閑話 石川さん
ピンポーン
「はい」
「河田さん!お願い~!」
「は、浜本さん、何ですか?」
「町内会の掃除当番なんだけど、これからお姑さんを迎えに行かなきゃならないのよ~!だから、掃除を代わりにお願い~!あ、集合場所は、道路に出て左にある公園よ!じゃあ、よろしくね!」
「浜本さん!」
隣の奥さん(浜本さん)は自分の話したいことを話して、さっさと出掛けていった。
掃除?しかも無料で?なんとかならないのか、あの奥さんは……。
ピンポーン
今度はなんだ?
「はい」
「河田さん、手伝いに来ましたよー」
「……石川さん……」
石川さんもなんとかならないのか……。俺は額に手を当て、考え込んでしまった。
「何かあったんですか?」
「……いや……」
君も頭痛の種だと言ってもいいだろうか?
「……今日はこれから用があるから、帰ってくれる?」
「手伝いますよー」
「いや、無料の仕事だし……」
「無料?」
しまった。そこまで言う必要はなかった……。
「いいですよ。手伝いますよー」
いいのか!?この子はなんなんだ……。
「石川さん、前から思ってたんだけど、君は学生だよね。勉強はいいの?」
「いえ、私、フリーターなんですよ。会社から内定もらえなくて!あはははは!」
笑うところだろうか。
「それなら尚更、きちんとした仕事を見つけた方がいいと思うけど」
「そうなんですよねー。でも、フリーターが向いてるっていうか、河田さんが好きっていうか」
「……」
なんか変なことを言われたような……。
「そういうわけで、ここにはお手伝いに来ますから!」
「いや、そう言われても……」
「河田さん、用があるんじゃなかったんですか?」
「あ!そうだ!じゃあ俺は出掛けるから」
「手伝いますよー」
「……」
なんか疲れてきた。俺は結局石川さんを伴って、集合場所の公園へ行った。
「浜本さんの代わりに来ました、河田です」
「あら、そう。若い人がいると助かるわー」
掃除とは、町内会で使っているプレハブ小屋のことだった。マスクをして、埃を落とす。かなりの年期ものだな。
「河田さん、こういうこともするんですね」
「いや、普通はしないよ……」
俺は力なく答えた。掃除も終わり、差し入れと言って、ペットボトルのお茶をもらって帰った。そして、家でお茶を飲む。
「この部屋、落ち着きますよね」
どうして石川さんがここにいるんだ。掃除からの流れでなんとなく着いてきてしまったようだ。
「ところで、バイトとして雇ってくださいよー」
「いや、今募集してないから」
「じゃあ、ちょくちょく顔を出しますね♪」
なんでそうなる?
「石川さん、きちんとしたところでバイトした方がいいと思うよ」
「河田さんって優しいですね!」
「……」
頭痛の種が無くなってほしいだけだが……。
「……石川さん」
「あ!もう帰りますね。また来ます!」
石川さんは、疾風の如く去って行った。
なんなんだ……。これからも来るのか……。ああ、頭が痛い。




