案件 G
トゥルルルル
「はい」
『河田さん!助けてください!』
「……失礼ですが、どちらさまでしょうか?」
『田沼です!』
田沼……?ああ、幽霊退治の時の予備校生か。
「田沼君、久しぶり。どうしたの?」
『家にGが出たんです』
「それで?」
『退治してください~!怖くて眠れません!』
「……ご家族の方は?」
『旅行中なんです~。お願いします!うちに来てください!』
「行くのは構わないけど、報酬をもらうことになるよ?」
『構いません!すぐ来てください!」
「じゃあ、住所を教えてくれる?」
こうして俺は、田沼君の家に向かうことになった。それにしても、うちにくる案件は急ぎなものが多いなあ。住所を見ると結構近いので、徒歩で向かった。
ピンポーン
ガチャ
「河田さん!遅いですよー!怖かったですよ!」
「……」
いや、電話をもらってすぐに家を出たのだが……。
「田沼君、ゴキブ」
「ぎゃー!!」
俺の言葉に被せるように、田沼君の悲鳴が響いた。
「その名称を出さないでください!」
やれやれ、早く退治して帰ろう……。
「それで、どこにいるの?」
「キッチンのどこかです」
「どこかって?」
「わかりません!」
そんなに堂々と言うことかな。
「隠れちゃったのなら、退治は難しいかもな」
「そ、そんな……。お願いです!なんとかしてください。このままじゃ眠れません!」
うーん、とりあえずは探してみるか。しかし、こちらから探すというのも、気持ちの良いものではないな。
「とりあえず、キッチンに案内してくれる?」
「はい、どうぞ、そこの扉です」
田沼君はキッチンへの扉を指さし、俺の後ろに隠れた。おいおい……。
ガチャ
「ひい~」
「田沼君、、どの辺で見たの?」
「シンクの下です!」
じゃあ、見てみるか、と思い、俺が一歩を踏み出そうとしたが、後ろから引っ張られた。
「田沼君、手を放して」
「いやです!一人は怖いです!」
「じゃあ、一緒に来る?」
「それも怖いです!」
「じゃあ、どうするの?このままここにいても解決しないよ」
「……わかりました……行きます……」
田沼君は俺のTシャツの裾をつかみ、後ろからついてきた。子供みたいだな。とにかく早く帰りたい……。俺はその一念で、Gを探し続けた。すると、キッチンにある段ボール箱の脇に、黒っぽいものが見えた。俺は殺虫スプレーを段ボール箱の脇に向かって噴射した。
プシューッ
やはりGだったようだ。ガサゴソと音が聞こえた。と思ったら、
ブーン、ピタ。
Gはなんと、田沼君の頭の上に着地した。
バタン
田沼君はそのまま倒れた。そこから逃げ出そうとするGに向かって、俺は殺虫剤を噴射した。今度は仕留められたようだ。Gを小さなビニール袋に入れて、ごみ箱へ入れる。これで、依頼は完了だな。しかし、田沼君、どうするか……。このままというわけにもいかないしな。
「田沼君、起きて」
おれは、田沼君の頬を軽く叩いた。
「う……河田さん?」
「そうだよ、大丈夫?」
「なんだか夢を見ていたような……」
どうやら夢にしたいらしい。
「そうだよ、こんな所でうたた寝はよくないよ」
「うたた寝……。そうかやっぱり夢だったんだ。あ、河田さん、Gは?」
「もう退治したから安心していいよ」
「ありがとうございます!これで眠れます!」
「じゃあ、俺は帰るから」
「はい、ありがとうございました」
俺が田沼君の家を出てすぐのことだった。
「ギャーッ」
田沼君の叫び声が聞こえた。あ、そういえば、Gをゴミ箱に入れたこと伝え忘れてたな。




