案件 騒音①
トゥルルルル
「はい、『便利屋KAWATA』です」
『あの、向かいのマンションの者ですが、チラシを見たんですが、なんでもやっていただけるのですか?』
「内容にもよりますが、犯罪等への加担などはお断りしております」
『いえ、そんなんじゃなくて、カーペットの敷いてもらいたいのですが……』
「ああ、はい。そういうことでしたら大丈夫です。向かいのマンションでしたら、一度部屋を見せていただけますか?」
『……そうですね。502号室の楠川です』
「わかりました。今お伺いしますね」
『お願いします』
カーペットを敷くのか。向かいのマンションは新しく建って、広めのマンションだ。もしかしたら大きな部屋だと一人では難しいかもな。この際バイトを募集するか……。
とりあえず俺は、言われた通りの部屋を訪ねた。
ピンポーン
『はい』
「便利屋の河田です」
『あ、今開けます』
ガチャ
「初めまして、河田と申します」
「あ、はい。楠川です。どうぞ中へ」
「きゃあ、あはははは!」
ドタドタドタ
ん?子供がいるのか。
俺が部屋に上がるのと同時にインターフォンが鳴った。
ピンポーン
「はい」
『うるさいと言ってるだろうが!!』
ドン!
俺にもわかるくらいの声と同時に、扉を叩く音がした。
「す、すみません。気を付けますので……」
『これ以上うるさいと警察に通報するぞ!』
「そんな……。これから対処しますから」
『ふん、一週間だけ待ってやる。それでも改善されなければ警察に言うぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
声の主は言いたいことを言って、帰って行ったようだ。
「あの、もしかして、カーペットを敷くというのは、このためですか?」
「そうなんです。子供が走り回って、下の階の方がうるさいと苦情を言ってきているんです。引っ越してきたばかりですし、近所の方とのトラブルは避けたいので……」
「わかりました。カーペットを敷く部屋と、カーペットを見せてもらえますか?」
「あの、それが……まだカーペットを買ってないんです」
「えっ?ではどうするおつもりですか?」
「あの!相談に乗ってください!どんなものならいいですか?部屋はこちらです」
楠川さんは部屋に案内してくれながら、話し始めた。
「夫が忙しくて、相談に乗ってもらえないんです。あ、この部屋です。リビングで子供が遊んでいるので、ここに敷く何かがあればと思って」
うーん、結構広い部屋だな。十二畳はあるか。子供も走るわけだ。
「わかりました。以前友人が『ジョイントマット』というのを使っていて、クッション性もあって、汚れたらその部分だけ貼り直しができるのですが、いかがでしょう?」
「どんなものですか?よくわからないのですが……」
「そうですね。パソコンはありますか?」
「ええ、私、在宅ワークしてるので、そこにあります」
「インターネットへの接続は可能ですか?」
「はい、できますけど……」
「では、探して希望のものを購入してください。それを私が張りますから」
「えっ、どれがいいのかわかりません!相談に乗ってください!」
マット探しからか……。一週間で終わるかな。




