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なんでも屋  作者: 奈月ねこ
25/26

案件 死に目①

 ピンポーン


「はい」

「あの、便利屋さんのチラシを見て来たんですが……」

「はい、中へどうぞ」


 こざっぱりとした中年の男性だった。俺は男性を部屋に招き入れ、お茶を出した。


「河田と申します」

「今西です。よろしくお願いします」

「それで、どのようなご依頼でしょうか」

「実は犬のことなんです」

「犬ですか?迷子になったとか?」

「いえ、うちの犬は、長く生きました。このところ調子が悪くて、病院へも行ったのですが、寿命だろうと……。最期は看取ってやりたいのですが、仕事を休めないんです。それで、うちに居て、犬に何かあったら連絡して欲しいんです」

「あの、私は専門的なことはわかりませんので、容態が急変しても、わからないと思うのですが……」

「それは大丈夫です。猫が教えてくれます」

「猫……ですか?」


 なんなんだ。よくわからない。今西さんははまた話し出した。


「うちには猫もいるんです。二匹は仲がよくて……だから異変を感じたら教えてくれるはずです」


 これは……結構責任重大だな。しかし、専門の業者もいるはずだ。


「あの、ペットシッターというのがあると思うのですが、そちらの方が専門ですし、いかがですか?」

「はい、それも考えたんですが、近くのペットシッターは、ずっと居るのは難しいそうで……。あと、河田さんとお会いして、あなたなら大丈夫だと思いました」


 どういう意味だ?


「大丈夫とは何がでしょうか?」

「はい、うちの猫は人見知りが激しいんです。実は以前ペットシッターさんに来てもらった時も、威嚇して側に近寄らせなかったんです」

「専門の方がそれでは、私には荷が勝ちすぎるかと……」

「ええ、ですから河田さんの雰囲気がいいんですよ。私の直感ですが、うちの猫も威嚇しないだろうと」

「えーと、もし威嚇したらどうします?」

「では、とりあえず、いらしていただけますか?」

「はあ」


 行っても良いだろうか。なし崩し的に責任を押し付けられても困る。まあ、動物は嫌いじゃないが、それほど好かれる体質でもないから大丈夫かな。

 とりあえず、今西さんの家へ行くことになった。


「ここです」


 意外と近いな。


「ただいま」


 誰の声もしない。


「あの、失礼ですが、ご家族の方は……」

「一人暮らしなんです」


 2LDKの家の一番広いリビングに、犬と猫は寄り添っていた。

 とても優しく静かな光景。


「桜、太郎の様子はどうだい?」

「みゃ」


 猫が短く答えた。犬は寝ているようだ。俺もリビングに足を踏み入れた。すると、猫が俺をじっと見つめている。なんだか値踏みされているようだ。

 少しして猫は、俺に興味を失ったかのように、目を閉じた。


「やっぱり!」


 今西さんが嬉しそうに言った。


「桜が威嚇しないのは河田さんを認めた証拠です!ペットシッターの方にも威嚇したのに……。河田さん、引き受けてくださいませんか?」

「あの、もし連絡しても間に合わなかったらどうします?」

「それは……仕方のないことです。会社から帰るのにも時間はかかりますから。それで犬が亡くなったら、会社を休むつもりです」

「亡くなる前は休めないんですか?」

「いつ亡くなるかもわからないのに、休めません」

「そうですか……わかりました。引き受けます」

「ありがとうございます!」


 なんだかこんなに仲の良い犬と猫を見たら、断れないな……。



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