私に寄り添ってくれている。私はゆっくりと手を伸ばし、彼等の実態無き黒き体に指先で触れる。

「君達は現実?それとも私の単なる妄想?」

影に触れる指先がほんのりと暖かみを帯びた様な気がして安心した私は再びまどろみの闇の中へとその身を落としていくのです。二度寝、お休みなさい……ZZZ。

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