案件 用心棒①
「河田さん!今日は依頼にやってきました!」
「石川さんが依頼?」
「正確には、祖父ですが」
「どんな内容ですか?」
「一言で言えば、そばにいてくれれば……♡」
「変な仕事は引き受けてないから!」
石川さんは危ない!気をつけなかれば!
「違うんですよ。祖父の道場に来てほしいんです。泊りで」
「道場?」
「はい。祖父は空手の道場を開いているんです」
なんだかよくわからない。
「それで依頼内容は?」
「だから、いてくれればいいんですよ」
「はあ?」
よくわからない。いるだけとは……。
「とにかく来てください」
いるだけで報酬がもらえるのなら嬉しいが、ついて行っても大丈夫だろうか。
「河田さん、早くー」
とりあえず行ってみるか。
「ここです」
石川さんに案内されてきたのは、都内でも有数の高級住宅街。しかも、石川さんが「祖父の家」と言ったのは、かなりの豪邸に見える。石川さんって、もしかしたらお嬢様!?
「三歩遅れてついてきてください」
「?」
石川さんの意味不明な言葉。とりあえず石川さんの後ろを、距離を開けてついていった。
そして、石川さんが扉を開けた時だった。
「とう!」
という掛け声とともに、石川さんに向けて拳が繰り出された。
「はっ!」
石川さんも負けじとその拳を受け止める。
「これでどうだ!」
声とともに投げられたのは、木の板。
「てい!」
バキッ
木の板が石川さんの回し蹴りで割られた。
「おじいちゃんてば、こういう出迎えはやめてよね」
「やっぱり洋子が一番素質がある!道場を継がんか?」
「継がないわよ。あ、河田さん、祖父です」
俺は絶句してしまった。何だ、今のやりとりは……。いつものことなのか!?石川さん、強すぎる……。
「ああ、洋子がお世話になってます」
「あ、いえ、河田です」
俺はなんとか平静を装ったが、動揺していた。ここでの依頼って、とんでもないものでは?
「あの、それでご依頼の内容とは……?」
「大人クラスが合宿に行くんですわ。その間、子供たちの合宿をするが、大人がいないと不用心だと洋子が言ってな」
不用心?こんなに強い石川さんがいるのに……?
「だって、夜とか泥棒が来たら心配じゃないですか~」
心配?泥棒の身の安全が?
「おう、洋子、来てたのか」
「あ、お兄ちゃん、これから出発?」
「ああ、行ってくるな。土産はイノシシでいいか?」
「期待してるわー」
「あれ、そちらは?」
石川さんのお兄さんらしき人が俺に気づいたようだ。
「河田と申します」
「実は、私のイイ人で……♡」
「えっ、洋子の?」
「違いますから!」
俺は慌てて否定した。まずい。石川さんに流されている気がする。
大人クラスは山で合宿だそうだ。その間の用心棒(?)か……。本当に俺が必要なのかわからない……。とりあえずは夜の警戒をすればいいか。




