案件 営業
ピンポーン
ガチャ
扉を開けると、中年のいかにもサラリーマンといった風体の男が立っていた。
「はい」
「あのう、ここって便利屋さん……」
「ええ、そうですよ。どうぞ中へ」
「いえ、あの、急ぐんで一緒に来てくれませんか!?」
「え?あの仕事の内容は……」
「営業です!」
いきなり一緒に来てくれか……。胡散臭いな。だが他の仕事の依頼もこないし、行ってみるか。
「……わかりました。スーツの方がよろしいですよね。すぐに着替えてきますのでお待ちください」
「はい」
「お待たせしました。行きましょう。それで何の営業なんですか?」
「いや、君はそのまま私の隣にいてくれればいいから……」
「そうですか」
「ここです」
町工場のような場所だなぁ。隣にいるだけって、話を合わせろってことかな?
「失礼します。大都銀行の山村です」
「なんだと!帰れ!」
「も、申し訳ありません!原因の者を連れて参りました!さあ、小林君、謝罪しなさい」
え?小林って俺のこと?謝罪って?
「小林君!」
お、俺か!?
「申し訳ありませんでした!」
「……誠意が見えねえなぁ」
「申し訳ありません!私の監督不行き届きで!」
ドサッ
えっ?土下座?
「小林君!」
ドサッ
「「申し訳ありませんでした!」」
「…………それで?うちの損害はどうしてくれるんだ?」
「今、最善の方法を探しております!それにこの件から小林は外すことにいたしました」
「……小林君とやら、二度とうちに顔見せるな!」
えっ、あ、俺か!
「はい!申し訳ありませんでした!」
「では、社長、失礼します。小林君立ちなさい」
「……はい」
俺はなんとか立ち上がり、町工場を後にした。この辺りはサングラスなしでは歩けなくなりそうだな。
「山村さん、あれは事前打ち合わせが必要でしたよ」
「悪かった。急いでて……。でも、君が土下座してくれて助かったよ」
「なら、よかったですが」
「また何かあったらお願いするよ」
「ありがとうございます」
あ~あ、スーツがぐしゃぐしゃだ。土下座が仕事か。まあ、それもありか。それにしても、移動中に説明してくれればいいのになぁ。今回はクリーニング代も請求するべきだった……。




