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なんでも屋  作者: 奈月ねこ
10/26

案件 恋人②

 これは打ち合わせが必要だな。


「それで、どういった服装なのか、あと恋人として出るには、それ相応のことを教えて頂きたいのですが」

「そうですね。私の友人も行くので、私と親密になってください!」

「……」


 それは何かが違うぞ。気を付けなければ!


「そういうことではなくて、どこで出会ったかとか、そういった内容を決めておかないと」

「え?あ、そうですね。じゃあ、電車の中で痴漢から助けてもらったっていうのはどうでしょう!?お互いに一目惚れです。素敵……」

「……」


 自分の世界に入ってしまったな。夢見る女性……いや男なんだな。


「……まあ、それでいいのなら……それに最近出会ったことにすれば、お互いをあまり知らなくても支障はありませんからね」

「あ、一つ決めておかないと」

「何ですか?」

「私は下です」


 ぶほっ


 俺は思わずお茶を吹いてしまった。


「だ、大丈夫ですか?でも、大事なことなので……。私は受け身で、河田さんは上っていうことで……」


 それが大事なことなのか?よくわからないが、話を合わせるしかないだろう。


「……それで服装はどうすればいいですか?」

「河田さんはスーツで来てくだされば大丈夫です」

「わかりました」

「待ち合わせて、手を繋いで行きましょうね!きゃっ、恥ずかしい~」


 いや、恥ずかしいならしなくてもいいのでは?


「それは必要なことですか?」

「恋人同士ですよ!必要です!」


 何やら胡散臭いが、関わったことのない世界だ。言うことを聞いておくしかないだろう。


「わかりました。では、明日待ち合わせましょう」

「はい!楽しみにしています!あ、私のことは薫子と呼んでください」

「……偽名ですよね」

「ペンネームのようなものです」



 そして翌日、俺はスーツを着て待ち合わせ場所である駅へ行った。すると、人混みの中、一番目立っている男がいた。女装した薫子である。周囲の人たちがひそひそと話しているのが聞こえてきた。


「やだあ、あれって男よね」

「うわあ、よく恥ずかしくないよね」


 薫子を笑い者にして立ち去る人たち。俺はムッとした。自分の好きな格好をしているだけじゃないか。俺は薫子に向かって声をかけた。


「薫子さん、待たせて悪かったね」

「河田さん!」

「さあ、行こうか」


 俺は薫子に手を差し出した。薫子はそっと手を添えてきた。


「え~、男同士のカップル?」


 後ろでひそひそと声が聞こえる。心持ち、薫子が下を向いた。


「あんなの気にすることないよ。誰かに迷惑かけてる訳じゃないんだから」

「河田さん……」


 そして、パーティー会場に到着し、無事に仕事を終えた。



「じゃあ、薫子さん、お元気で」

「河田さん、私、河田さんが好きです!」

「……ごめん。俺にはそっちの趣味はないから」

「……わかってます。でも、駅で言ってくれたこと、本当に嬉しかった」

「当然のことを言っただけですよ。これからきっといい出会いがありますよ」

「……そうですね。今日は本当にありがとうございました」


 こうして俺は家路に着いた。なんとか仕事はこなせたかな。でも、同性同士のカップルってあんなにいるんだな。何はともあれ、無事に終わって良かった。


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