離婚しましょう?旦那様(ニコッ
「ただいまー」
「おかえりなさーい」
堂々と玄関から帰ってきた夫に抱きつき、
スーツに染み付いた匂いを嗅ぐ。
ふむふむ、上品な女性向けの香水ですな。
「で、言い訳は?」
「残業してたら朝になっちゃって・・・」
「この匂いは同僚の佐藤さんよね。
そっかー、二人で密着しながら仕事してたんだー」
私がニッコリ問いかけてやると、
苦し紛れの言い訳をするのでトドメを刺してやる。
佐藤さんとはこの前家にまで来て、
『あんたの夫はね、私と浮気してるの。
あんたなんかに愛情なんか無いのよ!
分かったらとっとと別れなさいよ オ・バ・さ・ん』
なんて言ってきた勇者である。
ちゃんとボイスレコーダーで録音したもんね。
その前にも五回程あって、
面白いからと最初以外は全て録音済みである。
にしても佐藤さん、クールビューティーだった。
私が男なら確実に跪きたいタイプだな。
「な、なんで知って・・・」
「この前由希くんと離婚してって言われたからよ。
佐藤さんのお望み通り離婚する?」
目に見えて顔が白くなる夫(由希くん)に対し、
私は終始笑顔でグサグサ心を抉っていく。
まぁ、私も浮気してるし人の事言えないけどさ。
それでも浮気相手が何人も居るってどうなの?
私はちゃんと一人しか居ないもん。
「やだっ!里奈ちゃんと別れたくない!」
「でも私、由希くんの事愛してないし好きじゃない」
「・・・・・・え?」
可愛く縋ってくる夫を引き剥がし、あっさり告白する。
その瞬間、夫は人が変わったように大人しくなる。
今まではやだやだ、と私に縋っていたのに。
「今日役所行ってきたの。離婚しよ?由希くん」
「俺、里奈ちゃん居ないと何も出来ないのに。
里奈ちゃんが全てなのになんで?どうして?」
「浮気相手に縋れば良いでしょ?
受付嬢の田中さんとか、カフェの店員の山田さんとか、
取引先の松本さんとか、上司の遠藤さんとかね」
リビングに夫を連れて行き、離婚届を見せる。
私に抱きつき離れない夫に浮気相手の名前を告げたら、
夫は更に私の事を抱きしめてきた。
「ごめん、もう浮気しないから捨てないで・・・っ」
「愛情の欠片も無いのに無理よ」
私と夫が出会ったのは高校生の時。
私(高校三年生)が部活の先輩で、夫(高校一年生)が後輩だった。
告白したのは夫で四月で一目惚れしたと言っていた。
私は胡散臭いとその場で振ったが飽きもしないで、私が卒業するまで何かある度に告白してきたから卒業式の日にOKした。
絆されたと言われればそうなのだが、
確かに私の中には好きと言う感情があったのだ。
そのままお互い社会人になってまた向こうがプロポーズして来たので今度は一発でOKした。
だってその時はもう付き合って何年か経ってたし。
でも夫は凄いモテた。
高校入学当初から可愛いと評判で、母性本能をくすぐられる様な高校生だった。
それは結婚してからも変わらなくて夫に告白する女性は後を絶たなかった。
ああ見えて有名企業の跡取りだし、顔だって整っている。
性格も良しで頭も良し、女が黙っているはずが無い。
それでも結婚する前までは浮気をしなかったし、
毎日の様に愛を囁いてくるから承諾したのだ。
実は今もう深夜なのでグースカ寝ているが、今年一歳になる息子が居る。
親権は出来れば欲しいが夫の会社の跡取り・・・、あぁ、そういえば佐藤さんが妊娠したとも言っていた。
その子に継いでもらえばいいじゃないか、うん。
よし、あの子は私が連れて行く。
マジで天使なんだからな!超可愛いんだからもう!
「空(息子:そら)は連れて行くから。佐藤さん妊娠してるらしいから跡取りはその子にお願いしてね、じゃ」
もう既に荷造りは終わっている。
私も浮気してたし慰謝料取れないからもうこれっきり。
息子の好きなおもちゃと服を持てば大丈夫。
あ、ベビーカーも必要だ。
「ねぇ、待って!離婚はしてあげる。
でも僕から逃げられるなんて思わない方が良いよ。
どこに住んでも僕が追いかけてあげる。
里奈ちゃんから『再婚したい』って言うまで終わらないからね。
例え離婚しても里奈ちゃんは僕から逃げられない。
空は寂しいけど許してあげる。また親子三人・・・いや再婚したらもっと子供欲しいし、まぁまた家族皆で暮らせる日を楽しみにしてるね、里奈ちゃん」
「勝手にすれば?警察に突き出してやる」
「里奈ちゃんは僕をなんだと思ってるの?それぐらい捻り潰せるけど。
あ、例え里奈ちゃんを監禁しても警察沙汰には一生ならないから安心してよ。
他の男の影が見えたら僕暴走しちゃうかもしれない。
気をつけてね~」
ニコニコと手を振る元夫から逃げるようにして家を出る。
勿論背中には熟睡中の空が居る。
一度由希を暴走させた事があるが、その時は一週間由希の家から出れなかった。
それで出来たのが空なのだが・・・。
お金持ちって厄介だな。
「あ、もしもし雪?夜遅くにごめんね。私旦那と別れたから」
『別に良いけど・・・、俺あんたと再婚はやだよ?』
「はぁ?私の事バカにしてんの?
別に離婚したのはあんたと再婚したいとかじゃなくて元旦那の浮気。
今日電話したのは別れ話よ」
『あー、俺が人妻じゃないとダメって性癖を理解しての事か』
「そうよ、変態。次の相手を見つけてね?って応援メッセージとも捉えていいわよ」
『はいはい、どーも。あ、里奈のママ友を紹介してくれない?』
「私を使うんじゃないわよ。そういうのは自分で見つけなさい?
私が巻き込まれて面倒な事になるじゃないの」
『へいへい。いやー、にしても理解のある元彼女だ。
今まで別れ話って俺からしてきたからさ。
なんかすっげー新鮮。
あ、また再婚したら連絡ちょーだい』
「機会があったらね。じゃぁ、さよなら」
『おう、じゃぁな』
これで浮気相手とは縁を切った。
次は今晩泊めてくれそうな親友に電話を掛ける。
それにしても浮気相手と旦那が同じ名前って何の縁なのかしらね。
「あ、もしもし美奈?今日泊めて」
『いいよーん』
相変わらず軽いな。嫌いじゃないけど。
これからどうやって過ごそう。
やっぱり実家に帰って仕事探して、そのまま親の介護までやるか。
もうしばらく恋愛はいいや。
空が成人するまで親の役目を果たして、
元夫はあんな事言ってたけどそんな事しないでしょ。
はぁ、明日から大変そうだなー。
「うー・・・」
「あ、起きちゃった?ごめんね」
取り敢えず空がちゃんと大人になって、
可愛いお嫁さんを連れてくるまでは頑張ろう。
「空はパパみたいになっちゃダメだからねー」
「スー・・・スー・・・」
「寝ちゃったか」
さて大荷物だが親友の家に行こう。
あいつは無駄に稼いでて家もでかいから大丈夫。
なのに彼氏も旦那も居ないのよねー、残念。
「はぁ、由希とも別れたし私はお気楽だーっ」
足取り軽く親友の家に行く私を、
元旦那は近くの影からみていた。
「里奈は軽く考えてるけどそうはいかないよ?
大好きな僕の里奈。大丈夫、絶対逃がさないから。
浮気相手は別れたみたいだしギリギリ譲歩してあげる。
僕って優しいと思わない?」
その数年後、里奈に彼氏が出来た途端。
その新しい彼氏は失業し、里奈と空は行方不明になり、
翌年里奈は第二子を出産したらしい。
里奈が幸せかどうかはご想像にお任せします。
お目汚し失礼しました。
久しぶりの投稿なのでご容赦してくださいませ。
最後までの閲覧、感謝いたします。
追記2015.03.16 03:02
http://ncode.syosetu.com/n6076co/
こちらにあったかもしれないエンディングを御用意いたしました。
お時間がございましたら是非見てくださいませ。
貴方様の考えたエンディングを感想のついでに書いてもらえましたら、
書き終わり次第投稿させていただきます。




