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なんでも屋  作者: 奈月ねこ
20/26

案件 G

 トゥルルルル


「はい」

『河田さん!助けてください!』

「……失礼ですが、どちらさまでしょうか?」

『田沼です!』


 田沼……?ああ、幽霊退治の時の予備校生か。


「田沼君、久しぶり。どうしたの?」

『家にGが出たんです』

「それで?」

『退治してください~!怖くて眠れません!』

「……ご家族の方は?」

『旅行中なんです~。お願いします!うちに来てください!』

「行くのは構わないけど、報酬をもらうことになるよ?」

『構いません!すぐ来てください!」

「じゃあ、住所を教えてくれる?」


 こうして俺は、田沼君の家に向かうことになった。それにしても、うちにくる案件は急ぎなものが多いなあ。住所を見ると結構近いので、徒歩で向かった。


 ピンポーン


 ガチャ


「河田さん!遅いですよー!怖かったですよ!」

「……」


 いや、電話をもらってすぐに家を出たのだが……。


「田沼君、ゴキブ」

「ぎゃー!!」


 俺の言葉に被せるように、田沼君の悲鳴が響いた。


「その名称を出さないでください!」


 やれやれ、早く退治して帰ろう……。


「それで、どこにいるの?」

「キッチンのどこかです」

「どこかって?」

「わかりません!」


 そんなに堂々と言うことかな。


「隠れちゃったのなら、退治は難しいかもな」

「そ、そんな……。お願いです!なんとかしてください。このままじゃ眠れません!」


 うーん、とりあえずは探してみるか。しかし、こちらから探すというのも、気持ちの良いものではないな。


「とりあえず、キッチンに案内してくれる?」

「はい、どうぞ、そこの扉です」


 田沼君はキッチンへの扉を指さし、俺の後ろに隠れた。おいおい……。


 ガチャ


「ひい~」

「田沼君、、どの辺で見たの?」

「シンクの下です!」


 じゃあ、見てみるか、と思い、俺が一歩を踏み出そうとしたが、後ろから引っ張られた。


「田沼君、手を放して」

「いやです!一人は怖いです!」

「じゃあ、一緒に来る?」

「それも怖いです!」

「じゃあ、どうするの?このままここにいても解決しないよ」

「……わかりました……行きます……」


 田沼君は俺のTシャツの裾をつかみ、後ろからついてきた。子供みたいだな。とにかく早く帰りたい……。俺はその一念で、Gを探し続けた。すると、キッチンにある段ボール箱の脇に、黒っぽいものが見えた。俺は殺虫スプレーを段ボール箱の脇に向かって噴射した。


 プシューッ


 やはりGだったようだ。ガサゴソと音が聞こえた。と思ったら、


 ブーン、ピタ。


 Gはなんと、田沼君の頭の上に着地した。


 バタン


 田沼君はそのまま倒れた。そこから逃げ出そうとするGに向かって、俺は殺虫剤を噴射した。今度は仕留められたようだ。Gを小さなビニール袋に入れて、ごみ箱へ入れる。これで、依頼は完了だな。しかし、田沼君、どうするか……。このままというわけにもいかないしな。


「田沼君、起きて」


 おれは、田沼君の頬を軽く叩いた。


「う……河田さん?」

「そうだよ、大丈夫?」

「なんだか夢を見ていたような……」


 どうやら夢にしたいらしい。


「そうだよ、こんな所でうたた寝はよくないよ」

「うたた寝……。そうかやっぱり夢だったんだ。あ、河田さん、Gは?」

「もう退治したから安心していいよ」

「ありがとうございます!これで眠れます!」

「じゃあ、俺は帰るから」

「はい、ありがとうございました」


 俺が田沼君の家を出てすぐのことだった。


「ギャーッ」


 田沼君の叫び声が聞こえた。あ、そういえば、Gをゴミ箱に入れたこと伝え忘れてたな。



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