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なんでも屋  作者: 奈月ねこ
24/26

案件 運動会

 トゥルルル


「はい、河田です」

『あのう、便利屋さんですか?』

「はい。そうですよ。ご依頼でしょうか」

『おいくらくらいかかるのでしょうか』

「内容にもよりますが、一時間五千円いただいています」

『……そうですか……。あのう、割り引きとかって……』


 割り引き!?何の!?


「……特にそういったものはありませんが……」

『……そうですか……あの、一時間半だと割り引きになりますか?』


 どうしても割り引きしてほしいのか……。三十分なら一時間の半額でいいか。


「一時間半なら、七千五百円になりますが、内容はどういったものでしょうか?」

『場所取りです』

「場所取り……ですか?何のですか?」

『息子の運動会です。うち、母子家庭で、場所取りをしてくれる人がいないんです』

「そうですか。それならお引き受けしますよ」

『ありがとうございます!』


 その人は鹿島さんと名乗った。運動会の日程、小学校のどの辺りに場所を取るかなどを話し合った。

 今回は楽な仕事だな。俺はそう思っていた。


 運動会当日、秋晴れのいい天気だ。運動会日和だな。さて、ビニールシートを持ってと。俺は目当ての小学校へと出掛けて行った。


 まだ人もまばらだな。確かこの辺りの場所でいいんだよな。俺はビニールシートを広げて、そこに座った。鹿島さんが来るまであと一時間半か。本でも読んで待っていよう。


 それから三十分、人がそれぞれ場所取りをし始めた。そんな時だった。


「あら~いい場所が空いてるわ~」

「あらあら本当ね」

「お兄さん、ここいいかしら~」


 おばあさん二人が俺のビニールシートに入ってきた。えっ?俺が場所取りしてるのに?


「あ、あの、ここ人が来るんです」

「まあ~固いこと言わないで、いいじゃないの~」


 いや、良くない!


「あの、ですから人が来るんです!」


 俺はなんとか声を振り絞った。


「あらまあ、こんなに場所が空いてるのに?何人来るの?」

「えっ?えっと二人です……」

「あらあら、じゃあ半分は空くわよねえ」

「えっ、いや……」

「じゃあ、こっち半分もらうわね~」


 ええっ!?こっちの意見は無視か!?


「いい場所が取れてよかったわね~」

「本当ね~」


 鹿島さんになんて言い訳すればいいんだ……。


 それから一時間後、鹿島さんがやって来た。


「河田さん、おはようございます」

「か、鹿島さん、おはようございます。あの、すみません」

「あら~お兄さんのところも来たのね。本当、お兄さんが場所とっておいてくれて助かったわ~」

「……鹿島さん、そういうことです……」


 俺は申し訳なくて項垂れた。


「わかりました。いいですよ。ところで、割り引きになります?」


 まだ割り引きにこだわっていたのか!しかし、きちんと場所取りが出来なかったのだから、割り引きも仕方がないかもしれないな……。


「……一時間分でいいですよ」

「ありがとうございます!」


 はあ、仕方がないとはいえ、あのおばあさんたちの強さを見習わなければいけないな。

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