案件 一人息子②
掃除の当日、延長しても大丈夫なように早めの時間帯にしてもらった。とはいえ昼の十二時たが。
依頼主である母親は来ないらしい。自分がいると本人が掃除をさせないだろうと言うのだ。大学生になっても反抗期か?まあ、仕方がない。産業廃棄物の業者には連絡したし、あとは、石川さんが来るのを待つだけだ。と思ったら、石川さんが走って待ち合わせ場所へやって来た。
「河田さん!お待たせしてすみません!」
「いや、待ち合わせの時間より前だから大丈夫だよ」
「河田さん、優しい……」
何故そうなる?とにかく今日は仕事に専念しよう。
「石川さん、行こうか」
「はい!」
最寄り駅から約十分程度で、依頼のアパートに到着した。
ピンポーン
『はい』
「便利屋KAWATAです」
ガチャ
「どうぞ。母がすみません」
「いえ、ご心配なだけでしょう」
意外と好青年だな。
「私は河田で、こちらは助手の石川です」
「石川です。今日はよろしくお願いします」
「は、はい、こちらこそよろしくお願いします」
ん?女性が苦手なのかな。石川さんは黙っていれば、結構可愛いからな。黙っていれば……。
「ではまず部屋を見せてもらってもよろしいですか?」
「あ、はい、どうぞ」
俺たちが中へ入ると、床に物が散乱していた。確かに床が見えない状態だな。しかし、ごみ屋敷というほどでもないかな。整理整頓すれば、大分スペースは空くはずだ。だが、物が多い。
「とりあえず、いるものといらないものを分別しましょう」
「……はい」
何が多いって服だな。脱ぎ散らかした服が散乱している。
「石川さん、そことそこの服を持ってきて」
「はい」
石川さんが両手いっぱいに服を持ってきた。
「石川さん、とりあえず、いらないものはごみ袋につめてください。それが終わったら、いるものを畳んでください」
「わかりました」
「では、黒木さん、服の選別をしましょう」
「あの……どれも大事なんですが……」
「黒木さん、脱ぎ散らかしたままということは、着てないということです。収納にも限界がありますから、収納できる分に減らしましょう」
「……わかりました」
それから、一枚一枚服の選別を行った。
「これは?」
との俺の問いに、黒木君は悩みながらも選別していった。なんとか服は半数になった。いらないものはごみ袋に入れて、いるものはクローゼットとタンスにしまっていく。すると、タンスは半分くらいが空だった。本当に片付け下手なんだな。
石川さんは……意外にもてきぱきと服を畳んでしまっていく。結構手際がいいな。
あとは、本当のごみだな。
「黒木さん、キッチンにある食べ掛けのものは捨てていいですか?あと、散乱しているコンビニの袋とか」
「はい、お願いします」
俺は、ごみ袋を片手に、次々と片付けていった。大分床が見えるようになってきた。あと少しだな。
「本類はどうしますか?」
「えーと、漫画の雑誌は捨ててください。それ以外の本は必要です」
「わかりました。石川さん、そっち終わったら、ここに雑誌を積んでいくから、紐で縛ってください」
「はい!」
石川さんは生き生きとしてるな。もしかしたら、この仕事に向いてるかも。
さて、俺は、本棚を整理するか。
「ここに本を入れてもいいですか?」
「はい」
所在なさげだな、黒木君。
こうして順調に片付けは進んでいった。そして、産業廃棄物の業者が到着した。
「失礼します。河田さん、これ全部ですか?」
「はい、お願いします」
結局九十リットルのごみ袋が八袋に雑誌がかなり出た。産業廃棄物の業者は喜んで帰っていった。
あとは、掃除だな。俺は、軽く掃除機をかけて、終了だ。時間は一時間オーバーして、五時間かかったが、「床が見えるように」という依頼は果たせたと思う。
「黒木さん、これで終わりですが、いかがですか?」
「助かりました!ありがとうございます!」
「喜んでいただけて嬉しいです。お母さんも心配してましたよ」
「……わかってるんです。でも、その、この年になって母に掃除してもらうのには抵抗があって……」
なるほど、そういうことか。
「今の状態をキープ出来れば、いつお母さんが来ても大丈夫ですよ」
「そうですね。頑張ります」
やれやれ、結構力仕事だったな。
「石川さん、お疲れさま。大変だっただろう?」
「いえ、楽しかったです!」
「それなら良かったけど」
「またバイトさせてください!」
うーん、今回の働きぶりは良かったからなあ。
「……また何かあったらお願いするよ」
「やったー!河田さん、私を受け入れてくれるんですね!」
えっ?どこからそんな発想が?
「仕事だから!」
「それでもいいです!」
やれやれ、やっぱり石川さん以外のバイトを探すか……。




