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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第一章 新生ドラグニルと運命の出会い
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ビフォー、アフター

内政チート回。獣人はお預けになりました(;_;)

シュミットの家に戻ると、リビングにはスープと黒っぽいパンが四人分、用意されていた。家族三人とゲオルグの分だろう。


どこか怯えた様子のシュミットとその妻子に観察されながらの食事というのはどうにも居心地が悪く、やたら固いパンと、僅かに塩味のついた野菜スープを手早く流し込む。味は正直よく分らなかったが、空腹が満たされたのは確かだ。


ちなみに、シュミット達がゲオルグにやたら注目していたのは、本来はスープにつけて柔らかくしながら食べる固い黒パンを普通に噛み砕きながら食べていたからだ。


「馳走になった。先に外で待つ」


三人より早く食べ終えたゲオルグはそう言って立ち上がる。それを見たシュミットが慌てたようにスープやパンを頬張りはじめるが。


「急がなくていい、少しこの周りを見て回りたいからな」


と、ゲオルグが言うと、スープとパンで膨らんだ顔を縦に振った。これが女の子なら絵になるのに、などと思ったことは口にしない。


落ち着いた様子を見てから、ゲオルグはその場を後にする。昨日の約束を果たすには、色々と見聞しなくてはならないからだ。


<さて、まずは畑、それから村の外周に、水事情も誰かに聞かなきゃならんか………>


これからのことを思い浮かべながら、扉を開けて外へと出て行った。











およそ1時間後、総勢50名弱の村人が、村の中心にある開けた土地(広場と言うには整備などまったく為されていないのでそう呼ぶ)に集まっていた。見たところ男女半々くらい、表情は色々だ。


本来なら畑仕事などを行わねばならない時間に呼び出されて、明らかに不機嫌そうな者もいる。若い女性の中には、ゲオルグに艶のある視線を向けてくる者や、それを感じて妬みを含んだ視線を送る男など、本当に様々だ。


<こういう部分は日本の時と変わらないな>


などと、内心では苦笑を禁じ得ない。まぁ、先ほどまで村を見て回り、色々な事情を聴くのに女性ばかりを狙った自分も大きな原因だろうが。だがどうせなら女性と話したいと思うのは男としてしょうがない部分であるとだけ言っておく。


「さて、皆、忙しいところ済まない。不満に思う者もいるだろうが、奪った時間に見合うだけのものは用意できると思う、しばし我慢してくれ」


気を取り直してそう告げると、各々訝しげな表情こそ浮かべたものの、静かに次の言葉を待ってくれた。


「まずは………この村の害獣対策だが、村を囲う柵も堀もなく、畑を荒らされることもしばしばあるそうだが?」


そう聞くと、何人かが声を上げた。


「そりゃ………魔物こそ出ねぇけど、イノシシとか………」


「狸も出るし、ネズミなんかもね」


「でも柵なんか作ってもそんなんはすぐ入ってくるし、堀や塀を作るだけの人手も時間も……なぁ」


と、答えた。ゲオルグはそれを聞いて満足気に頷き。


「ならばまず、それを解決しよう」


そう言うと、ゲオルグを魔法を行使する。


一体何をするつもりなのかと、村人が一瞬警戒するが、それはすぐに驚きに変わった。


「お………おおぉ!!」


「かかか……壁!?」


ゲオルグが何をしたかと言うと、まずは村の外周に、やや余裕を持たせて堀を作り出す、深さは1.5M、幅は2.5Mほどである。そしてそのくり貫いた時に出た大量の土を圧縮、硬化し、高さ2M、厚さ1Mほどの壁を作り出し、村を完全に囲う(無論、三ケ所ほど出入り口を作り、そこには堀も作らない)。更に堀の内側も、硬化しておくことは忘れない。崩れて埋まってしまっては意味がないからだ。


土魔法Lv10の力をふんだんに発揮したのだ。


「な………なんと……」


「これなら獣なんぞ入れないな………」


口々に感嘆の声を漏らしているが、こんなもので終わるつもりはない。


「次に畑だな。随分と歪な形をしているのは岩や地質のせいと聞いた。それも解消しよう」


地質に関しては事前に魔法でよく確認しておいた為、迷うことなく魔法を行使。まず今植えてある野菜などを土魔法で作られたボールの中に包み込み、それを風魔法で空中へと退避させる。その後にまず目立つ岩を粉々に粉砕し、そして畑の土をも一旦掘り返し、地中の岩や固い地層も塵レベルまで粉砕してから、先に粉砕した岩と合わせて、更に深い地層の柔らかい部分の土と入れ替える。


そして歪だった形を綺麗に整え、デッドスペースとなっていた部分も畑として使えるようにし、退避させていた野菜を綺麗に植え直し、やや乾燥していた地面に水魔法で水分を与えて完成。


淡々とした表現であるが、実際の光景は圧巻の一言であり、それを目の前で見せつけられた村人は。


「「「「「「…………………………」」」」」


言葉を失い放心状態だった。


「それと………」


「「「「「まだあるのですか!?」」」」」


「おぉう」


一斉に轟く声に、思わず引いた。


「いや、水を汲みに近くの森の中にある川まで、獣道のような場所を通るのだろう?その道の整備と、道中生えている果物の生った木を空いたスペースに移植、あとは整備の時に伐採することになる木を使って木材の確保、くらいか」


そこまで言ったところで、完全に沈黙した村人達、そして。


「「「「「救世主様!!」」」」


「ファっ!?」


ゲオルグが、とある村で神格化された瞬間だった。

次回、いよいよ獣人登場!?

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