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カレーの試合(4)

不定期掲載。16時ころ更新します。

「ホホホ……皆さま、ちょっと失礼します」

 そうして着信のアイコンをタッチし、端末を耳元に寄せる。

「はい、えぇ、わたくしですけれど……。やっと、やっとですか? いつもどおりというか、本当にのろまですこと。いいから直接いらっしゃい! こちらは今、大変なことになってるんですからね!」

 通話をオフにして端末をしまい込むと、脇に座っていたヤヤがゆっくりと顔をこちらに向けた。

「誰?」

「ふふん、こんな間抜けなタイミングで連絡してくるなんて、あいつ一人しかいませんわ。……ほら、あそこ!」

 わたしが指さした、スタジアムから遠く離れた夜空の向こうにヤヤも、会場の皆も一斉に目をやる。店主も、あの女も。

 その虚空の一点に、かすかに小さい星のような一点の光が現れ、それは少しずつ強さを増してくる。

 何事かとこちらをスタジアムから見やる店主に、わたしはマイクを取っていった。

「ご主人……先ほどから聞いていますと、万端な準備の整わなかったこの勝負にご不満な様子……。わたくしとしましてもあとあと遺恨が残るような決着は、はなはだ不本意ですわ。そこで……償いとは申しませんが、私どもの集団が入手をお邪魔していた希少な材料――あなたのお店で使っていたものを、どうにか調達させて頂きましてよ!」

 やがて目をくらますほどに光を放つそれは、わたしたちの上空に近づくにつれ、会場の照明の照り返しを受けてその姿をおぼろげに現しつつあった。

 それを目にした群衆は口々に

「あ、あれは……?」

「ヘリだ!」

「違う! ……飛行機……だ?」

「いや、どちらでもないぞ……。そうだ。あれは……!」

「在日※(ピー)軍の、オス※(ピー)レイだ!?」

 ざわ、ざわ、ざわと、どよめいている。

「違いますわよぉ! 庶民のみなさまぁ!!」

 そのシルエットで民間人がオ※(ピー)プレイだと思うのも無理からぬことながら、あらぬ誤解を生んではなりません。

「みなさま、落ち着いて。あれは※国海兵隊(マリーン)のV―22でもなければ※国空軍(エア・フォース)のCV―22Bでもありません! わがコンツェルン独自開発のPV―25α、通称『PATジャイロ』です! 勘違いなさらないでください!」

 よく目をこらしてみれば、あの有名な大国のティルトローター機と違って、両翼端で回っているプロペラは巨大な円筒状の覆いでカバーされているのがわかるはず。

 その機体は気品のある白銀色に深い深紅のラインが彩られ、力学的に計算され尽くした繊細なシルエットをより優美に引き立てている。

 やがて会場上空に到達した機体はプロペラ――正しくはダクトに覆われた回転翼、ダグテッドファン――を水平に向け、十階建てのビルほどの高さで空中に静止した。

 そして機体下部のスピーカーから、張り詰めた会場の空気も読まない脳天気なおなじみの声が響き渡った。

「お嬢様ぁ、お待たせしました! 不肖、この岡本め、お言葉に甘えさせていただきまして皆さまの上から失礼いたしますぅ!」

「……まったく、どれだけ人を待たせるものかしら。それでよくもまぁわたくしの専属運転手が務まりますこと。いいから早くおりてらっしゃい。あちらに駐機場が……」

「――わかりましたあっっっっ」

 マイクを通じての指示に喰い気味に返事をすると、岡本はやおら機体の高度を下げ、グランドの中央、わたくしとキッチンスタジアムの中間あたりにランディングしようとしてきた!

 ば、ばか、そんなところに降下してくると……

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